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HRデータ活用を9ボックスで考える

まずはシンプルに考えてみる

タレントマネジメントシステム導入等により、様々なHRデータを一元的に扱えるようになってきています。そこで、何を見るか?その結果をどのように使うかについて、まずはシンプルに9つのボックス(下の図)で考えてみました。

ボックス①  採用・入社

採用・入社状況を可視化し、採用に注力すべきポジション (未充足のポジション) などの課題を検討します。

[ データ例 ]
・入社人数 
・募集ポジションに対する入社率 (充足率)
・入社者の入社後評価
・オンボーディング評価
(いずれも、合計以外に、組織別・職種別・等級別・職位別・年代別・性別・国籍別など)

[ 該当するISO30414メトリクス ]
・採用・異動・離職:従業員の質

ボックス②  人員構成

是正すべき属性別のバランスの偏りや、労働時間など働き方について把握します。また、スキルや資格取得など成長の状況についても課題を確認します。また従業員エンゲージメントの課題についても確認するようします

[ データ例 ]
・人員分布
・管理職1人当たり部下数
・外部労働力数
・労働時間・休暇取得率
・スキル・資格
・従業員エンゲージメントスコア (全体/項目別)
・人件費 など
(いずれも、合計以外に、組織別・職種別・等級別・職位別・年代別・勤続年数別・性別・国籍別など)

[ 該当するISO30414メトリクス ]
・ダイバーシティ
・コスト (採用コストと離職コストを除く)
・組織文化:エンゲージメント
・生産性
・スキル及び能力:従業員コンピテンシーレベル
・労働力の利用可能性
・リーダーシップ:管理職1人当たりの部下人数

ボックス③  退職・休職

退職傾向を可視化し、特にリテンションに注力すべきポジションなどの課題を検討します。また、休職の状況も把握し復職状況にも課題がないか確認します。

[ データ例 ]
・退職人数
・退職率 および 定着率
・休職人数 (事由別)
・休職率 (事由別)
・復職人数 (事由別)
・復職率 (事由別) など
(いずれも、合計以外に、組織別・職種別・等級別・職位別・年代別・勤続年数別・性別・国籍別など)

[ 該当するISO30414メトリクス ]
・組織文化:従業員の定着率
・採用・異動・離職:離職率
・採用・異動・離職:自発的離職率
・採用・異動・離職:離職による影響が大きい離職の比率

ボックス④  採用チャネル/選考状況

採用チャネルポートフォリオの見直しや、選考プロセスの改善、タレントプール形成の強化など、採用強化のための課題検討のためにデータを活用します。

[ データ例 ]
・採用チャネル別の入社数
・社員紹介による入社数
・募集ポジション当たりの応募者数・書類選考通過率・面接合格者率
・オファー辞退率
・募集からオファーまでの期間 (Time to Offer) または、入社までの期間 (Time to Hire)
・タレントプールの人数
・採用コスト など
(いずれも、合計以外に、募集ポジション別など)

[ 該当するISO30414メトリクス ]
・コスト:採用コスト
・採用・異動・離職:ポジションごとの候補者数
・採用・異動・離職:平均の期間

ボックス⑤  人材開発/組織開発

研修受講など人材開発の状況や、従業員エンゲージメント向上プログラムの実施状況など組織開発の状況を把握し、より加速させる策や、軌道修正の必要性を検討します。

[ データ例 ]
・研修の受講率
・1人当たりの研修受講時間
・(研修以外の)各種人材開発プログラムの活用率
・従業員エンゲージメントの該当スコア
・従業員エンゲージメント向上プログラムの実施率 (進捗率) 
・人材開発コスト
・組織開発コスト など

[ 該当するISO30414メトリクス ]
・リーダーシップ:リーダーシップへの信頼
・リーダーシップ:リーダーシップの育成
・コンプライアンス
・組織の健全性・安全性及びウェルビーイング
・スキル及び能力(従業員のコンピテンシーレベルを除く)

ボックス⑥  退職理由/ネクストキャリア

退職理由や次のキャリア(転職先等)のデータから、より効果的なリテンション策を検討します。

[ データ例 ]
・退職理由別の退職者数 または 率
・ネクストキャリア別の退職者数 または 率
・退職サーベイやインタビュー (1on1) の実施率
・高い退職リスク社員の人数 または 率
・リテンションプログラムの実施率 など
(いずれも、合計以外に、組織別・職種別・等級別・職位別・年代別・勤続年数別・性別・国籍別など)

[ 該当するISO30414メトリクス ]
・コスト:離職コスト
・採用・異動・離職:離職理由及び理由別離職率

ボックス⑦  人事評価

評価分布や評価対象領域や評価項目別の傾向を把握し、異動や昇格の候補者選定の材料とします。

[ データ例 ]
・評価分布 (ハイ/ローパフォーマー数 や 率)
・評価領域・項目別の評価分布
・スキル保有レベルと評価の分布
・時系列で見て評価が上昇している社員数 や 率
・時系列で見て評価が下降している社員数 や 率  など

ボックス⑧  キャリア希望/育成プラン

最適配置に向けて、社員一人ひとりのキャリア希望や育成プランを把握します。また、サクセションプランによる後継者候補やハイポテンシャル人材など重点育成対象の社員も識別します。

[ データ例 ]
・異動希望部署別の社員数 および 該当社員
・育成目的異動の候補部署別の社員数 および 該当社員
・ポジション別の後継者候補プールの人数 および 該当社員 など

[ 該当するISO30414メトリクス ]
・サクセションプラン:後継者候補の準備率
・採用・異動・離職:幹部候補の準備状況

ボックス⑨  異動・昇格

社員(および外部リソース)の最適配置を目指して、最適な異動・昇格候補者の選定や、異動・昇格後社員の評価等から、異動・昇格の"正しさ"の検証を行います。

[ データ例 ]
・異動人数 や 率
・昇格人数 や 率
・ポジションの充足率
・異動後の評価
・昇格後の評価 (360度評価など含む)
(いずれも、合計以外に、組織別・職種別・等級別・職位別・年代別・勤続年数別・性別・国籍別など)

[ 該当するISO30414メトリクス ]
・採用・異動・離職:内部人材で充足できたポジションの割合
・採用・異動・離職:重要ポジションにおける内部充足の割合
・採用・異動・離職:重要ポジションの割合
・採用・異動・離職:求人ポジション全体に対する重要ポジションの割合
・採用・異動・離職:内部の異動P率

参考:  ISO30414以外の非財務指標情報開示に関するガイド(草案含む)
・ 
スキル、女性登用…「人的資本」の情報開示へ 政府指針 (日経新聞 (2022年5月14日))
世界取引所連合(WFE) ESGメトリクス (日本取引所グループ: ESG情報開示実践ハンドブック本編 p.34 & p.63)
・ SASB サスティナビリティ会計基準審議会によるESGメトリクス (日本取引所グループ: ESG情報開示実践ハンドブック本編 p.56)
ASB サスティナビリティ会計基準審議会による業種毎の開示項目・指標 (日本語版あり)
米国の人的資本の開示に関する法律案の8つの項目案 (S.1815 - Workforce Investment Disclosure Act of 2021)
EU DRAFT European Sustainability Reporting Standards (2022年4月) 
 有価証券報告書における人的資本・多様性に関する開示 (金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告 (2022年5月23日))


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