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自社への「HRBP」導入のための6つのデザイン

前回はHRBP導入の検討の参考として、外資系企業HRBPのタスクを書き出してみました (前回の記事はこちら)。今回はその続きとして、HRBPを初めて組織に導入する際によくある6つの論点を整理しました。


1. HRBPの「役割」のデザイン

HRBPの期待役割・主要業務を定義する
まず最初に、HRBPに期待する役割 (ご参考:「外資系企業HRBPのリアルなタスクリスト」)をデザインします。
ポイントは役割範囲をどこまでとするかで、1つの主要な論点として、「外資系企業HRBPのリアルなタスクリスト」のNo.18-20にあるマネジャーの個別サポートや社員からの問合せ対応、労務対応といった負担の大きい、しかし戦略的とは言えない役割を含めるか否か、があります。
少なくとも導入初期においては、より戦略的な役割にフォーカスしてHRBPの「型」を確立させることを優先した方がよいと考えています。
また、各事業部門トップとの間で、HRBPの役割や提供価値についてイメージを合わせておくことも非常に重要です (HRBPは現場の人事的な雑務の便利屋ではないという理解を徹底するために)。

2.HRBPの「組織」のデザイン

人事部門の中にHRBPチームを形成しマネジ
次に、人事部門内のHRBPの位置付けを設計します。各事業部に担当HRBPを配置し、全HRBPをマネジメントするマネジャーを配置する形が一般的と言えます。尚、大きな事業部の場合には、1つの事業部に複数人のHRBPを配置し、その中でマネジャーを配置する形もあります。
各HRBPは担当事業部門に"入り込む"ため、どうしても個別最適 (個別事業部門最適) の視点になりがちです。HRBPのマネジャーには、HRBP間の連携・情報共有を促すことも期待されます。
尚、グローバル全体でHRBPを展開する場合、各国・地域のHRBP同士 (特に、各国で同じ事業領域を担当しているHRBP同士) が密に連携やコミュニケーションを取れるようすることも重要です。

3.事業部門内の「会議体」のデザイン

事業部内の各ビジネス会議にHRBPも参加し価値を出す
HRBPが参加する会議は、人事部門内の会議よりも圧倒的に担当事業部門内の会議が多くなります (体感として8:2または9:1で事業部門内の会議に参加)。
例えば、定例会議では毎月・毎週の事業部門ヘッドを中心としたリーダーシップチームによるビジネス会議や、営業部会議等の各部のビジネス会議があります。これらビジネス会議には、HRBPだけでなく同じ事業部門を担当するFP&Aも参加します (+法務や広報等も必要に応じて)。
HRBPはオブザーバーではなく、毎回、アジェンダの中で、担当事業部門の人事・組織に関する戦略作成・実行管理や事業部門の課題提示・解決提案等を担当します(労働関連法改定や人事制度改定の情報共有・説明や人事評価等の時期には事前案内等も行いますが、毎回こうした"伝達"だとどうしても価値を出しているとはみなされにくくなります。)

4.HRBPのパートナーとなる「CoE」のデザイン

「CoE」にはHRBPを"使う"のではなくサポートする意識を持ってもらう
人事におけるCoE: Center of Excellene/Expert は、採用・教育・報酬・人事IT・労務等の個別ファンクションを指します。HRBPが価値創出するためには、CoE: 各ファンクションによる専門的なサポートが不可欠となります。
CoEは個別ビジネスの事情よりも全社視点で考え、HRBPは個別事業部門の視点で考えるため、相互理解の意識が不足するとコンフリクトが起こりやすくなります。
ここではCoE側に焦点を当てますが、CoE側による「HRBP」の理解やサポート意識を促進・醸成する方法の1つとしてCoEも担当事業部門を持つケースがあります (例: 報酬チームの3人が、1人につき3つずつ事業部門を担当する)。その場合、HRBPは、事業部門の中で担当CoEの貢献にもスポットライトが当たるよう振る舞うことも大事になります。

5.HRBPの「要件」のデザイン 

HRBPの人材要件を明確にした上で人選を行う
HRBPには人事組織の知識・スキルだけでなくビジネスに関する知識・スキルも広く求められます。また、知識・スキルだけでなく、行動特性やマインドも重要です。
以下では、HRBPとして重要な行動・マインドを記載しました。
(1) 担当事業部門のビジネスの成功要因を理解している (or 興味がある)
(2) その成功要因の実現のための人事・組織の課題を理解している (or 分析方法が分かる)
(3) その人事・組織の課題に対して解決策を設計できる (or 設計方法を理解してる)
(4) その解決策について事業部門内外の関係者を巻き込んで実行できる
(5) そのためには、事業部門トップに対して (相手の役職に関係なく) "人事"として提案や意見ができる/安易な方向に流されない
(6) 担当する事業部門で生じる「全て」の人事・組織的な課題を"自分ごと"として捉え解決に取り組める
外資系企業のHRBPは、たとえ若手であっても担当する事業部門内では、実際に権限があるか否かは別としても、その組織にとっての「人事部長 (人事責任者)」という意識で行動します。上司が別部門のHRBPであることもあり、必ずしも上司に相談しても解決できないことも多くあります (それはそれで課題ではあります)。

6.HRBPの「キャリア」のデザイン

HRBPのキャリアの可能性の広さや選択肢を明示する
HRBPの次のキャリアには多様な可能性があり、HRBPとして上を目指すだけでなく、人事内の他のファンクションで専門性を深めることや、経営企画や事業部門内の企画のポジションに移る、などがあります。
外資系企業のHRBPの場合は、他企業にHRBPとして転職することが多いと感じており転職が容易なポジションでもあるため、早期にHRBPのキャリアイメージを伝えておくことでリテンションにも繋がります。
HRBP向けのトレーニングの中で、スキル・知識だけでなく、こうしたキャリアイメージについても十分にディスカッションしていくことも有効と感じています。

まずは少数の事業部門でパイロット導入を

最初から全ての事業部門にHRBPを導入する方法の他に、最初は、1つまたは少数事業部門に (HRBPに理解がある事業部門トップのもとで) パイロットとしてHRBPを導入し、HRBPの「型」を確立した上で、他の事業部門に横展開していく方法も現実的です。

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