見出し画像

スマイレージ世代の俺は名古屋に行く──アイドルとアイデンティティ

スマイレージ世代っていうのは一般的な用語じゃなくて自分で勝手に言ってるのですが、ハロプロのアイドルグループ、スマイレージ(現:アンジュルム)の結成メンバー4人のうち3人が1994年生まれでして、自分も同い年なのでそういうことにします。

大谷世代とか羽生世代とか言われてきたけど自分にとってはスマイレージ世代です。そもそもはスマイル+エイジの造語でもあるのでスマイルエイジエイジです。ん?

追記:このnoteはライブを見に行く前の話をしているので、ライブを見に行った感想は別で書きました。


部屋とハロプロとわたし

自分の中のアイドル現場原体験であるハロプロにはやっぱり強い思いがあるなと最近ひしひしと感じます。

幼少期から母親にジャニーズを聞かされて育った自分は、小学生まで男性アイドル大好き少年だったのですけども、中学入るか入らないかくらいに、急にハロプロが気になり始めました。

時期としてはハロプロの勢いが落ち着いてきてAKBが台頭してくるあたり、世間的な全盛期を過ぎた頃です。はっきり覚えてないですけど、LOVEマシーンと恋レボ、ミニモニ。くらいのおちゃらけたイメージしかなかったハロプロをなんとなく掘ってみたら、初期の曲めっちゃ大人っぽくてかっこいい……と感じて好きになりました。

デジタルネイティブなので2ちゃんねるとか見てたら、ミキティが脱退しただの、ハロプロは落ち目だの、彼女たちに対する風当たりってまぁ凄かったんですけど、Mステや紅白には依然として出てたし、逆にこの状況だからこそ感情移入してしまって、再び国民的アイドルに返り咲いてアンチを見返すまでの物語を勝手に妄想していました。それが2006年、2007年くらい。

で、そこから、高校生も半分過ぎたころ、世間的にはAKB全盛、でも地道に活動を続けているハロプロという対比があったわけですが、興味を持ったり離れたりを繰り返していた自分がようやくちゃんとドハマりするのがこの時期ですね。2012年、2013年。バラエティ番組でモーニング娘。をちょうど見かけた時期と、自分がギターを始めた時期が被って、YouTubeを漁ってたら、つんくのプロデュースってめちゃくちゃ凄いんじゃないか?!と、楽器を始めたからこそ、音楽的な良さに気付いて、より深く曲を掘り始めました。

そして知るわけです、この記事の表題に書いてあるスマイレージのことを。モーニング娘。にもBerryz工房にも℃-uteにも(後にはJuice=Juiceにも)同い年メンバーはいたけど、2009年結成メンバーの4人中3人が同い年で、しかもその当時ですら伝説扱いされている4人時代のうち2人はとっくに卒業引退したあと、2期メンバーを入れて6人で活動していました。4人時代は自分ですらテレビで見かけたくらい露出してて人気だったけど、6人時代になってから落ち着き始めてて、でもどの曲もめっちゃ良くて、他グループとは違う悪ガキ感にめちゃくちゃ親近感を覚えました。なんだこれ、好きになってしまうだろ──

で、高3の春休み、学校を卒業する寸前、田舎からスマイレージのミニライブに行って、初めて喋って握手したときに、芸能人って実在するんだ!!と思ったこと、1周目で福田花音さんに「同い年です!」って言ったら2周目で「同い年!!」と向こうから言われて驚いたこと、自分のキョドり具合から何から、11年経っても鮮明に覚えてて、やっぱり自分の人生それ以前/以後って言ったら大袈裟だけど、めちゃくちゃ大きい経験だったんですよね。それが6人のスマイレージで唯一参加した接触現場でした。

以前noteに書きましたけど、それから9年ぶりに同じグループを好きになって、2022年に出戻ったわけです。名前はアンジュルムに変わったけど、同い年から始まったグループが令和になっても未だに歴史を紡いでいて、当時在籍してたメンバー(竹内朱莉さん)がまだ在籍してて、リーダーになってて、その彼女の卒業コンサートで、自分が握手会に行った時のシングル「旅立ちの春が来た」が終盤で歌われる。そのイントロが流れたときの自分の感情。その現地に自分が居合わせているという事実。やっぱり、この出来事が持つ意味が自分の中でデカすぎました。何かの弾みで再びアンジュルムに出会わなければ、絶対に起こり得なかった出来事。

