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『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-5

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プロローグ「突然の出会い(5)」

再び淀みそうになった空気を察して、ヨツモトが二人に声をかけた。
「そういえば、ワカバが今日参加した勉強会で随分ヒドイこと言われてたけど、キャリアコンサルタントって困ってる人の話を聞く役割なんだよね?それなのにそんなヒドイこと言う人いるんだ」

誰もが思うであろう自然な疑問にイチジョウが答えた。
「残念だけど、一定数(※1)いるんだよ。まあ、そこまでヒドイやつはごく一部だけどな」
(お前が言うな!あんたもそのごく一部に入ってるでしょ!)
ワカバはイチジョウの死角へ移動し心の声システムを発動した。
「ん?何か言ったか?」
振り返り声をかけるイチジョウ。すかさず目をそらすワカバ。
(危ない!背中に目でもついてるの?)

「まあ、でもさーワカバこれも何かの縁なんだからイチジョウさんに教えてもらったら」
『絶対嫌だよ!』
二人の声がキレイに揃った。
「何で俺がこんな無礼なヤツの面倒見なきゃいけないだ」
「私だってこんな無礼な人に教えを乞うなんて嫌」
『ふんっ!』
またリアクションが揃った二人を見て(現実に「ふんっ!」って言う人いるんだ)と思うヨツモトであった。

「だってさっきも言ったけど、この人キャリコンじゃないじゃん」

「その件については大丈夫ですよね?イチジョウさん」
「それは・・・とにかく俺は嫌だよ。いくらヨツモトさんのお願いでもこれだけは受けられねえな」
「私だってこんな高圧的で理不尽で非常識で無礼な人に教わりたくない」
「おいおい、黙って聞いてりゃあ、どさくさに紛れていろいろ付け足しやがって」

全く噛み合わない二人を見兼ねたヨツモトは強硬手段に出た。

「イチジョウさーん!やってくれますよねー。じゃないとさっきの出来事お母さんに言っちゃいますよー」
「何!それは、それだけはやめてくれ。アイツに弱みを握られたくない」
「じゃあ、OKってことですよね」
「くっ、土下座するより嫌だけど、仕方ねえなあ。そのかわり黙っといてくれよ」
「はい、ありがとうございます!良かったわねー、ワカバ」

「えっ、何か二人で勝手に決めてるけど、私は嫌よ。だって人間性以前にそもそもキャリコンじゃない人から教わることないもん」
「それならたぶん大丈夫よ」
「えっ、何で?」
「だってイチジョウさんとお母さん同じ養成講座(※2)だったんだよ」
「同じ養成講座って、まさかキャリアコンサルタントの養成講座?」
「ですよねーイチジョウさん」
「おう、まあ、そうだけどな」
「じゃあ、なんでキャリコンじゃないの?ああ、分かったどうせ途中で受験するの諦めちゃったんでしょ」
「違うわ!・・・今ここで説明すんの面倒だから今度話す」
「なにそれ、意味分かんない!」

また喧嘩寸前の二人にヨツモトが割って入った。
「ねえ、ワカバ、キャリアコンサルタントなりたいってずっと言ってるよね」
「うーん、そうだけど・・・」
「これまでのやり方でいいのかなあって。もしかしたら今回の出会いで何か変わるかもしれないよ」
「うーん、でもなあ」
「イチジョウさんそんな悪い人じゃないよ。正義感が人一倍強くて空気読めない時あって、ちょっと口は悪いけどね」
(悪い人じゃないってだけで良い人だとはさすがに言わないのね)

「もし、また何か嫌なこと言われたら、その時はお母さんに言いつけるから、ねっ」
「ヨッチャンにそこまで迷惑かけられないよ。でも確かに変わるチャンスかも。よし、分かった。しょうがないから私、アイツにお願いしてみるよ」
「良かったあ、ファッションセンスはちょっとアレだけど、本当に悪い人ではないから」

ワカバはようやく腹をくくってイチジョウへ頭を下げた。
「ということで若輩者ですが、ご指導ご鞭撻よろしくお願いいたします」

「おい、今までのやり取り全部聞こえてたぞ」

というわけでワカバとイチジョウの不思議な師弟関係が始まりました。
ここまで予想以上に長くなってしまいましたが、次回からようやく本編に入ります!

次回の更新8/21予定(内容は未定)

注釈

(※1)一定数:一般の方はキャリアコンサルタントが聖人君子のような存在だと思われてますが、実際は「ザ・人間」なのです。3流キャリアカウンセラーの私が言うので間違いありません。

(※2)養成学校:キャリアコンサルタントの受験条件のひとつ。もうひとつは3年以上の実務経験。詳しい話は本編で改めてお伝えします。最後にようやく注釈の正しい使い方が理解できました。

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