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プレゼンテーション入試で失敗しないための5つのコツ

今回はキャリア支援の現場から、イマドキの入試事情についてお伝えしていきます。現役の高校生はもちろんのこと、高校生のキャリア支援に関わるキャリアコンサルタントや保護者の方にとっても参考になれば幸いです。

社会で求められる力が変わり、大学入試の形もずいぶん変わってきました。総合型選抜や推薦型選抜ではプレゼンテーション入試が増えています。今回のnoteではプレゼンテーション入試の概要から失敗しない5つのコツまで解説します。


プレゼンテーション入試とは

プレゼンテーション入試とは、学力試験や面接などでは測れない能力、たとえばコミュニケーションスキルや学びに対する意欲、論理的思考などを評価する試験です。受験者は高校までの経験した学びや意見・提言、考え方などをプレゼンテーションとしてまとめ、資料や動作を交えて口頭で発表します。

センター入試が「大学入試共通テスト」に変更されたり、小学校から高校までの教育課程でプログラミングが必修化されるなど、教育の現場は保護者世代から一変しました。

このような流れのなか、受験においても子どもたちの多様性を評価しようという動きが活発になり、近年ではさまざまな方法を用いた選抜入試が行われています。このうち、総合型選抜(旧AO入試)などで多く利用されているのがプレゼンテーション入試です。

限られた時間を有効に活用できる能力、相手のニーズを適切に把握する能力、人前で自分の意見をわかりやすく伝えるアウトプット能力などが問われる入試です。高校まではインプットが中心の授業であることから、学んだことを活かし、総合的な応用力を鍛える必要があります。

普通の「発表」とは何が違うの?

発表とプレゼンテーションの大きな違いは「相手目線」です。

プレゼンテーション(presentation)とよく混同されがちなのが、学校などでも行っている「発表(announcement)」です。プレゼンテーションも発表も同じく意見を述べるものであり、両者には大きく差がないように感じます。

「発表」はテーマに沿った内容について感じたことや意見を自由に組み立てられますが、プレゼンテーションは「発表する相手がどんなことを求めているか」を考えることが重要になるのです。どれほど優れた話術を持っていても、どれほど高尚なテーマを込めても、それが面接官や大学側のニーズに沿わなければ、評価にはつながりません。

プレゼンテーション入試で求められること

プレゼンテーション入試で求められること、評価されることは、「大学側が求めていることは何か」を正しく把握し、自分の知識や経験を活かした成果や将来の目指す姿に向けた自身の学びや考えをまとめる能力を効果的に相手に伝えることです。

たとえば、プレゼンテーション入試のテーマが「地域問題について」のケースで考えてみましょう。この場合、地域における現状の問題点や、自分がこれまでに取り組んできた地域活動についての成果などを提示するとともに、自分が関わることで地域をどう導いていけるか、さらにそのために大学でどのようなことを学びたいかなどについても言及します。

大学によってもプレゼンテーション入試の評価基準は異なります

大学によってもプレゼンテーション入試の評価基準は異なります。
…と、いっても固く構える必要はありません。大学のオープンキャンパスにいくとこうしたプレゼンテーション入試に関しては各ポイントを指導してくれる学校も少なくないですし、実際にウェブで考え方を説明している大学もあります。まずは自分が受けたいと思っている大学に行き話を聞きましょう。

プレゼンテーション入試を実施している大学と出題例

大学入試として実際にプレゼンテーション入試の出題例をご紹介します。

出題例①これから学ぶ内容と関連した出題

出題パターンとして一つ目に多いのは、これから学ぶ内容と関連した出題です。関西のある大学の学校教育コースの2024年度入学者対象の総合型選抜のプレゼンテーション入試の例です。プレゼンの内容としては、あなたにとって「いい先生」とはどのような先生ですか?が出題テーマでした。

現在、子どもの多様性を大切にした教育を行うことが求められている中、「いい先生」とは何か具体化することが入試課題になり、どのような「いい先生」になりたいかを様々な観点から考え、発表(プレゼン)します。発表時間は3~5分となっており、パソコンやスマートフォンは使用不可で、配付資料があればA4用紙1枚(両面可)にまとめる必要があります。

出題例②これまでの高校生活に関連した出題

別の2024年度入学者対象の総合型選抜において、書類審査に通過した人を対象にプレゼンテーション入試が導入されています。ここでは、自身の高校時代に探究学習を通して掘り下げていたことが出題されました。書類審査通過者にはプレゼンテーション入試のテーマが通知されます。プレゼンテーションでは、掲示説明形式、紙芝居形式、演説形式、資料配付など、自由な表現方法が認められています。ただし、パソコン等の電子機器類・音の出る物などの使用は不可となっています。

