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父のボケ(3)首相の辞任

母が、安部首相の辞任会見を見ていて、父にそっくりだと、繰り返し話すのである。今日は土曜日で、妹夫婦が来たのだが、そのときも同じことを繰り返し語っていた。

母が言うには、わたしの父もまた、若い頃から潰瘍性大腸炎だったのだという。それが最後の最後になって、大腸がんになり、そして亡くなった、ということらしい。でもわたしは、父が潰瘍性大腸炎だったなんて、安部首相の辞任会見を見るまで知らなかった。いわれても、未だに信じられない、というのが正直なところである。

とはいうものの、前回書いたように、だれがみても明らかにおかしいといえる父の振る舞いの最初が、まさに会合の場での下痢であり、それから半年もしないうちに大腸がんで亡くなったことを考えると、あながちデタラメというわけでもない気がしてくるのだった。

「安部さんをみていると、お父さんとそっくりなの」と母は言う。「お父さんも若い頃からよく粗相をして帰って来たの」とまるで首相が粗相をしているかのようなことを言う。

「きっとあの下にはおむつしているのよ」とまでいうのである。以来そのことが頭を離れないが、父がおむつしていたのは見たことがない。もっとも大腸がんと診断されてからはしていたようだが、わたしは実家にいないので見ていないのである。

母によれば、父も安部首相と同じく、若い頃から潰瘍性大腸炎に苦しんだらしい。結婚してからも、粗相をして帰ってくるのはもう日常茶飯事と言ってよく、しかも本人はその事実を決して認めないのだった。母は父に、「母親のしつけがなってない」と言ったこともあるそうだ。その話は以前にも聞いたことがあったが、今回はすぐに「でも、そうじゃなかったのねえ。病気だったんだから」としんみりと遠い目をして語ったりするのである。

(むかしはそうはいわなかったぞ)とわたしは思った。(もしかして辞める首相と同じ病気で苦しんだという、その事実によって、父のことを見なおした? あるいはより同情が増した?)

でも、そもそも父が安部首相と同じ病気だったかどうかはわからないのだし、仮にそうだったとしても、それで職を辞するほどの重症ではなかったのだし、そもそも同じ病気だったらなんだというのか。(病気、関係ないだろ)と思ってしまうのだった。

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母が住む実家で週末ごとに過ごす日々。 母との大切な時間を綴る。