この真ん中2人が当時高卒直前18歳の同い年メンバー、和田彩花さんと福田花音さん

自分は、スマイレージ6人時代含めて現場に継続して通ってたわけじゃないし、長く見続けていたわけじゃないし、ただのモブでしかないけど、その数少ない昔の思い出をまだ大事にしてます。先月佐々木莉佳子さんの卒コンにも行きましたけど、彼女が「最後のスマイレージメンバー」なだけあってセトリにもスマイレージ曲が盛り込まれてたし、今回も「旅立ちの春が来た」をやると思ってなかったから、再びものすごい感情になりました。しかもグループ最大規模の横浜アリーナでそれが流れる。

18歳の時の自分に、「29歳になっても同じ曲を見ることになるぞ」と言ったらめちゃくちゃ驚くと思います。しかもそれを見て泣くなんて。「俺が戻ってくる場所はいつでもスマイレージ(アンジュルム)なのだな」と思って、自分らしさとかアイデンティティにグループが深く紐づいていることを実感したんですよね。

結局それから、セトリに一部知らない曲があったのが悔しくて、スマイレージ時代の全曲をカップリング曲も含めて集めようと思い(サブスクがないので)、デビューシングルまで遡って昨日やっと揃ったところです。

なぜアイドル布教が上手くいかないか

人間は、自分のものだと思えるものを好きになるのかなぁと思います。この文章だけだと曖昧すぎるので詳しく言うと、自分と似た要素を持っているものもそうですし、自分が体験した記憶、感情が動かされた記憶に関連するものには愛着が湧くものだと思います。例えば郷土愛の強い人は、地域で生まれ育った深い記憶があり、自分を構成する要素としてこの場所が欠かせないと思っているから、地元が好きで、誇りを持つことができますよね。

アイドルひとつとっても、今めちゃくちゃグループがいますけど、そのどれもを幅広く聞いてるとか、事務所関係なくどれも好き!って言ってる人は、あくまで知り合いの中ですがあんまり多くありません。だいたいの人は、特定のグループ・事務所に自己との関連性を見出し、その”ブランド”に愛着と誇りを持って応援しているように思います。坂道・48・イコノイジョイ・ハロプロ・スタダ、はたまたK-POPとか大雑把に分けたらきりがないですけど、あんまりそれらを横断して嗜好している人は見かけないというか、掛け持つにしても、それぞれに対してちゃんと愛着の持てる理由や思い出を持っている気がします。

例えばですけど、「パフォーマンスが売りです!」っていうグループのパフォーマンスが好きになったとして、じゃあ、他の「パフォーマンスが売りです!」っていうグループを紹介されたときに、じゃあそっちもホイホイ好きになるかっていうとならないんです。これは自分が布教される立場の時にも思いましたし、どっちかと言うと布教する立場の時に思いました。自分は出役ではないただの素人なので、どっちが良い悪いの技術的・客観的な尺度なんて持っていないし、じゃあ、パフォーマンスを仮に数値化できたとして、こっちの方が優れている、いやあっちの方が優れていると示されたとしても、「パフォーマンスが売りです!」のグループがその人の中で互換性を持つかというと、全然そんなことない。そもそも優劣とかじゃない。

どのグループにもその魅力を熱弁できる熱狂的ファンがいるように、本当は、どのグループにも代え難い魅力があって、どれもが素晴らしいはずなんです。なのに、(自分の)脳の仕組みはいびつだなと落ち込むことがあったのは、結局自分が応援しているもの、よく見かけたものの方をひいきしてしまうからです。良さを語っている人の言っていることに共感できないのは自分の文化的素養の問題?フラットに判断できないのは何のせい?っていうことがずっと自分の中で疑問だったし嫌だったのですが、結局、みんな「自分のもの」だと思えるから好きでいるのだろうなと思います。所有物というよりは、自分が選んだもの、自分が選んできたものという意味で。

つまるところ、ファンそれぞれにおいて、自分こそが能動的にそれを選択したという感覚、そしてそれに起因する体験の記憶が重要なのだと思います。そしてそれがアイデンティティを形成するし、「自分を構成する要素だ」と思えるからこそ、代え難い存在になると思うのです。

自分はハロプロが好きすぎて、ファンじゃないけど興味あるって言ってた5人くらいを実際に連番に誘って、ライブを一緒に見て、「ハロプロ!!!いいでしょ!!!!」と可能な限りアピールしました。みんな釘付けで、ライブ後はすっかり興奮冷めやらぬ顔をしていたのですが、時が経って、やっぱり、それぞれにおいては自分が能動的に選んだ、普段通ってるグループのほうが好きだから、そのあとみんながハロヲタになったわけではありませんでした。

