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地獄について


いまわたしはこれを酔った状態で書いている。これを書くには酔いが覚めて少しづつ現実が見えて来る時が一番適していると思ったからだ。


伊藤計劃『虐殺器官』でとある登場人物が言っていた。
「地獄はここにあります。頭のなか、脳みそのなかに。大脳皮質の襞のパターンに。目の前の風景は地獄なんかじゃない。目を閉じればそれだけで消えるし、ぼくらは普通の生活に戻る。だけど、地獄からは逃れられない。だって、それはこの頭のなかにあるんですから」

むかし読んでいた時はふ~ん、くらいで読み飛ばしていたが、最近になって分かるようになってきた。

目の前で起きている事象や出来事は目を閉じたり出来事が終わってしまえばただの風景として消えていく。しかしひとたび目を閉じると、脳の中を色々なものが蠢き始める。

わたしの場合だと例えばあの時こうすれば良かったな~といった、自身の起こした行動の失敗や何もしなかったことに対する後悔、迷惑をかけたりや損害を与えてしまったということに対する罪の意識といったもの。
そういったものが現象としてではなく自身を通して解釈として現れる。忘れることができず、幼い頃からどんどん地層のように積み重なっていき、ふとした瞬間に地震のように地層が崩れそれらが溢れ出す。

例えばそれは不安。普段は今やれることを精一杯やって生きていこうとしているが、唐突に自身の思い描く最悪のシナリオが脳に描かれたり、自身が一番聞きたくないセリフの声が脳の中にひびいたりする。

これらは現象などとは違う。目を閉じたり元となった現象が過ぎ去ったりしても消えることはなく、脳に刻まれていき、生きている限り増殖して、ふと気を抜いた瞬間に蠢きだす。

そう、目の前の光景は地獄ではない。わたしたち(他の人がどうなのかは知らないが)は脳の中に地獄を飼っていて、日々それを鮮やかに描き続けている。

最近はそれらから逃れようと酒をめちゃくちゃ飲んで誤魔化している。でもきっとそれから逃れることは出来ないし、いつかそれに喰い殺されるんでしょう。『虐殺器官』でこのセリフを言った彼のように。

極貧なので石油王なら課金してください。石油王じゃないなら無理しなくていいです