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短編小説:手袋

今日はことのほか冷え込む。
私は寒がりで冬はいつもずっと手袋をしていた。

叱られない様に隠れながらだけど授業中も。
手がかじかんで文字が書けなくなっちゃうから。

カイロと手袋は私の冬の必需品。

なのに、ここ2日ほど、忘れたふりをしている。

正直、手が冷たくて、ツライ。

でも。でも。
手、手をつなぎたいんだもん。
手袋越しじゃなく、ちゃんと。

だから。
手袋せずに、あなたと歩く。

けど、結局、手をつなぎたいと口に出すことはできず、手も心もドンドン冷えていく。

ポッケから出してくれないかな。
寒そうに首をすくめるあなたにはなかなか言い出せない。

あーあ。

何のために手袋忘れたふりをしてるんだか。

手、つなぎたい

たったこの一言は、なかなか、口に出せない。

次の曲がり角が、別れ道。

ここまでの10分間は、いつもあっという間。

もう。なんでこんなに鈍いかな。
私たち、付き合ってるんだよね・・・
不満はポッケに手を突っ込んだままのあなたに向かう。

だんだん俯いてしまう。

突然背中にぶつかった。
少し斜め後ろを俯いて歩いていたらあなたが急に立ち止まったことに気づけなかった。

ご、ごめん。

私がオデコを摩るその手をあなたは掴んだ。
そしてそのまま繋いだ。

えっ。
突然で、言葉にならない。

あなたはちょっと早足になり、私は引き摺られる様に歩いた。
曲がり角まではほんの数歩。

顔をあげたら引っ張るあなたの耳が赤いのが見えて、心がホワホワ暖かくなった。

同じ気持ちだったんだ。

【耳で聴く物語始めました。聴いていただけたら嬉しいです】


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