それはもう、ものの良し悪しとか、客観的指標とか、アピールの上手い下手とか関係なくて、バイアスやアイデンティティの問題になってくるのだと思います。最終的に「アイデンティティ」と「ハロプロ」が結びつくまでいかなかった状態。自分はたまたまそれが結びついていた状態。そこの壁は、何のアイドルを布教するにしても大きな壁になると思うし、そもそも布教ってめちゃくちゃ成功率低い気がしてます。5人もライブに来てくれたのは奇跡だと思ってます。

布教が成功するというのは、布教した人がそれを達成したというより、それにハマるべくしてハマった人が、あくまでその布教をきっかけに見知った状態なのかな、と思います。これまで述べてきたような理由で、人は簡単に何かを好きにならないから、もし自分に、狂おしく好きに思えたり、愛着を持ったりできる対象があるとするなら、運命的な出来事だと思うし、それは本当に大事にしたいなと思います。そして、各々が想うその対象についてもできる限り尊重されるべきだなと思います。

SNSを断って情報の海から離れたときに、それでも自分が「いいな」と思うものは何なのかというのを改めて見つめ直したら、思い返すのは18歳の時の感動のことだったし、今聞きまくっているのはハロプロなんですよね。もちろん、欅坂のガチファンだった自分も過去にはいたし、〇〇さんが熱狂的にハマってる〇〇っていうグループも気になる。そこまで良いって言うのなら、っていう。うーん、だから、本当はもっとたくさんのものに並行して興味を持ちたいんですけどね。人生が一度では足りない。

夢見る29歳

人間は19歳、29歳など、9が付く年齢の時に大きい決断をする傾向があるみたいな話を行動経済学の本で読みました。

昨年末、M-1グランプリで令和ロマンが優勝したのですが、ついに、同い年(高比良くるまさん)からチャンピオンが生まれたということで、これは、いつまでも高校生気分だった自分の年齢を実感するには十分すぎるほど大きい出来事でした。

同い年の女性アイドルは加速度的に卒業していったけど、お笑いの世界ではまだあまり世に出ていなくてこれからという、文化の違いも面白いなと思いつつ、とはいえ同い年の鈴木愛理さん、西野七瀬さんなどが30歳になったみたいなYahoo!ニュース見るたびに、なんか本当に、え、俺も数か月後に30になるの??っていうちょっとした恐怖も覚えました。ついこないだ、アラサーに突入したってだけで大騒ぎしてたのに。

という具合に、自分の年齢について、そして、どういう30代にしていこうかということもめちゃくちゃ考えてたんですよね。状況的に20代と同じだらしない生活をしていて良い状況でなかったというのもありまして。

4年くらい坂道アイドル界隈にいたときは、そこのボリュームゾーンは大学生だったので、”若気の至り”たちの間での「90年代生まれはおっさん」とまで言えちゃう半分悪ノリみたいな風潮も感じてたから、たぶん過剰なほど年齢を重ねることに敏感になっていました。(念のため言っておきますが界隈の皆が皆そういう思想ではないです。たまたまそういうことを言っている少数が近くにいただけです)ヲタク仲間もほとんど年下だったし、年齢が近い人と集まれば「年下ばかりで肩身が狭いね~」なんて話で盛り上がりました。

「若さ」という、全員平等に漸減していく限られた資産、ある意味その通貨のようなものを失うのが怖い、っていうこれはこれで偏った価値観で生きてました。それは、単純に自分が世間知らずすぎて、一般社会の30代以降の充実した人生みたいなロールモデルを知らないだけだと思って、年齢に関する価値観を考え直したいとは思ってます。幸い、歴史の長いハロ界隈には(特に)面構えの違う歴戦のヲタク達がたくさんいるから、そのへんの話とかも聞いてみたいです。

たぶん、今の学生ヲタクとかが「ヤバイ、年下のアイドルを好きになっちゃった」とかつぶやいてるのを見て「いや、同い年が全員卒業してからが本番だろ」と言いたくなっちゃう自分とか、全然かわいいもんだと思うので。

名古屋に行かなければいけない理由がある

そんで昨日、たまたまYahoo!ニュースでこういう記事を見かけました。最近こういう、個人名をはっきり書かないで、誰か気になって読んでしまうような見出し、増えたなぁと思いながら。

