「この世界の片隅に」を観て①「赤ずきんちゃん」
映画を見た感想を書こうと思う。はっきり言って、かなり否定的な内容になってしまうだろう。
しかしこれを書かなければぼく自身が前に進むことが出来ない気がして、この場をお借りして整理することにした。
さて、この映画はとても人気が高く、世界でも数々の賞を受賞しているそうで、批判なんか書いたら「お前ごときが何を言うか」という声が飛んでくるであろう事は覚悟している。(但しぼくの覚悟は豆腐よりももろい)
この映画が好きだという方にとっては気分を害する内容も含まれており、この映画の世界観を壊さないで欲しいと思っている方はそっと退出してもらいたい。それでも「物申さなくては気が済まない」という方もいらっしゃると思う。
お答えは出来るかわかりませんが、その意見は顔面で受け取める覚悟でございます。
ぼくは今までの人生においても「みんなが良いと言っている作品」に対してかなり肯定的に生きてきたし、実際にそれらはぼくにとって、とても素晴らしいものだった。だから「この世界の片隅に」だってその例外ではないだろうと思っていたのだ。だからこそ希望をもって最後までこの映画を鑑賞した。
(劇場版「この世界の片隅に」だけを基盤にしており、原作マンガ、テレビアニメ、ドラマは拝見していないのでわかりません)
ぼくがこの映画の存在を知ったのはニュース番組だった。かなりのロングラン上映をしているそうだ。観た人へのインタビューでは「良かった」「感動した」と皆絶賛していた。なかには10回以上観ている人もいた。これほどまでに皆が良いと言うんだから、面白いに決まっている、いつか観なければ。とこの時ぼくは思った。しかし近くの映画館の上映予定をみても「この世界の片隅に」は載っていない。まぁ、田舎なのでしょうがない、いつかテレビでやるだろう、と思った。
しばらくしてこの映画はNHKで流れることになった。やっぱり、良い映画だからTVでやるのだと思った。録画した。
それから観る時間をなかなかつくることが出来ず、次第に優先順位があとの方になってしまい、ついこの間、やっとみた。
観終わってから、頭の中に霧がかかったようにもやもやしていた。このもやもやがいったいなんなのかわからなかった。
いいのかわるいのかもわからない。涙は出なかった。
感情を整理するまでに4時間ほどかかってしまった。そして憤りというか、怒りというか、恨みみたいなものがぼくの中で沸々と沸き起こり、悔しくて泣いた。これまでに感じたことのない悔しさだった。
(以下、これを読んでくださっている方は既に映画の内容を知っているという前提で話を進めていく)
前置きが大変長くなってしまった。
まず、主人公のすずの声をやったのんさんが素晴らしかった。いつものんびりしているすずの声はのんさんしかあり得ないと思うくらいとても合っていたし、とても自然だった。自然というか、のんさんはすずなのだと思うくらいだった。うん、本当に素晴らしかった。
1 将来の夫、周平との運命的な出会い
冒頭、すずが人攫いにさらわれた。この人攫いは全身毛だらけの大男で、現実にはこのような生物は存在しない。しかし舞台は日本の広島である。ここで物語はドキュメントをもとにしたフィクション(そんな枠組みがあるのかどうかは疑問だが)ということを暗示していると感じた。これはドキュメンタリーではないのだ。
毛だらけの男は狼に見えなくもない。
赤ずきんちゃんのパロディなのだろうとぼくは勝手に思っている。
すずは大男の大籠の中で周平と出会った。
すずは周平に「こいつは人攫いだ」と教えてもらってもいまいち危機感がなかった。
赤ずきんのおばあさんは「森では狼に気を付けて」と言うのだが、のんびりお花を積んだりして道草を食ってしまう。危機感の欠片もないところがそっくりだ。
周平は人攫いから逃げようという意気込みがあるのだがすずには気合いが感じられなかった。
すずはなんでもないように運命をそのまま受け入れてしまうようだった。
結局すずと周平は助かる。
大男はすずが持っていたキャラメル(海苔だっただろうか)を食べて眠ってしまった。お腹一杯になって眠ってしまったそうだ。
この場面もおばあさんと赤ずきんを飲み込んでお腹一杯になった狼が眠ってしまう場面を想起させる。猟師はおばあさんと赤ずきんを救出したあと、狼のお腹に石をつめるのだが、周平はそこまでしない。
その後猟師と赤ずきんちゃんが結ばれたかどうかは定かではない。しかし狼が猟師と赤ずきんちゃんの出会いのきっかけになったことは強く否定は出来ないだろう。
赤ずきんちゃんの童話の世界では、狼とは「理不尽」の象徴であるかのようだ。
この映画の後半に、すずが周平に「ありがとう。この世界の片隅に、うちを見つけてくれて」という場面がある。
すずにとっての理不尽は「戦争」である。
猟師が狼から赤ずきんを救ったように、周平は戦争からすずを救ったのかもしれない。
ここまでだとこの映画は「子ども向けであろうとしている」という印象を受けるのだが、ぼくは「この世界の片隅に」を子供に観て欲しい、とは言えない。
その理由はおいおい説明したいと思う。
note更新の活力にします‼️