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短編:終わる夜。

最寄駅についたのは23時25分。
今日は華の金曜日。
あと30分で終わるのに今更華の金曜日も何もあったものではない。
そういえば「華の金曜日」などと言わなくなって久しい。
どうせただのメッキの言葉だ。剥がれて色あせてオシマイ。

どうにか今週を乗り切った。
安堵と疲労が交じり合った金曜日の終わり。
週末は溜めている洗濯をしなくちゃ。
いくらなんでもそろそろ掃除もしなくちゃ。
世の女性がきれい好きなんて世迷いごと、誰が言ったんだ。
掃除も洗濯もあんなのただの義務。
そりゃ部屋がキレイになれば気分はいい。
でも面倒な労力と引き換えでないと、キレイな部屋は手に入らないのだ。
そんな気力などない。
申し込めば掃除してくれるサービスがあるらしい。
日程を決めて申し込んで、起き上がる気力もないのにがんばって起きて、狭い空間に他人がいるストレスと引き換えにキレイな部屋を手に入れる。
あれはそんな気力がある人だけが申し込めるサービスだ。

持ち帰った仕事と惰眠のみで週末を終えてしまうと、若干ほこりのたまった部屋からはいずりだして月曜日が始まる週も結構ある。
誰かと話す気力など全く出てこない。

世話してくれる人が欲しい。
心から思う。
でも、そっとしておいてほしい。
なるべくほっておいて。
そう思う人間に結婚などできるわけがない。
というか、結婚したらほっておいてほしいが叶うはずもない。
起き上がるのもシンドくて自分の世話もままならないのに、人の世話までせねばならん。
とても自分には無理。

見栄っ張りで、小器用でなんでも適当にこなしてしまうので、手料理をごちそうした男はそれなりにいる。
でもあれは、ONにしかできぬ。
そして四六時中ON、とか無理。
ゼッタイ、無理。

男が手間のかかる案件にしか見えなくなった時点でジエンド。
こっちだって世話されたいんだ。
でもほっておいてほしい。

ものすごくぶっちゃけて言えば、私がいない隙に掃除して。洗濯も。
ふかふかのお布団で寝たい。
枕が合わないからいいヤツ探しておいて置いて。
バランスの取れたごはんも。
だけどストレスかかるから気配は見せないで。

いったい誰がこの望みをかなえてくれると言うのか。

とりあえずあの男とは別れよう。
自分の望みは一片も叶えないが、返信が遅いとあれこれ言うあの男とは別れよう。
別れ話の連絡をする気力は湧いてこない。

アプリを立ち上げブロックした。

はいおしまい。


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