「元ZOCで和田彩花との関係がどうたらってそりゃもう一人しかおらんだろ」
と思って悔しくもそれが誰かの答え合わせかのようにクリックしてしまいました。

元ZOCのカンナギマロ=福田花音さんと和田彩花さんの2人は同い年のスマイレージの結成メンバーで、先述した握手会のときも在籍してた2人です。そして、その中の一文に驚いてしまいました。

カンナギと和田は6月8日に開催されたライブイベント「和田彩花とオムニバス/カンナギマロ」で久しぶりに共演。その後も公演を続けている。

何ですかそのライブは???!?!しかも、「その後も公演を続けている」??!?!

そもそも自分はSNS辞めてる期間だったし、デジタルデトックスしすぎて現役メンバー問わず供給追ってなかった(理由は色々ある)ので、Yahoo!ニュースくらいでしか芸能情報が分かってなかったのですが、長年共演のなかった、事務所も違う、そして(勝手に)俺の青春である2人が令和6年にライブをやっているという事実をふいに目にしてしまい、これは絶対に行きたいと思ってしまいました。奇しくも、自分がちょうどスマイレージの音源を集めていたときに。

序盤で引用したスマイレージと自分についてのnoteを書いたときに「あなただからこそ、あやちょ(和田彩花)の卒コン見に行って欲しかったなぁ」と言われてそれは本当にそう、何でその時期にハロ追ってないんだ俺、と思ってたし、今年春にまろとさきちぃ(引退してた結成メンバー)が2人でイベントやったことも知っててめちゃくちゃ行きたかったと思ってたし、うーん、だから、要するに行きたい。現場行くのセーブして在宅になるとか宣言してたけど、いや行きたい。

で、調べたら、2週間後の7月31日、名古屋公演あるやん……。

購入しました。

対戦よろしくお願いします。

長々と書いてきましたが、「このライブに行くよ~」っていう、主題はそれだけです。

しかも前回の公演について調べてみたら、物販で3shotチェキ券売ってたみたいです。

自分、撮ります。いや、撮らせてください。

青春を探す

20代を終えようとしている身として、それをかつて経験した世代から学ぶことも大いにあると思いますが、現在進行形で30代に差し掛かる同世代の姿は特に説得力をもって感じます。

ハロプロにも、坂道にも、ももクロにも94年組はいたし、卒業後の活躍も目覚ましいものがあります。スポーツの世界でも、その他芸能においてもやっぱり、年上の世界だと思っていた分野で名を馳せている同い年の存在は、どうにも他の世代と違って見えます。やっぱり、同じ年月、同じ時代を生きてきて、それがどう結実したのかというのを如実に感じるからだと思います。

青春とは人生の或る期間を言うのではなく、心の様相をいうのだ。

Samuel Ullman, 1840-1924

かつてのバンド仲間が、30代に突入しても「今が一番楽しい、大学の頃には戻りたくない」と言っていました。正直、自分は、彼と過ごした、彼が戻りたくない20歳前後の数年間が一番楽しかったし、こうして書いてきたように18歳の原体験の幻影をまだ探しています。そして、今は死んだ目で働いてます。

彼女たち2人はどうなんでしょう?2013年3月25日に池袋のサンシャイン噴水広場に居合わせた自分と彼女たち3人は、それから11年4ヶ月を経て2024年7月31日に再会します。いや再会て、勝手に物語の登場人物にしているけど向こうからしたら俺は何者でもないですね。認知されてるようなヲタクですらないです。とはいえ、自分としては29歳の今、11年ぶりに彼女たちと対面するということに大きな意味があるんです。そして、過去ではなく「今」を表現する彼女たちのパフォーマンスにとても興味があります。

インスタライブで「30代の抱負は?」と聞かれた2人は「とても楽しみ」と答えていて、対して自分にその待望感・価値観がなかったことについて、とても思うところがありました。だけど、本当は年齢とか関係なく、楽しさなんて何度も自己最高を更新したいんです。

アイドルとして過酷な経験をしてきたからこその、彼女たちの精力的なセカンドキャリアに学ぶべきことがたくさんあるような気がしてます。公演時間2時間、きっとそこで刮目する生き様。

俺には名古屋に行かなければいけない理由がある。




追伸:今年のTIFはスマイレージ結成15周年を記念して「スマイレージ大好きステージ」をやるらしい、行きたすぎた

この記事の続き: