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『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-7

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試験制度の前提を再確認しよう(1)

「じゃあ、ついでに試験制度をおさらいしておくか」

そういうとイチジョウはスーツのポケットから手帳を取り出し、図を書き始めた。

(そうか持ち物もダサいんだ)ワカバは独特なデザインの手帳を見てそう思った。ちなみに今日のイチジョウの服装は上下うす紫色のスーツである。

「もちろん試験のことは分かってるよな」

「試験のことって言われても。まあ、何となくは」

「何となくか、いつも曖昧だな、お前は」

「変なノート使ってる人に言われたくないですー」

「お前、ついに心の声やめたな」

「どうせバレちゃってるなら意味ないかなあと思って」

「開き直りやがって、まあいい。それより試験の前提条件を確認するぞ。いいかこれを見ろ」

試験前提

(うわっ、何かスゴい丁寧。まるでゴシック体で書いてあるみたい。ホント細かい性格出てるわー)

「心の声やめたんじゃないのか」

「いや、あの、スゴいキレイな字ですよねー」

「お世辞はいいから後半のこと謝れ」

「いやあ、そんなことよりこうしてみると受験料メチャメチャ高いなー」

「まずそこかい!4万円近いからな。だから受験するなら1回で合格するのが望ましいわけだ」

「私、どれだけ投資してるんだろう・・・」

「まあ、投資ならまだいいけどな。浪費にならないように頑張れよ。ははは」

「・・・それで結局何を確認するんですか!」

「参考までに聞いとくけど、お前学科はどうなんだ?」

「それは前回の試験で合格しましたけど」

「何回目だ?」(※1)

「・・・2回目です」

「そうか、じゃあお前は今まで受験団体に学科2回と実技2回受けて次が3回目だから合計107,500円も投資すんのかよ。ははは」

「・・・もう!またバカにして!」

「だってお前・・・」

「あと今更なんですけど、【お前】っていうのやめてもらえません!いつか言おうと思ってたんですけど」

「貴様よりはマシだろ」

「それは論外です!今どきお前って呼ぶ人なんて見たことないですけど。ずっと上から目線な感じするし。ある意味パワハラですよ、パワハラ」

「ヒドイ言われようだな。じゃあ、なんて呼べばいいんだよ、お前のこと」

「早速・・・ちゃんと名字で呼んでください」

「・・・そういえば何だっけ。ギャラリーでずっと下の名前で呼ばれてたから分からねえわ」

「ココノエです!ココノエ!」

「じゃあ、ココノエ」

「じゃあって、それにまだそんなに親しくないんで【さん付け】してもらえますか!?」

「なんでだよ。弟子だろ、お前、あっ、ココノエ」

「舌の根も乾かぬうちに・・・だってヨッチャンのことはちゃんと【ヨツモトさん】って呼んでるじゃないですか。あと弟子ではないです!」

「まあ、ヨツモトさんとはいろいろあるんだよ」

「いろいろって何ですか?とにかくちゃんと呼んでください。あと弟子ではありません!」

「じゃあ、どういう立場だよ、おま、いやココノエ・・・さん」

「まあ、いいでしょう。立場は先生と生徒、いや違うな。百歩譲って弟子風です」

「おいおい、だいぶ譲ったな。なんだよ弟子風って、ココノエさ・・・そもそもさん付けの前にココノエって言いづらいな」

「今度は名前のことバカにするんですかー!?全国のココノエさんに謝ってください!」

「いや、何かココノエって【心の声】みたいだし。よし、分かった。【親方(おやかた)】にしよう」(※2)

「えー、なんですかそれ!」

「だってココノエって何か親方っぽいだろ。それに弟子風ってのも合ってる気がするし」

「私が弟子風の立場なのに親方って呼ばれるのおかしくないですかー。それより今更だけど当たり前のように使ってる弟子風って何?!」

「まあ、いいじゃねえか。あだ名なら呼びやすいし。いや、あだ名じゃなくて愛称だ」

「どっちでもいいわー。納得は全くしてませんが、お前よりはマシなんで。だったら私もイチジョウさんに愛称つけてあげますよ!」

「なんだよ。イチジョウさんでいいじゃねえか。さん付けだし」

「そうはいきません!そうだなあ、ダサスーツ・・・ダサノート・・・ダサ人間・・・」

「おいっ、お前ただディスってるだけじゃねえか!あっ、親方だったなスマン」

「そこは別に謝んなくていいんで」

「俺は年上だぞ、せめてあだ名、いや愛称つけるならもっと敬った感じにしろや」

「年上?そういえばイチジョウさんっておいくつなんですかー?」

「・・・38だよ、38。ほら俳優の綾野剛とか藤原竜也と同じ」

「狩野英孝とかサンシャイン池崎と同じですね」

「おいっ!そっち側に誘導するんじゃねえよ」

「分かりました。それでは【おっさん】にしましょう」

「おっさん?」

「だってほら実際おっさんだし、それに一応【さん付け】じゃないですかー。ちゃんと敬ってますよ。はははは」

「お前なあ、いや親方なあ」

「じゃあこれで二人の愛称は決まりってことで。おっさん、これからもよろしくお願いします」

 二人は相手につけたあだ名、いや愛称がお互い腑に落ちていないことは承知していたが、相手につけたあだ名、いや愛称は気に入っているので、一旦受け入れることにした。それにしてもまさか二人のしょうもないやり取りのせいで次回へ続くことになろうとはね。はははは。

次回の更新は8/28予定です

注釈

(※1)「何回目だ?」:実はこれ結構深い質問なのです。なぜかというと実技試験が3回目なのは分かっているので、普通に考えたら学科試験を前回合格=2回目だとつい考えてしまいます。でもキャリコンの試験は単体受験も可能なので、もしかしたら初回は学科試験だけ受けて、実技試験を後回しにしたケースもあるからです(その場合、学科試験3回目で合格)。だからあえてイチジョウはワカバにオープンクエスチョンで応答したのでした。さすが頭の回転が早いイチジョウ!(筆者は好感度の低いイチジョウのフォローに必死です)

(※2)「ココノエって【心の声】みたい」:これは読者の方からも言われたのですが、先日試しにプロローグのところを朗読してみたら「ココノエ」を思いっきり噛んでしまいました。それでも全国のココノエさんは一切悪くありません。むしろ由緒のある素晴らしいお名前だと本気で思っています(筆者は少しでも好感度を上げようと必死です)。



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