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『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-66

読了目安:約3分半(全文1,400文字)※400文字/分で換算

あらすじと作者コメント

登場人物の相関図とキャラクター解説

機会費用とサンクコスト効果②

 「確かにこの試験は、合格率が高いようにみえるので、誰でも簡単に合格できると勘違いしてしまう受験生もいるかもしれない。でも、実態を明らかにせず、ここに通えば必ず合格できるようなミスリードをしているんじゃないのか」
 イチジョウがサオトメをフォローするように代表へ問いかけた。それに対して代表はこう答える。
 
 「今度はミスリードですか・・・。どれだけ手を変え品を変え誹謗中傷すればすむのでしょうか。呆れてものも言えませんよ」
 代表が誹謗中傷を叫ぶ中、イチジョウはまた会場にいる受験生に問いかける。

 「この中で本当はここの勉強会に参加することが負担になっているというものもいるんじゃないか。もっといえば受験すること自体、苦しいと思っているものもいるんじゃないか。みな、どうだろう」
 イチジョウがそう問いかけるとまた皆うつむいてしまった。ただ、首を横に振るものもいなかったのだが、その様子を見た代表がすかさずこう言う。

 「そんなことを思っている受験生などいませんよ。もし仮にそんなことを思っている不届き者がいたとしたら、ここに二度と来なければいい話でしょう。本当にあなたの発言はただの言いがかりに過ぎませんよ」
 それを聞いたサオトメがまた口をはさむ。

 「確かに代表のおっしゃる通りではあります」

 「おっしゃる通り『では』?それは何か含みがある言い方ですね、サオトメくん」

 「はい、今までずっと黙っていましたが、彼らの気持ちを考えたら、お伝えせねばなるまいと思って」

 「一体、誰に、何を、伝えるというのかね」

 「イチジョウさん、薄々気づいているとは思うが、ここにいる全員が自分で望んできているわけではないんだ」
 サオトメがそういうとイチジョウはうなずき、周囲を見渡した。

 「先ほど代表からも話があったようにここの勉強会は、元試験委員という肩書を活かして、集客しているのは事実です。そして、その知識と経験をあてにして参加している受験生が大半なのだが、ひとつ問題があってね」
 サオトメが問題という言葉を出したことに憤慨した代表は思わず本音をもらしてしまう。

 「問題があるという認識をしているあなたの思考の方が問題です。まさか私がここの勉強会から離脱する受験生に圧力をかけているとでも言いたいとですか。全くあなたはどちらの味方なのですか。思い違いも甚だしいですよ!」
 圧力という言葉を聞いてイチジョウがすかさず代表を問い詰める。

 「今、圧力という言葉が出たが、そんなことは一切していないというのだな」

 「まあ、答えるまでもありませんが、もちろんその通りですよ。ただし」

 「ただし?なんだ」

 「私も元試験員とはいえ、今でも試験員を続けている知り合いはたくさんいますからねえ。でもそれは単なる客観的な事実です。それよりも私が受験生に対して、圧力をかけたという証拠でもあるんでしょうか」
 確かに証拠はないのかもしれないが、限りなくクロに近い。そのことは分かっているが、これ以上代表を追い詰めるのは難しそうだ。周囲も半ばあきらめかけているのを見て、イチジョウがまた語り始める。

次回の更新は2023/4/25予定です。

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