見出し画像

「ムダムダムダムダムダ」を感じたら

『学習性無力感』

ムダムダ感が高まると「あきらめ」を学習してしまう恐ろしい病気。
心理学の世界では「セリグマンの犬の実験」が有名です。

犬のいる部屋で信号ランプを点灯させた後、床から電気ショックを与える。
犬は信号が点灯するだけで電気ショックから逃れようとする。
逃れることができないとわかると、信号が点灯しても犬は動かなくなる。

つまり「犬は無気力を学習した」と言われるものです。

あくまで自分の肌感覚ですが、人間界でもこんな「無気力を学習する場面」が増えている気がします。

1.無気力を学習する場面

ケース①
厳しいチェックで有名なA上司。「これは、こう」、「あれは、あれ」と細かいやり方まで指示をだす。部下は自分の頭で考えるよりも、とりあえず意思決定が必要なものはすぐにA上司の判断を仰ぐようになる。

ケース②
新人のOJT担当で、とても責任感の強いB係長。新人さんの仕事を一つひとつ、丁寧に確認する。仕事の指示も親切でわかりやすく、間違いのないように伝える。スケジュール管理もぬかりなく、納期に先がけて新人さんに声をかけてあげる。

A上司は、よくいる「嫌われ上司」の典型という感じですが、B係長も実は「学習性無気力」を誘発してしまう。最近は、人手不足の影響もあり、新入社員の育成が手厚いところも多い。
でも、これが行きすぎると、むしろ逆効果の場合もある。

B係長に手厚く育てられる新人は、失敗する経験が積めない

新人のときに、失敗して覚えることも事前に回避してしまうため、いつのころからか、失敗することがこわくなってしまう。さらに、デキル先輩が丁寧に手取り足取り教えてくれることで「自分は先輩がいなければ、何もできないかも」とか「どうせ先輩のチェックが入るから・・」という感情も生まれてくる。

こんな感じで、実はデキル先輩が「学習性無力感」を生み出してしまうことが考えられます。

2.学習性無力感をどう回避するか

(1)組織として失敗を許す
B係長の場合、素晴らしすぎるチェック機能が、新人さんの失敗を相当前の段階で未然に防いでしまっている。
なので、重大な失敗は別として、小さな失敗は経験させてあげたほうがいい。「できない上司の下についたほうが、部下が育つ」という理屈は、ある程度、あたっているなあ、と最近よく感じます。

B係長のように責任感が強い人は、新人さんの失敗でも「新人さんのOJTを任されている自分の責任」と感じてしまう。そう考えないように、その上の上司が「新人さんには、失敗してもいいから任せてあげよう」とB係長にアドバイスできるといいですね。
組織としては「新人さんの失敗は、成長のために不可欠」という新人さんの失敗を許す文化が醸成されるのが理想だと感じます。

(2)小さな成功体験をつくる
自分が先輩として携わったケースでは、早い段階で小さくても「成功体験」がつくれると大きな自信になるんだなと思いました。
「学習性無力感」を生むのは、「自分にはどうしょうもない」というマインドが生まれてしまうこと。
なので「これは自分がやりきって、みんなの役に立ったんだ」という思いを持ってもらえると、考えや行動が変わってきますね。
ただ、あまり任せすぎると途方にくれてしまうし、関わりすぎても自分の達成感が減ってしまう。このあたりのあんばいが難しいところですね。

3.最後に

 「学習性無力感」は、実は恐ろしい組織病だなと感じます。
社会がよりクリエイティブなものを求めているなかで「やってもムダムダ」が蔓延している組織から「新しいアイデアや発想」は生まれにくい。
新しいことを「考えて実行する」には「失敗が許される」組織がなんだろうなあ、と改めて思うところです。

さて、自分の組織には「インフルエンザ」やら「学習性無力感」は広がっていませんか?


感じて、考えて、表現します。「そんな考え方もあるね」と思ってもらえたら幸いです。