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筋トレやダイエットのハードルが上がり過ぎている話

最近ではYouTubeで筋トレに関する動画やダイエット動画が多数見られます。
ネット上には様々な情報が飛び交い、簡単に情報が得られます。

しかし簡単に情報が手に入る一方で、発信される情報が多すぎるあまりハードルが上がってしまっているように感じています。

全ての情報が嘘というわけではないが、それだけが真実ではない

例えば筋トレについて
分割法というトレーニングメニューの構築方法があります。
これは全身の部位を分割してメニューを構築する方法であり、多くのボディビルダーが取り入れる手法です。

その道のプロが取り入れているのだから最も優れた手法かというと、そういうわけではありません。
簡単に言うと、最大限に追い込んだ高強度のトレーニングを行なう場合、筋肉痛で毎日同じ部位を鍛えることが出来ないため、毎日トレーニングする部位を変更してローテーションするという手法なのです。
同時に、例えば肩のサイズを最大にしたい場合には「肩全体を鍛える高重量のメニュー」「肩の横側を鍛えるメニュー」「前側」「裏側」と4つの種目のトレーニングを行なう必要があり、これでは肩のトレーニングだけで一時間近くの時間がかかります。
筋肉痛の問題と所要時間の問題を同時に解決する手法として、分割法が優れているという訳です。

逆に言えば、筋肉痛が生じるほどの高強度のトレーニングで筋肥大を目指さない場合やそれぞれの部位で1つのメニューだけを行なう場合、要はダイエットを目的とした筋トレでは全身を1日で鍛える方が効率的です。

フィットネス業界には、このような情報のギャップが溢れています。

少し専門的な話をすると、これらの情報の多くはエビデンスが海外の大学の研究論文です。
これらの論文では被験者を2つのグループに分けて調査を行ない、分割法を行なったグループと全身法を行なったグループを比較したり、高重量を少ない回数扱ったグループと低重量を高回数扱ったグループを比較したりします。
そうして、より筋肥大に効果的なのはどちらか、という結論を導くわけです。

確かにこれは正しい情報なのですが、だからと言って最適な方法を教えてくれるわけではありません。
ここで陥りやすい問題を紹介します。

誰しもにとって正しい情報という訳ではない


多くの場合でフィットネス業界で共有される情報は「筋肥大を目指すボディビルダーにとって」正しい情報です。

例えば筋トレについて、高重量を少ない回数取り扱い、筋力を最大限に使うことで筋肥大を最大効率で行なうことが出来ます。
これは事実であり、低重量を高回数取り扱うトレーニングは悪のように紹介されます。

しかし、低重量を高回数扱うトレーニングにもメリットはあります。
高回数のトレーニングでは筋量の増加は見込めない代わりに、筋持久力の向上が見込まれます。
分かりやすい例で言えば、短距離選手の太い脚にはならない代わりに、マラソン選手の細くしなやかな脚になるのです。
ダイエットを目的にトレーニングを行なう場合にはむしろ理想的でさえあります。

また基本的に論文では論点についてのみが検討されます。
高重量と低重量を比較する場合を考えてみましょう。
合計で1000キロを挙上すると仮定して、100キロを10回取り扱うグループと、10キロを100回取り扱うグループを比較します。
これでは毎日のトレーニングにかかる時間に大きな差が出ますが、そこは論点ではありません。
更に言えばトレーニング歴や体重なども個々人で異なりますが、これはデータを数多く集めて平均化することで、論点における誤差を小さくしています。

そのため、基本的に世の中に溢れている情報は例外を省いた極論だけを言っているのです。
その方がキャッチ―であり、アクセス数を多く稼ぐことが出来るという思惑もあるでしょう。

世の中にはキャッチ―な表題で耳目を集める極論が溢れているという事を理解し、自分の生活習慣や体力、目標設定などに応じて、適切な情報を選び取る必要があります。

「正しいだけ」の情報に踊らされない

ダイエットやボディメイク、健康改善を目指す場合、脂質の摂取量は抑えるべきであり、摂取する脂質は良質な不飽和脂肪酸だけに絞るべきです。
これは事実であり、バターを積極的に摂取することを勧めるトレーナはいません。
だからといって、バターを少しも食べてはいけないという話になるのでしょうか。

お肉で一番美味しいのは松坂牛のA5サーロインであるとしましょう。
これはある程度事実であり、業務スーパーの外国産冷凍豚肉より遥かに美味しいことについて、異論を唱える人はいません。
では、松坂牛のA5サーロインしか食べない生活が出来るでしょうか。
不可能です。

ダイエットやボディメイクに生活の全てを捧げるような仕事の人が、コストや満足感や食の幸福を度外視して取り組むような食事制限は、正しいですが参考になりません。
それは超大金持ちの生活が参考にならないのと同義です。

目的や目標、そこにかけることの出来るコストや時間など、自分にとってベストな方法を考えたとき、多くの場合で妥協が発生します。
それは当たり前のことであり、その妥協策を正しく検討することこそが肝要なのです。
正しいだけの情報に踊らされることなく、自分にとってベストな取り組み方を考えましょう。

自分にとって丁度いいハードルを、飛び続けることを目指しましょう

ここまで紹介してきたように、世に溢れる情報は筋トレやダイエットのハードルを非常に高いものにしています。
しかし本当に大切なのは、これらの情報に踊らされることなく自分にとって丁度いいハードルを設定することであり、そのハードルを飛び続けることです。

高いハードルを設定しても飛ぶことが出来ずに諦めることになりますし、低すぎるハードルでは効果が実感できずに飽きてしまいます。

世の中のパーソナルトレーナーという仕事は、このハードル設定や飛び続けるための意識付けを手伝う仕事であると、私は考えています。

丁度いいハードルを、しっかり毎日飛び続けることが出来る。
そんな人生を目指してみましょう。



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