『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-64
読了目安:約3分半(全文1,319文字)※400文字/分で換算
あらすじと作者コメント
登場人物の相関図とキャラクター解説
元試験委員の功罪②
「サオトメくん、もう一度先ほどの一文を読み上げてくれるかな」
「はい、『講師が元技能検定委員又は元キャリアコンサルタント試験委員であることを強調して講座の有効性を示唆するような広告宣伝は、これを自粛する。』のところでしょうか」
「いや、その前のところだよ」
「前というと『養成講習所定の時間内に専ら試験対策のための時間がある旨の広告宣伝や』で宜しいでしょうか」
「うん、そうだね。何か気がつかないかね」
「何かというと・・・」
考え込んでいるサオトメをみて、イチジョウがハッとし、声を発した。
「そうか・・・」
悔しい表情を浮かべるイチジョウをみて代表が語りかける。
「ようやく気づきましたか。そうなんです。この共同声明文は養成講習実施機関と登録試験機関が連盟で出しているのだよ。
代表はイチジョウを追い詰めようと言葉をつなげる。
「つまり、我々が主催しているような勉強会は対象外というわけだ。お分かりかな」
「くっ・・・」
考え込んでいるイチジョウがサオトメに声をかける。
「そういえばサオトメさん、確か前文に何か書いてなかったかな」
「ああ、ここかな。『一方、資格取得熱の高まりの中、国家試験対策テクニックの伝授を謳う団体や個人が市場に数多く参入し、これと並行して顧客企業やクライアントからキャリアコンサルティングの質や資格者の適性を疑問視する声があがっていることに、深い憂慮を禁じ得ません。』とは書いてあったね」
「ありがとうサオトメさん。まさに国家試験対策テクニックの伝授を謳う団体ってのがここの勉強会のやり方に該当するんじゃないのか」
一矢報いることができるかもしれないとイチジョウが代表を問い詰めた。
「はあ、何も分かっていませんね。だから何度も言っているでしょう。これは全て養成講習実施機関と登録試験機関が対象になっている。我々の勉強会が署名でもしているんですか。連名に名前はありますか。どうなんです!」
今度は代表がイチジョウを追い詰めている。
「・・・そうだな。確かにそうかもしれない。ただ、この受験テクニックを謳うやり方がこれまで様々な勉強会で横行し、キャリアコンサルティングの現場でクレームが出ているということにつながっているんじゃないのか!」
負けじとイチジョウも理論で代表を追い詰めようとするが、確信犯の代表には何を言っても通用しなかった。そして、代表がさらにイチジョウを追い詰める。
「あなたは全く受験生のことを分かっていないようだ。受験テクニックを謳っていることをここに来ている皆さんは理解したうえで参加しているのですよ。そんなことすらあなたは分かっていない。需要と供給の関係なのですよ。求められているから提供している。それの何が悪んですか!」
うつむいているイチジョウに代表がさらに追い打ちをかける。
【出所】
キャリアコンサルタント養成講習の基本姿勢についての共同声明文
*キャリコン・技能士の学科・論述・面接試験対策を希望される方は
次回の更新は2023/4/21予定です