デザイナー的マンガのすゝめ#1 図書館の大魔術師
普通のレビューとはちょっと違う視点
色んな表現をするからこその視点で考察
この漫画は言わずもがな、図書館、書物、本が
テーマになっている漫画である。
ここで本とは何かをちょっと考える、本=何かに関して記述されたものである。小説なら、苦学生の物語、金持ち少女と貧乏大学生の恋愛もの、歴史なら日本やアメリカその国々から世界史まで、技術書なら、畑の耕し方やエンジンの構造まで、哲学書なら、ある時代の思想や哲学、宗教本なら仏教やキリスト教の経典、、、etc
パッと羅列してもかなりの数になる、というかそもそも書かれていないものを探す方が難しいかもしれない。
この漫画はその本というものがどういうものか非常によく書かれている、例えば宗教の経典が人々に与える影響を現実世界で少し考えると、経典があるから人々の倫理観が育まれたり、個人の救いになり、争わずある意味効率的な人の営みがあったり、経典を読み宗教を信じる事によって、治世ができたり、はたまた経典というものがあったからこそ、効率的に、同一の思想を離れた土地の人に紹介することができたとも考えられる。
大魔術師がタイトルに入っている通り、これは現実世界の話ではない、しかし、その本の構造が宗教にしろ、物語にしろ、その世界観の中でちゃんと機能するようにより扱われている、例えばエルフがいた世界の宗教とはなんだろう、ドワーフが登場する技術書の役割は?、魔法が使える人の哲学書とはどんなものだろうか、それを想像するだけでも非常に面白い発想だなと僕は思う。本というものが良く描かれていることにより、その世界のある種のリアリティが非常に奥深いものになっている。
そしてそれは現実世界に戻り、自分の取り巻く世界を改めて面白いと思わせてくれる。現代ではなく、近世時の言語学の本があったからこそ、人々が多様な言葉でコミュニケーションや発信をしたから、現代があるんだなとか、宗教ってこんな感じで人々に影響していったのかなとか、漫画の中の本はあくまでフィクションだが、この漫画を通していろんな視点を思わせてくれるのが非常に面白い。
さらに主人公の視点で物語が進行していくことから、勿論その漫画の世界での人間関係や、友情、主人公の苦悩などがあるから余計に面白く、のめりこみやすい。
是非一読してはどうでしょうか。