様々な意思決定の思考ルーチン

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指揮官は様々な状況に、最も最適かつ的確で迅速な指揮をしなければなりません。
そんな指揮官を支える様々な、思考ルーチンをご紹介します。

PDCAサイクル

"PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4段階を繰り返す事で、業務を継続的に改善する方法。"
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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これは第二次世界大戦後、主に日本で使用されていました。このPDCAサイクルは、Plan(計画)が起点である為、より確実な事前計画や手順作成に繋がる方法であります。
しかし、このPlan(計画)が起点である故に、現代の軍事活動においての速度が遅く、現場の指揮官からは不評でした。
結論、このPDCAサイクルは、事前計画や速度がそこまで要求されない状況での、手順の作成に友好な思考ルーチンと言えるでしょう。

OODAループ

"OODAループとは、意思決定と行動に関する理論"
"OODAループは、観察(Observe)- 情勢への適応(Orient)- 意思決定(Decide)- 行動(Act)- ループ(Implicit Guidance & Control, Feedforward / Feedback Loop)によって、健全な意思決定を実現するというものであり、理論の名称は、これらの頭文字から命名されている"
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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これは、挑戦戦争の時代に空中戦闘の洞察を基盤として、指揮官の意思決定プロセスをわかりやすく理論化したものであります。当初は軍隊の指揮官向けに作られたOODAループですが、現在では官民問わず個人単位、はたまた商業などのビジネス、人生相談などの哲学適理論にまで使用されています。
OODAループの最も特徴的なのは、「ビッグO」と呼ばれる2番目のOであるOrient(適用)が主軸であり、これはその状況に最も最適解な意思決定を下す事に重点を置いています。
Observe(観察)の段階で、外部からの最新情報のインプットを行い、Orient(適用)の段階で、これらの最新の情報を以下の5つの要素から構成された手順を行い、データを「価値判断を含んだインフォメーション」へと加工していきます。

"文化的伝統(Cultural Traditions)
分析・総合(Analysis & Synthesis)
従来の経験(Previous Experiences)
新しい情報(New Information)
世襲資産(Genetic Heritage)"
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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その後、それらの情報から最も最適なDecide(意思決定)を下し、Act(行動)を行う。そしてこれらの一連の流れから、行動の際に発生した新たなデータ情報を再びObserve(観察)するっという具合にループをする事により、常に最新の情報に適用し、最も最適解な意思決定を下す事が出来ます。
しかし、近年の戦いにおいては、OODAループですら遅すぎると言われており、筆者の考察では、Orient(適用)が主軸にある故に、どうしても速度が低下する事が原因であると推測します。また、このOrient(適用)の段階で、次のDecide(意思決定)に繋がる「価値判断を含んだインフォメーション」が生成されない時、このループがスタックすると言った弱点も、速度低下の原因でしょう。
結論、速度があまり要求されずに、かつより確実な最適解な決断を実行する際に最も友好な思考ルーチンと言えるでしょう。

IDAサイクル

"IDAサイクルとは、「ビッグO」の具体的な定義が困難であると結論し、最初の2つのOを「I」、すなわち「情報」(information)として統合したIDAサイクルに改訂した"
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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これは陸上自衛隊が、戦術作戦・戦闘教範である『野外令』に収録する際にあたって、OODAループへ注目した際に、先述した「ビッグO」の具体的な定義が困難であると結論し、2つのOをinfomation(情報)の一括りにした、OODAループの改訂版である。
最新情報を基に、より最適解な意思決定を下す事を重視したOODAループに対し、結果を導く3つの要素を重視し、従来の思考ルーチンよりも最も速度が速い意思決定の際の思考ルーチンであります。
OODAループとの最大の違いは、情報の処理であり、IDAサイクルにあっては、とにかく今ある情報(Infomation)から決断(Decision)し、素早く行動(Action)っと言った、速度が要求される現場において重宝されますね。
しかし、今まで紹介した思考ルーチンの中で最も速度が速い故に、より最適かつ念入りな計画や意思決定をする際には「情報の分析」が不足しがちであります。
結論、速度がとにかく重視される現場においての指揮官の思考ルーチンとして最適と言えるでしょう。

以上で様々な意思決定の際の思考ルーチンのご紹介でした。最後に筆者個人の見解でございますが、全ての思考ルーチンはどれが一番優れてるとかはないと思い、適材適所、状況に応じて使い分ける事で、最終的に意思決定をしなければならない立場の人間の選択肢を増やす材料になると思います。

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