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『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-68

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あらすじと作者コメント

登場人物の相関図とキャラクター解説

機会費用とサンクコスト効果④

 「しかし、これまで参加者の中には受験を本気で諦めることを相談されたこともありました。でも、途中で受験を諦めた時に、もし今後また受験したいと思っても試験には不利になるかもしれないからと、引き止めていました」
 サオトメの悲痛な叫びに代表が詰め寄る

 「一体、何が不利になるというのです。まるで我々が受験生に対して、圧力をかけているみたいじゃありませんか」
 
 「もちろん、私にそんなつもりは一切ありませんでした。でも過去にこの勉強会から去った受験生がその後、苦労しているという話を何度も聞いていました。代表を疑うような邪推な真似はしたくありませんが」

 「サオトメくん!それが邪推というものですよ。何度も言いますが、私が圧力をかけたという証拠はあるんですか!さあ、おっしゃりなさい!」
 感情的になった代表に対して、サオトメが真摯に答える。

 「いえ、証拠はありません。それにそんなことは考えたくもありません。ただ、私がお伝えしたかったのは、相談してくれた受験生に本当の気持ちを聴けていたのだろうかということです。勉強会の都合や私の考えを押し付けていなかったのだろうか、と今更ながら自問自答しています・・・」

 「なんですか、結局自分が悪かったというセンチメンタリズムですか。そんなことを言ったところで、あなたが私を疑い、私を裏切ったという事実は変わりませんよ。どう落とし前をつけてくれるんですか!」
 激昂する代表に下を向き言葉が出ないサオトメを見て、イチジョウが声をかける。

 「サオトメさん、あんたの気持ちをはよく分かるよ。俺だって辞めるって相談された時、引き止めるのが最善策だと思ってたよ。でも、理由によっては相手の気持ちや考えを尊重することが大事じゃないかと思い直した。だから、そのあと彼女の話をしっかり傾聴して、最終的には辞めるという選択肢を否定することはなかった。むしろ今の自分が何か出来ることはないかと尋ねたぐらいだ」
 サオトメを労い、共感する態度を示したイチジョウに対して、代表が水を差す。

 「はあ、結局あなた達は自分のことしか考えていない。本当に受験生のことを考えているんですか。考えてもみなさい、これまで受験生がどれだけの努力をしてきたかを。途中で投げ出してしまったら、全てが無駄になってしまうのですよ。それを尊重して背中を押すのが悪いというのですか!」
 正論をぶつける代表にサオトメが疑問をぶつける。

 「サンクコスト効果ですか」

 「コンコルド効果ともいうな」
 イチジョウがすかさず答えると、ここまで全く出番のなかった主人公のワカバが、空気も読まずに無知をさらけ出す。

 「何それ?昔のコンビニ?鳥の名前?」

次回の更新は2023/4/27予定です。

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