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『聴けずのワカバ』(キャリコン資格取得編)-9

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試験制度の前提を再確認しよう(3)

「次は面接試験の前提を確認するぞ。まず出題形式として15分のロールプレイと5分の口頭試問で構成されている合計20分の試験だ」

「そんなの経験者なんだから分かります」

「ではひとつ聞こう。いつもどんな心構えでロープレしてた?」

「それは、15分を何とか消化できるように・・・」

「だからうまくいかないんだろ」

「だってロープレ苦手だし、時間もスゴく長く感じるし・・・」

「早く終わらないかなって」

「そう!最初はまだいいけど、途中から質問なくなっちゃって困る」

【8分の壁】ってやつだな。折り返し地点で急に頭が真っ白になって何聞いたらいいか分からなくなる」

「まさにそう!ああ、制度改正前は10分だったから早く受ければよかったな」

「そう思うか。でも不思議なもんだよな。制度改正前は【5分の壁】って言われてたんだぜ。結局受験生の心の持ち次第なんだがな」

「そうか、でも今の私は10分でも辛いかも」

「そらそうだ。たぶん5分だったとしても同じだよ。そもそも試験制度を理解してないんだからな」

「さすがに5分なら大丈夫・・・って自信持っては言えないけど、理解してないって何をですか」

「受験団体のホームページにある受験要項にきちんと記載してくれてるだろ」

そういうとイチジョウはスマホの画面をワカバに見せた。

「あっ」

そこには【実際のキャリアコンサルティング場面を想定して、面談開始から最初の15分という設定で行います。】と書かれてあった。

「トータルの時間が記載されていないので、全体で何分の面談かは分からない。でも大事なのは試験で行われる面談はクロージングができたかどうかの評価ではなく、あくまで開始15分の面談途中の定点的な評価に過ぎないということだ」

「なんかそう言われると参加した勉強会で他の受験生が言ってた【キャリ協は時間内に何らかの成果を出さないと合格できない】ってのが違ってみえるよ」

「だからみんな一様にジョブ・カードを提案したくなる」

「それって学校でも推奨されてたよ」

「よく考えてみろ。初対面の相談相手から話し始めて15分でそんなことされたら、相談者も困惑するだろうよ」

「まあ、確かに。それより私の話もっと聴いてくれーってなる」

「そうだろう。でもそんな都市伝説が未だに根付いてるには俺は2つ理由があると思う」

「2つ?」

「ひとつは2016年の制度改正における国家資格化になる時、明確な合格基準が受験団体から出されなくて、受験生が不安になったからだ」

「そういえば先輩方から聞いたことある。あの時は本当に何をすればいいのか分からなかったって」

「当然、情報を得られない受験生は全く悪くない。でもあの時は全国のキャリコンがほぼ全員【制度改正でロープレの時間が10分から15分に増えるんだから今までと同じやり方でいいはずがない】と言っていた」

「そら、仕方ないよね。情報ないんだから」

「対策講座を開講している講師や養成学校の先生までもが全員同じことを言っていて妙な信頼感があったから、その時の憶測が未だに定着してしまっている」

「そら通ってる学校の先生に言われちゃ、信じちゃうね」

「そうなるよな。俺が知る限り一人だけだよ。みんながどうしたらいいって不安になってる中、いち早く対策講座開いて【大丈夫。きっと今までとそんな変わんないよ。今できることやろう】と言ってたのは」

「へえーそんな人もいたんだ」

「当時からこの試験制度や勉強会のあり方に疑念があったからこそ、そう思えたんだろうけど・・・・まあ、その話はおいといて、もう一つの理由も聞いとくか」

「聞いといてやるよ」

「偉そうに・・・親方の性格は何となく分かってきたからもう何とも思わねえが、とりあえずちゃんと聞いとけ!」

「ほい」

「もうひとつの理由は、厚労省の影響が少なからずあると思う」

「なんで厚労省が?」

「厚労省がキャリアコンサルティングの基本的な技法として紹介している【システマティックアプローチ】は知ってるか?」

「なんか学科の時に勉強したような・・・なんだっけ?」

「これを見れば思い出すか」

そういうと厚労省のサイトから関連する動画をワカバに見せた。

システマ

                       (出所:厚生労働省)

「ああ、何となく覚えてる。はい、はい、アレね」

「(分かってねえなコイツ)。つまり面談は、まず(1)相談者と関係を築き、(2)相談者とキャリコン両方の視点で問題を把握する。そのあと解決するための(3)目標設定を相談者と合意し、達成するために必要な(4)具体的な方策の実行を支援するという流れを推奨している」

「難しいけど、何となく分かる。今は想像もできないけど」

「今は想像できなくてもいい。それで話は戻すが(3)~(4)が本来【クロージング】と呼ばれている面談の最終手順なんだが、おそらくここが独り歩きしてしまって【厚労省が推奨しているんだから試験でもやるべきだ】という考えに繋がってしまったんだと思う」

「そうかあ、受験生は教える人たちの言うこと聞くしかないからなー」

「受験生が錯綜した情報のせいで混乱してしまうのは仕方ない。悪いのは教える立場なのに自分の頭で何も考えず噂を鵜呑みにし、基本的な試験制度も理解していないくせに間違った情報をさも正しいと吹聴しているヤツラだろう」

「えらい悪態ついてるけど、それはさすがに言いすぎ」

「ああ、少し熱くなっちまったな。気持ちを切り替えて、じゃあ試験ではどのように面談を進めていけばいいのかこれから説明するぞ」

「うぃ」

次回の更新は8/30予定です

引用・参考文献

厚生労働省「キャリアコンサルティング技法解説<若者編>」https://www.youtube.com/watch?v=kelh90R4CUE&feature=youtu.be (2020.8.29アクセス)※動画ですので音が出ます。

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