争い事の勝利と敗北

古今東西、人類の歴史において争い事は切っても切れない関係でした。

そして争うという事の結末は、勝者が居て敗者が必ずいます。

そもそも勝利とは何か?敗北とは何か?そして争い事とは一体なんなのか?それらの仮設を、いくつかの参考文献と共に持論を展開します。

1.争いとは?

"戦争とは、敵を強制してわれわれの意志を遂行させるために用いられる暴力行為である"
カール・フォン・クラウゼヴィッツ ー 戦争論 第1篇「戦争の本質」より

戦術戦略などの軍事論や、経営戦略、リーダーシップ、組織論などのビジネスにおいても非常に重要な参考文献である、戦争論。

これらにも記載されている通り、そもそも争いとは何なのか?

結論、互いの意思のぶつかり合いであります。

"平和は人間にとって不自然な状態である"
イマヌエル・カント ー 永遠平和の為に より

平和論を唱えた、イマヌエル・カント(ゲームではメタルギアソリッド・ピースウォーカーでも題材が触れられていました。)も、人類から国家レベルの争い事を無くす為には「民主的平和論」を唱えていました。

つまり、この事から通常人類は争いをなくせる事ができない動物であり、これらの理由は以下の3点が原因と言えるでしょう…
1.人は資源を必要とする。
2.人は集団を形成する事で派閥が形成される。
3.人は、意志を個の単位で持っている。(持つ事が出来る)

まとめると、人の争い事という物の正体は、絶対悪などは存在せず、ただ我とは違う別の人間との明確な意志(単純な感情から欲求など)のぶつかり合いである。これが娯楽の作品でも描かれる事のある、俗に言う「正義の反対は正義」の正体である事でしょう。

2.勝利、敗北とは何か?

争い事における勝利とは、我の意志の強要を相手に強いる事が出来た時、勝利と言えるでしょう。つまり敗北とは相手の意志を我に強要された時である事が言えます。

人類の過去の歴史においても勝者は相手に対して様々な言論統制を掛ける事ができ、自分達の行いの正当性を明確化出来る。実際に過去に起きた第二次世界大戦での敗戦国である我々日本やドイツは、戦勝国であるアメリカやロシア、イギリスなどに争い事においての国家レベルでの言論統制と、戦勝国の正当性が強く教育されている。

この事から、おおよそ争い事においては、勝者が美化されがちである故に勝利に着眼点が最も行きやすくなっていると推測できる。

3.争い事を制するには?

今までの唱えた仮設を一旦まとめると…
1.人類は争い事をなくす事は出来ない。
2.勝者には絶対的利益を得る。
3.敗者には絶対的不利益を得る。
4.故に勝利や、成功という利の要素に人々は着眼しやすい。

この事から、多くの人は勝利を得る方法を模索してしまう事でしょう。

しかし、古今東西の戦略家はアプローチは違えどみな勝利に固執していない。

"戦わずして人の兵を屈する"
孫武 ー 孫子 第3章謀攻編より

中国のおおよそ2500年前の思想/戦略家である孫武(孫子)の残した兵法では、負けない戦い方を提唱している。

これは、勝利というメリットよりも敗北によるデメリットに焦点を当てた考え方と言えるだろう。

先述した通り、勝者にスポットライトが浴びせられがちな争い事において、敗北のデメリットは注目されていないが故に、敗北を避けるという思考は、ついつい忘れがちであると言えるであろう。

孫子では、この負けない戦い方を確実にする為には、そもそも戦わない事を提唱している。これは、そもそも相手を味方に引き込む事が出来れば、敗北せずに勝利する事が出来るからっという考え方です。その為、敗北を何がなんでも避けれるなら、手段を問わずなんでも行う事が孫子の兵法であります。

しかし、先に述べた通り、争い事は意志の違いによる起こる。故に避ける事が出来ないのも現実であります。これに対して、孫子は以下の言葉を残しています。

"将兵はまず勝ちて、しかる後に戦い(勝つべくして勝つ)"
孫武 ー 孫子 第4章形編より

孫子の兵法と言えば、最も有名な思想としては、「当たり前の事をして、当たり前の勝利をする事」である。

この言葉は、勝利という点に着目しがちではあるが、孫子ではそのような点ではなく、いかに負けないように沢山の準備が出来るか?っという点に着眼すべきである。

具体的には…
1.情報収集
2.我の状況の確認
3.相手の弱点を探す
4.自身の弱点を探す
5.確実に負けない状況になったら戦いを始める

この章での孫子は、奇跡的な勝利を収めた者や、英雄的活躍をした者を褒め称える書物を排斥する。これらの英雄的活躍を国や組織が行う理由は、一般大衆向けのプロパガンダの一環であろう。確かに劇的大逆転や、奇跡的勝利などは絵になるし、何より美化しやすい。しかし、実際は劇的であればあるほどそれは辛勝であり、早い話がギャンブル性の高い方法である。

"戦争は偶然を伴うものである。人間の行動において、戦争ほど偶然という外来物にそのような活動の余地を与えるものはないにちがいない。"
"戦争とその結果は絶対的なものではない"
"戦争とは、一回限りの決戦ではない"
カール・フォン・クラウゼヴィッツ ー 戦争論 第1篇「戦争の本質」より
"兵とは国の大事なり"
孫武 ー 孫子 第1章計編より

この2人の有名な戦術、戦略の書物からもわかる通り、戦争や争い事は多くの要素が絡む、ランダム性が強いイベントであります。

だからこそ確実に敗北を避ける為にも、ギャンブル性が高い方法は不適切であり、争い事の指標となるべく本来の観点は、敗北する可能性という点であると言えるだろう。

"失敗すればするほど、我々は成功に近づいている"
"私たちの最大の弱点は、諦めることにある。 成功するのに最も確実な方法は、常にもう1回だけ試してみることだ"
トーマス・エジソン

有名な格言としての所謂「失敗は成功の基」という言葉。これは裏を返せば失敗、つまり敗北する要因を改善していけば、やがて成功 = 勝利する事が出来るという事でしょう。

4.まとめ

結論、争い事における勝利とは、数多くある偶発的要因による物であり、敗北とは、いくつかの必然的な原因による物である。

最後に争い事の際に、確実な勝利を得る為の孫子の有名な言葉を紹介します。

"彼を知り、己を知れば、百戦危うからず。"
孫武 ー 孫子 第3章謀攻編より

争い事の正体は、お互いの意志のぶつかり合いである。つまり、相手の意志と我の意志を知り、そこから初めて計画を立て、確実に負けない戦い方を生み出す事が出来ると言えるでしょう。

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