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介護予防、四つのショックについて

こんにちは。
介護×ヨガのパーソナルトレーナー、鈴木です。

今回は介護福祉士として長年介護現場で働いてきた私の考える介護予防「四つのショック」について紹介したいと思います。


第一のショック:家事が出来ない

私は訪問介護事業所で管理者をしていましたが、新規に介護サービスを利用するケースは以下のように分類できると考えています。

①家族の家事支援があるが昼間独居のため、通所介護や訪問介護の利用を開始する
②家族の家事支援があるが入浴が困難なため、通所介護や訪問入浴の利用を開始する
③家事に支援が必要になり、訪問介護の利用を開始する

もちろん家事支援が必要になった段階で施設に入所する場合もありますし、医療的支援が必要となり介護サービスの利用が開始する場合もあります。
しかしながら私の経験上、非常に多くのケースで上記の三つに分類することが出来ます。

このように考えた場合、家事が出来ないというのが要介護状態に移行する大きな原因であるということが出来ます。

実際、見た目上元気な高齢者であっても掃除や買い物に危険が伴うようになったことで訪問介護を利用するというケースが少なくありません。

しゃがんで床の掃除を行なう。
風呂場の掃除をする。
重たい荷物の買い物をする。

これらが難しくなり、普通の日常生活に転倒のリスクが付きまとうようになる。
それこそが介護予防第一のショックです。

第二のショック:お風呂に入れない


家事に支援が必要になったとしても、一日に数時間だけ、家事の手伝いを受けることで自立した生活を継続することは出来ます。

要介護状態が進行する次の段階は「お風呂に入れない」です。

入浴というのは非常に難しい動作です。
理由は様々あります。
一つ目に、手に使っているからです。
何を当たり前のことをというかもしれませんが、これは非常に重要です。
我々は重心の操作や姿勢の制御を腕に頼る割合が少なくありません。
歩くときには腕を振り、立っている時には手近な場所を掴み、座っていれば肘をつく。
これらの腕の活用を封じられるというのは、それだけで大きなリスクになるのです。

二つ目が、膝を過度に屈曲した状態で座るということです。
少し専門的な話になりますが、膝というのは真下に踵が来る程度に曲がっているのが最も力を発揮します。
完全に伸ばし切っている状態では満足に動かせず、同様に過度に曲がっている状態でも動かすことが困難になります。
しかしながら日本式の風呂では高さのないフロ椅子に腰かけて背中を丸めて頭髪や身体を洗うことになります。
これは実は非常に難しい身体操作なのです。

三つ目は、風呂場が狭くて湿った空間であるという点です。
風呂場が必要十分に広い場合、例えば浴槽を温泉のように低くすれば、足を上げずに浴槽に浸かることが出来ます。
そこら中に手すりを設置すれば、立ち座りもある程度安全です。
大きな椅子を設置すれば過度に膝を曲げずに身体を洗うことも出来ます。
この様な対策を行なうことが難しい、狭くて湿った密室であるという構造上の問題が、入浴を難しいものにしているということが出来るでしょう。

そのため家族の家事支援が十分であっても、入浴の手伝いが難しくなったために介護サービスを利用するというケースが発生することになるのです。

第三のショック:トイレに行けない


トイレは風呂と比べれば危険が少ない空間です。
湿っていませんし、排泄するに必要十分な空間が確保されており、便座の高さも膝への負担を大きくするほどではなく、多くの場合で手すりの設置も容易です。

だからこそ、一人での入浴に危険が伴う状態であってもトイレには行けるというケースは少なくありません。

それでもトイレに危険が伴う状態というのは、すなわち歩行そのものに危険が伴う状態です。

ここまで介護度が進行すると、そろそろ独居での生活が困難になります。
転倒のリスクに最大限配慮すれば排泄はおむつで賄うことになり、家事の一切に介護が必要な状態になります。
もしくは介護者の手伝いによってトイレでの排泄を続けるために、生活全体で介護を受けることの出来る施設へ入所することになるでしょう。

第四のショック:食事が摂れない


いよいよ最後のショックが、食事です。
介護の仕事というと箸やスプーンを高齢者の口に運んで食事の手伝いをする様子を想像するかもしれませんが、これは要介護状態としては相当進行した状態です。

胸の高さで箸やスプーンを操作するというのは肩関節の稼働として負担が小さな動作であり、箸を口に運ぶ際にも頭を下げて口の方から迎えに行けば肩の負担は非常に小さくなります。
それでも自分の力で食事が摂れないというのは、身体的自立度がほとんどない状態であることを意味します。

ここまで身体操作が困難になると、ほとんどの場合で24時間の介護が必要です。

介護予防の為に重要な腰や膝、肩は痛くないですが?

この様に分類したとき、特に重要になる身体の部位は「腰」「膝」「肩」です。

腰の痛みや変形によって長時間の歩行や重たい物の運搬、しゃがむ動作や高いところでの作業が困難になり、家事支援が必要なります。

膝の痛みや変形は風呂椅子への座位を困難にし、湯船の高さに足を上げることが出来なくなり、一人で風呂に入れない状態を作ります。

肩関節が十全に動かなくなったときが、食事を自分で食べられなくなる時であるとも言えます。

もちろん、これらは非常に簡略化した考え方であり、疾病や認知症によって異なる進行をする場合は多々あります。
むしろ身体的な自立度のみが低下していくというこのモデルは極端な例であると言えるでしょう。

しかしながら、高齢期においてこれらの関節の柔軟性とこれらの関節を動かす筋力が重要であるという点について、異論を唱える専門職者は少ないはずです。

今はまだ大丈夫だと思いますか?
大丈夫でなくなった時、薬も手術も存在しないのが現代医療です。
腰の曲がったお婆ちゃんや車椅子のお爺ちゃんがいるのは、現代医療では治療の方法がないからに他なりません。

痛み止めを飲み、電磁波治療を受けながら、リハビリに勤しむ他ないのです。
今より状態が悪化してから、リハビリを頑張りますか?
今から、元気で良く動く身体を作り始めますか?
違いはそこにしかありません。

アクティブエイジングは「良い年の取り方」についての考え方です。
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