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端山茂山奇譚

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とある山の奇譚。目に見えるモノ、見えないモノ、人間、動物、有象無象のモノたちが織りなす幻想。
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2024年6月の記事一覧

端山茂山奇譚(拾漆)

端山茂山奇譚(拾漆)

端山茂山奇譚(拾漆)

よう、いるか?
さっき、山道でこんなのを見つけたよ。

突っ立て泣いてたんだ。
ああ、人間の子だ。

迷ったのか…ちがうな、置き去りにされたんだ。

まあ、可愛そうだがな。これも山の掟だと、他の動物どもと同じように放っておいても
良かったんだが、おいら、なんか気になってな。

こいつ、おいらを見て、泣き止んだんだよ。
で、おいらに付いてきたんだ。

なあお前、弟子

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端山茂山奇譚(拾参)

端山茂山奇譚(拾参)

端山茂山奇譚(拾参)

この連なる山々の一番端にある、小さな山。
あそこに住む天狗どもの話を聞いたか?
なんでも、江戸から小僧を一人連れてきてたそうな。
そいつは、天狗になりたいと言っていたから、連れてきたとか。

どうやって連れてきたんだ?

そこはそれ。天狗は遠くまでひとっ飛びで移動できるからな。

天狗どもは、年中、江戸にいくのか?

江戸だけじゃないな、もの覚えの良い奴の噂を聞きつけては、

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端山茂山奇譚(拾弐)

端山茂山奇譚(拾弐)

端山茂山奇譚(拾弐)

さっき、北から飛んできたやつらが言ってたんだけど、北の空では、翠の龍が飛ぶそうだ。
緑の光の帯のようだと言っていた。

ほう、おれが昔、ばあさんから聞いた話だと、翠の大きな幕が夜空にはためくというが、龍なのか。

あそこの木で休んでいるあいつらから聞いたんだ。
おい、そこのおまえら。
北の空では緑の色の龍が飛ぶと言ってたな。

ああ、いつもではないが、時々、夜になると見える

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