見出し画像

脳リハ看護から現場へのアドバイス 第1回ファストとエルボスクリーン

(キャリエルメディ2022年10月号より)文:(前半)増田恭子、(後半)阿蘇幸子

キャリエルメディは医療系出版とセミナーで医療従事者の独立・副業を支援します。

看護とリハビリキャリエルメディ2022年10月号(書籍版)

看護とリハビリキャリエルメディ2022年10月号(キンドル版)

今回から始まった「脳リハ看護から現場へのアドバイス」。初回は院内や在宅でできる簡単なテストとその意義を二人の脳卒中リハビリテーション看護認定看護師から解説をしていただきます。(キャリエルメディ編集部)

院内発症脳卒中について

いつもと様子が違う、おかしいなと思う患者さんをみつけたらどうしていますか?

院内発症脳卒中は意外と多いものです。脳卒中とは違う病気の治療のため入院している患者さんが、入院中に脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血右表参照)を発症することは稀ではありません。

因みに、欧米の研究発表では、院内発症脳卒中の発症が全ての脳卒中の2~17%を占めるという報告もあります。

院内発症脳卒中が起こりうる原因としては、以下のものが考えられます。 
・治療に伴い、抗血小板剤や抗凝固剤を中止せざるを得ないことがあること
・カテーテル検査や治療などによる合併症
・トルソー症候群という悪性腫瘍合併例に生じる血栓症
・心臓手術後や循環器疾患での合併
などです。

そして、院内発症と院外発症の脳卒中症例の比較検討では、院内発症群は予後が悪いという報告があるのです。これはなぜなのでしょうか?
 
この理由は、次のようなことがあると思います。
・原疾患があるため発見が遅くなった。
・脳卒中への知識不足のため初期評価が遅くなった。
・軽症のため経過観察とされる例 などです。

脳のことに特別に詳しくなくてもいいのです。いつもと違うな、おかしいな?という意識をもって患者さんをみてもらえたらと思います。


脳梗塞について

急性期脳卒中で、基礎知識として抑えておくために、まずは脳梗塞についてまとめましょう。

脳梗塞の種類としては
⒈アテローム性脳梗塞
⒉心原性脳塞栓症
⒊ラクナ梗塞(BADも含む)

があります。

脳梗塞のリスクファクターについて、脳梗塞の種類によって変わってきますが、一般的には、高血圧症・糖尿病・脂質異常症・飲酒・喫煙・肥満・心房細動・高齢といわれています。

脳梗塞の治療には、以下の種類があります。

⒈血栓溶解療法
第一選択として考える治療法です。発症時間が判明しており、なおかつ発症が4.5時間以内であったら、tPAと呼ばれる薬剤を使用を優先的に検討します。実際に使用するには、時間と細かい実施基準をクリアすることによって使用可能となります。

大きなメリットとして、この治療により後遺症を残さず今後を過ごせる可能性があります。デメリットとしては出血するリスク高いということが考えられるでしょう。

⒉血栓回収、吸引術
発症後、tPAが投与後血流再開が得られなかった、あるいはtPA適応外で発症後8時間以内であったら適応です。また、tPA投与後血流再開があったが、その後8時間以内に再度閉塞した場合も、適応になることがあります。

⒊抗血小板剤・抗凝固剤
点滴治療と内服薬があり病態に合わせて処方されます。入院療養中に外科治療などに伴い、抗血小板剤、抗凝固剤の内服を中止する時に、脳卒中を発症することがあります。

⒋脳保護剤(エダラボン
発症から48時間以内の脳梗塞に対して適応します。ペナンブラ保護のためですが、腎機能障害や高齢者には投与しないことがあります。また、エダラボンはアミノ製剤と同時に点滴してしまうと薬剤の作用が低下してしまうため同時投与は禁忌です。

脳出血について

脳出血とは、なんらかの原因で脳の動脈が破れ、脳実質内に血液が溜まり血腫となった状態です。

脳出血のリスクファクターは高血圧が一番です。そのほか、脳アミロイドアンギオパチー、血管腫、脳動静脈奇形、脳動脈瘤、もやもや病、脳腫瘍、血管炎などがあげられます。

脳出血の治療としては、
・外科的治療(開頭血腫除去術または吸引術、脳室ドレナージ術、減圧開頭術)
・保存的治療(止血剤、利尿剤の使用)
・血圧コントロール

などです。

特に血圧コントロールでは、脳卒中ガイドライン2019より目標値は一般的に140/90mmhg以下、腎臓疾患を合併している患者130/80mmhg未満、後期高齢者150/90mmhg未満とされています。患者さんによって管理値は違うので医師から指示をもらっておくとよいでしょう。

くも膜下出血について

くも膜下出血とは、くも膜下腔内に、動脈瘤の破裂(80%以上)や頭部外傷などの原因によって出血が起きた状態をいいます。

初期症状は、バッドで殴られたような激しい頭痛に襲われると言われているので急変時対応が必須です。

くも膜下出血の治療は再出血予防として、開頭術でのクリッピング術や血管内治療としてのコイル塞栓術がおこなわれます。代表的な術後合併症としては、術後しばらくたって現れる脳血管攣縮や、術後から1ヶ月程度で現れる正常圧水頭症があります。

このような基礎知識をもとに事例をみていきましょう。

事例

年齢:50歳 性別:女性既往:40歳ころより高血圧 心室期外収縮高脂血症 他、喫煙 飲酒あり診断名:胃癌治療計画:胃全摘術内服:イグザレルト・ビソプロロール・アムロジン・エパデール手術のため抗凝固薬の内服を中止していた経過手術翌日の朝7時に患者のバイタルサインを測定、会話も成立し問題なく、離床をはかる予定でいた。7時30分に再度患者のもとを訪室。右手がうごかず、話かけても唸り声だけしか出せず、顔面が少し歪んでいた。

こんな場面に遭遇したらどんな状況が考えられますか?あなたならどのような行動をしますか?

脳卒中は時間との戦いです。症状を悪化させないためには迅速な対応が求められます。

脳卒中発見のための簡単なテスト

米国脳卒中協会では、脳卒中を疑う人をみたら3つのテストをするように勧められています。これをFAST(ファスト)といいます。

FAST(ファスト)の確認方法は以下の通りです。

これ以降の内容は「キャリエルメディ」でお読みいただけます。
内容が気になる方は、ぜひご確認ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?