見出し画像

『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-4

読了目安:約3分(全文1288文字)※400文字/分で換算

プロローグ「突然の出会い(4)」

「そういえばワカバは初めてだってよね。改めて紹介します。こちらイチジョウさん」
「はい、どうもイチジョウ リュウノスケです」

下の名前まで聞いてねえよと思いつつもワカバはペコリと軽く会釈してヨツモトに耳打ちした。
「あのさ、あの無礼な紫スーツ超怪しいんだけど、どういう関係なの?」
「お母さんの友達?知り合いだったかな」
「なんか曖昧。でもさ、何してる人?下積み中のマジシャンとか」
「そんなわけないじゃん。確かコンサルタントだったかな」
「えっ、コンサルタント?」
「そうだ、ワカバってキャリアコンサルタント目指してるよね。だったらイチジョウさんに相談してみたら」

そういうとヨツモトは再放置中のイチジョウへ声をかけた。
「確かイチジョウさんってコンサルタントでしたよね?」
「おう、そうだけど」

ワカバは疑いの眼差しでイチジョウへ確認してみた。
「コンサルって、キャリアコンサルタント?」
「コンサルだよ」
「えっ、コンサルって、キャリアコンサルタント?」
「だからコンサルだって」
「キャリアコンサルタント?!」
「何度も言わせるな。俺はコンサル!」
(このやり取り何度目。こんな会話にならない人いる?)

「しつこいな、俺は『企業』コンサルタントだよ」
「んん?キャリコンじゃないの?!」
「だから最初からそう言ってるだろ」
(ええー、企業コンサル(※1)って怪しさ満点の職業?捕まった人の肩書きでよく出てくるやつだよね。うわあ、この人大丈夫~?)

「俺は大丈夫なやつだ。ヤツラ(※1)と一緒にするな」
(えっ、どういうこと?)

「だから大丈夫なんだって」
(どういうこと?まさか、心の声聞こえてる?)

「ああ、聞こえてるよ」
(えっ、もしかして超能力使えんのコイツ?)

「コイツっていうな。ていうか顔に出過ぎだぞ、お前」
(なんか私の得意な心の声システム崩壊してるんですけど)

「昔から話してる相手の顔見ると言いたいことが何となく分かっちまうんだよ。よくいうだろ目は口ほどに物を言うって」
(へぇ、そうなんだ・・・って感心してる場合じゃないわ!心の声で会話してる場合じゃない)

「一応、俺は中小企業診断士だ。企業コンサルタントで唯一国から認められてる資格だ。だから捕まるようなヤツラと一緒にすんな。まあ、お前ごときは聞いたこともねえ資格だろうがよ」
「ああ、あの『足の裏の米粒』って揶揄されてる資格ね」
「そうそう、取っても食えない、っておいっ!それは知ってんのかよ。つうか一番声に出して欲しくないこと言葉にしやがったな」
何故かマニアックなこの資格だけは知っていたワカバだった。

「突然の出会い(5)」につづく(次回の更新8/20予定)

注釈
(※1)企業コンサル:本来は尊敬され誇らしい職業。あくまで本人の主観に基づく完全な偏見です。ココノエの半分は人への疑いで出来ています。

(※2)ヤツラ:自分の利得だけしか考えず、それ以外の人たちはどうなっても良いという超自己中心的な思考の持ち主を指す。本作品の読者にヤツラ側の人間はいないという前提で書いています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?