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パーキンソン病と詩吟

難病指定されているパーキンソン病ですが、難病の中では、罹患者が多く、かなりの確率で訪問看護を利用されています。

一般的に、パーキンソン病の症状に、「声」に関わる症状があります。声がかすれる、声がちいさくなる、発音が不明瞭になる等です。これは、発声に関わる筋肉の動きが鈍くなることに起因しています。

訪問看護師になりたての頃、日中独居のパーキンソン病の患者さんを訪問していました。息子さんが昼食に、おにぎりを握っておいてくれるのですが、大きく口を開けることができないので、お腹空いていても、おにぎりを食べる事ができませんでした。手にも振戦という震えがあり、箸やフォーク等を使うのもままならない状態です。そこで、そのおにぎりを崩して、海苔で細巻きにしました。そうする事で、細巻きをそのまま握って口に運び、食べることができるようになりました。これは、介護保険開始前の1999年の話です。今なら言語聴覚士の訪問リハビリを早期から導入して、発声練習や嚥下評価も定期的にしてもらう事ができます。当時は、介護保険もケアマネジャーもない時代でした。

昨日訪問した患者さんもパーキンソン病です。
声の症状があります。ほぼ聞き取れません。
言語聴覚士の訪問リハビリを週に1回、利用されています。この患者さんは、20代の時に、会社の同僚に誘われて、詩吟を始め、師範の資格もとられました。詩吟歴は、45年超え。年季の入った詩吟の本をお持ちです。
話し言葉は、不明瞭で、推測しながら会話しています。奥様の「通訳」を要するほどなのですが、これが詩吟となると、全くパーキンソン病を感じさせないのです。
低音の太い声。節回しもしっかり。
この日は、『静御前』を吟じてくれました。

詩吟は、地声でお腹(丹田)から声を出し、胸式と腹式呼吸を使い分けるそうです。母音の発声の際、口の形や舌の使い方も関係してくるらしく、これは、筋肉が剛直してしまうパーキンソン病の発声や嚥下にも、良い影響を与えている印象です。これは、意外な発見でした。

子どもの頃、アラビア文字みたいな吟符が書き込まれた『富士山』の歌詞が台所に貼ってあり、母が家事をしながら吟じていた光景
を思い出しました。

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