探究学習の成果を問われることはプレゼンテーション以外でも

探究学習に関する入試の出題は最近は増えており、プレゼンテーション以外でも、面接などいろいろな形で出題されることがあります。「高校時代の探究活動について「活動報告書」を作成。面接で「活動報告書」の内容を主にプレゼンテーションを行う」といったケースもあれば「高等学校の「総合的な探究の時間」等で行った探究課題の成果をポスターにする。口頭で成果発表し口頭試問を受ける」という出題もありますし、「総合型選抜 探究学習評価型」といった入試コースも存在します。

プレゼンテーション入試対策のコツ

プレゼンテーション入試のコツについて解説をします。プレゼンテーション入試はインプットの多い高校の勉強から一転して、アウトプット能力が問われる試験です。1番のコツは「すごいことを話す」のではなく「分かりやすく話す」こと。
また、対策のポイントをいくつか紹介します。

採点基準が存在すると考える

どんな試験だったとしても採点基準が存在します。採点する人の気分で評価が変わる試験は良いテストとはいえないためです。学校によって基準は異なるものの、「話し方」「内容」と分けて考えると対策が取りやすくなります。

ポイント①時間管理を行い時間内に終わる

時間管理は話し方の基本です。時間内に簡潔に話をまとめることです。本番では全体的に早口になりがちです。焦らずに時間内に終えられるように話をしましょう。時間よりあまりにも早すぎる、あるいは時間を過ぎてしまうのは基本的にNGです。時間の感覚を養うのは特定のテーマで時間を気にせずに話してみることがおすすめです。自分の話すスピードを知っておくと、「5分なら○文字ぐらい」と時間指定されても慌てずに対応することができます。

ポイント②話し方(非言語コミュニケーション能力)

話し方に気を遣い、表情や声の大きさ、スピードなどを意識して話します。プレゼンテーション入試では、入室して挨拶をするところから最後の締めくくりまで見られていると考えて発信しましょう。

また、意識してゆっくり話すことを心がけましょう。一文一文をゆっくり話し、文と文の間を開けることで、お子さんの意志や意見を聞き手に確実に伝えることが大切です。できれば、一度スマホなどで動画を撮影しておき、自分の話し方や表情の癖をチェックしておくことがおすすめです。

ポイント③論理的な展開「結論から伝える」

プレゼンテーション入試のポイントの3つ目は論理的な展開です。特に話の全体を「結論ファーストで話すこと」で徹底しましょう。結論から伝えることで、相手は話の全体像が掴みやすくなります。また、話の構成が理解しやすくなります。

ポイント④論理的な展開「根拠を示す」

ポイントの4つめは結論の後に根拠を示すことです。プレゼンテーション入試に限らず、小論文や面接でもこの「結論+根拠」の関係は非常に重要です。根拠は「なぜそう考えるかというと…」と話し出しを意識することで伝えやすくなります。

結論根拠はPREP法を使うとわかりやすい

ポイント⑤テーマの掘り下げ

最後はプレゼンテーション入試で出題されたテーマについて掘り下げることです。さまざまな視点からテーマについて考え、深く掘り下げて考えるようにしましょう。事前にテーマが提示される場合は、自分の頭の中で考えるだけで完結せずに周りの人に聞いてみたり、調べ物をしてテーマについて掘り下げていきます。

わかりやすいプレゼンテーションにするためのヒント(本文と少し異なりまます)

大学生活を充実させる資質が問われていると考える

プレゼンテーション入試で問われていることは極論すると、大学生活で学びを充実させる資質が問われていると考えると良いと思います。

 ・結論から伝える
 ・根拠を考える
 ・問いに対して多面的に考え掘り下げる
 ・自分の考えを相手にわかりやすく伝える

今回紹介したことはどれも大学生活で学びの質を高め、学生生活を充実していくために必要になることです。プレゼンテーション入試だけでなく、その後も活用していく力になりますのでしっかり力を磨いて試験に臨みましょう。

著者プロフィール 松田剛典

一般社団法人キャリアラボ 代表理事 https://kokoswitch.com
株式会社みらぴか 代表取締役 https://mirapika.jp 
ツイッター:https://twitter.com/goten_m

株式会社ベネッセコーポレーションで高校生の進路選択の部署に配属。全国の高校の進路相談会の運営や入試判定業務などに携わる。人材紹介会社の大阪責任者をを経て独立。キャリア支援の仕事を始めて約20年目。複数の大学でキャリアデザイン講座の講師をしながら、北海度から九州まで全国の高校大学を訪問する実践型キャリア支援家。年間3000件前後の面談と、5000件前後のキャリア講座を運営。
2023年保護者向けオンライン相談サービス「みらぴか」をリリース
著書:「はじめての課題解決型プロジェクト」ミネルヴァ書房

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