『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-11
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相談者のしゃべるレベルが違う(1)
「せっかく試験の相談者役の話が出たから、しゃべる分量の違いも説明しておくか」そういうとイチジョウは手帳をめくり、新たな図を書き始めた。
「これを見てくれ。あくまで俺の私見になるが」
「今度は数字かー」
「試験当日の相談者役がキャリコン役の受験生に話す分量だ」
「一番上の10って?」
「これは面談が始まってからずっと喋っている相談者だ。現実にはありえないが、受験生に一言も質問させないレベルが10だ」
「それはそれでキツイね。最後までずっと頷いて相づちして終わりかー。じゃあ0は?」
「こちらも現実でも試験でもありえないが、一言も話さない相談者だな。これがレベル0」
「これはMAXキツイなー。こっちから質問しても無視でしょ。怖い怖い」
「では一般的に試験ではどのレベルかというと赤い丸で囲ったレベル6だ」
「レベル6ってどんな感じ?」
「一問一答型だ。例えばキャリコンから【今どんな気持ちですか?】と質問しても【辛いです】の一言しか答えない」
「そういえば試験の相談者もそんな感じだった」
「イメージとしては【人事から何の説明もなくとりあえず行けと言われて、少し不信感を持って望んだ面談の相談者】って感じか」
「描写が生々しすぎる・・・でもそれならキャリコンのこと疑ってかかってるから、来て早々たくさん話してくれるわけないね」
「レベル6の相談者はキャリコンの現場で割と多くいる。そもそも普通の人は自ら積極的にキャリコン受けようなんて思ってないからな」
「普通の人かー。確かに受験生同士が集まった勉強会ではみんなメチャメチャ話してる」
「ある意味、普通の人たちじゃないからな」
「私も完全に染まっちゃってるやー」
「勉強会の時に受講生が演じる相談者のレベルは7~8だろう。7はさっきの質問に【辛いです。あんなことやこんなこともありましたから・・・】と自ら話してくれる」
「そうだね。こっちから何も質問しなくても話が進んじゃうもんな」
「レベル8だとキャリコンが困った時に助け舟を出してくれる」
「質問がなかなか出てこなくて間が空いた時に【そういえばこんなことありましてね】なんてフォローしてくれることもあったなー」
「レベル9までいくと質問はかろうじてできるが、相談者の話す分量が多すぎてキャリコンが混乱してしまうこともある」
「そうそう、やたら早口でまくしたてる人もいたよ」
「実際、過去の試験では相談者に質問が4つしかできなかった受験生もいた」
「うわあ、かわいそう。そんなんじゃ公正な評価できないね」
「だから試験の時にはできる限り公正さと公平性を担保できるように相談者の話す分量を実務でも一般的なレベル6に統一している。これで相談者役の難易度を均等にしているんだろう」
「でもさー、合格した人が【スゴい話してくれたよー】って言ってた。これってズルくない?」
「いや、ズルくはない。なぜならその人はレベル6の相談者を話させている。だから合格できた。あくまで理想論だが、最初レベル6の相談者が面談が進むにつれて7→8と上がっていくのが望ましい。逆に最後までレベル6のままということは、ラポールすら形成されていない可能性がある」
「確かに私の時は、最初から最後までずっと同じ感じだったよ」
「ただその場合、必ずしも受験生が悪いとも言い切れない。なぜなら相談者役もしょせん人間だ。受験団体の意図を汲み取れていない、もしくは緊張や体調不良で言葉が出てこない時もあるだろう」
「でもそれって不公平だよね?受験生にはたまったもんじゃないよ」
「だからこそ試験官が面談の状況を把握し、難易度を微調整した評価をすべきなんだ。例えば、とても対応しづらい相談者にあたった時に【この状況でここまで出来たのなら・・・】という配慮があってもいいと思わないか」
「いや、常にそうしてくれてるんじゃないの。だってそれが試験官の役割でしょ」
「残念ながら過去の試験では全く配慮されない評価で涙を飲んだ受験生もいる。悔しかっただろうな。もし今後もその調整がなされないなら、対応しやすい相談者にあたった受験生の有利性は変わらない。つまりどの相談者役にあたるかの運・不運の試験になってしまう」
「高い受験料払って、当日まで誰に当たるか分からない【神様お願い!】みたいな運任せの試験って納得できない!」
「おい、ちょっと言い過ぎだぞ」
(ええー!何か裏切られた気分・・・)
「受験団体も今までの【受験生に試験を受けさせてやっている】という姿勢を改めていかないと・・・・」
(うわあ、どさくさに紛れて思いっきり皮肉ってるよ)と思いながらまたしても言葉を飲み込んだ。どうやらワカバは少し成長したようだ。
次回の更新は9/1予定です
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