「レジ袋いりません。その水切り袋も入れないでください。お箸もスプーンもいりません。」

最近スーパーで買物する度にこのやり取りが行われる。逆に断ることがデフォルトになると、毎回言わないといけないのでかなりめんどくさい。そのめんどくささが解消されてほしいのと、お店のレジ袋に対するスタンスや接客についても気になることが日常生活の中で結構あって、これまでほとんどしなかったのだけど、あまりに違和感がある場合はお客様相談窓口にご意見として投書を試みている。そんな中でも最近経験した2つの事例を物流とSDGsについて語る前に共有させていただきたい。ちょっと聞いてー。

1つは近所の高級スーパー。顧客サービスとしてなのだろうが、包装があまりに過剰で、レジ打ち1人に対して袋入れ係がもう1人ついて2人がかりで1人の買い物客を相手する。その袋入れ係がガンガン水切り袋に1つずつ生鮮商品を入れ、それを更にレジ袋に入れ、ご丁寧にお箸やスプーンもたくさんくれる。生産性も悪いしあんまりだなと思った私は改善のご意見としてWebサイトから意見してみた。返信は不要としたから返信はきていないけど、今もそのオペレーションが変わっていない現状を見ると今のやり方が正しいと考えているのかも知れない。というかそういう理解をした。とても残念な気持ちになった。

少し前までは当たり前で何も違和感を感じなかったこんな光景も今は時代遅れでカッコ悪いオペレーションしてるな、と感じるようになっているし、そこで買い物している自分がその企業を応援している感覚になって嫌になり、少し遠くなってしまうが別のスーパーで買い物をするようになってきている。

もう1つは京都のロフト。経験した事象としては前述の事例に近いものがあったけど、企業の対応は正反対だった。
マイバッグを持っていたので買ったものをそれに入れるよ、と申し出ると買ったもの1つ1つにお印のシールを貼らないといけないので、とシールをペタペタ貼ろうとし始めた。え?レジ袋ならシール貼らなくていいんですか?聞くと、はい、と言う。ペン含めた小物を結構な点数買っていて、急いでいたのと、後で剥がすのめっちゃめんどいやーんの想像力からマイバッグに入れるのを諦めてレジ袋に入れてもらった。レジ袋に入れるのにはお印いらんのかい!なんでやねん!となんだか釈然としない気持ちで店を後にして、何とか先程の事象に納得しようとしていたのだが、レジ袋に入れたらシール不要でマイバックはシールがいる、、、いや確かに万引かどうか分からんという理屈は一歩譲って理解できてもやっぱりおかしいやろ!と思って、Webサイトからおかしくないですか?とこちらも返信不要でコメントしたら売り場の責任者の方から迅速かつ丁寧に以下趣旨の返信を貰った。

この度は申し訳ありませんでした。環境問題の配慮への意識が高まる中で我々も対応を日々検討しております。この度ご意見を頂いた内容はその後担当者に事実確認をし、再発させないように全スタッフに周知・教育をしました。貴重なご意見、ありがとうございました。

やるじゃんロフト!素晴らしい対応!また買うからね!
非常に清々しい気持ちになった。

そんな個人の体験もそうなのだが、それに加えてここ最近、色んな人と会話する中でSDGsやエシカル消費、ESG経営といった言葉をかなりの頻度で聞くようになってきた。

「今回SDGsの担当になった」

「新しくSDGsの担当社員を入れようと思っている」

EUと比べると明らかにSDGsに対して意識の面でも対応でも遅れている日本でも少しずつ普及してきているのを実感する。

これはつまり、私が体験したような環境配慮できていない・メッセージが伝わってこない企業の製品や商品を買わない、という行動が少なからずとも広がってきているということなのだろう。企業としての対応やスタンスを消費者に示さないと売上が落ちてしまう。SDGs担当を置くというのはビジネスチャンスという側面ももちろんあるのだろうが、どちらかというと生き残っていくために必要なアクションだと判断しているということだろう。

ただ、それを全面に出していて実は実態が伴っていないというケースもたくさんあって、それはグリーンウォッシュと呼ばれている。SDGsに便乗してるだけで実態はないというやつだ。何でもかんでもそれありきで考えてしまうのではなく、このあたりはまさに倫理観やバランス感覚が問われるところだなと感じる。

偉そうに言ってる私も日常生活において変化が表れて習慣化できたのはほんとつい最近のことだ。なかなかこの習慣化が難しく、いつも通り家を出てしまってペットボトルのお水やレジ袋に入れてもらうという失敗を繰り返してきた。だが、ようやくここのところマイボトルの持参とエコバックを普段から携帯することが習慣化できてきた。これは喜ばしい個人の成長だ。

昔から動物が好きで、当時ワクワク動物ランドという関口宏さんが司会の動物番組の放送をかじりつくように毎週楽しみにしていて、そんな動物好きも高じてか、海洋マイクロプラスチック問題で改めて表面化した人間活動の結果で動物が苦しんでいる状況を、間接的かつ小規模でも何かできないかなと考えてきた。別に声を大にして言うことでもないが、WWFに対しての毎月の寄付もそのうちの一つ。昔はそこで働けないかと問い合わせたことがあったが、高度な専門性を求められる仕事でもあり、そのタイミングで中途は募集されていなかったのでそこで働くことは諦めて、違う形で支援をしようと思い、そこから寄付を継続している。

そんな流れもあり、SDGsに興味が沸いたのも自然なことなのだろうけど、概念は知っていても具体的にどういう構造になっていて、企業としては何をすればいいのか、その中で物流ができることは何なのか、ちゃんと考えようと思って勉強してみた。

基本的なSDGsの概念はネットや書籍でたくさん情報が出ているので解説はそちらに譲るとして、物流という切り口でSDGsを考えるとどうなるのか。

私なりの解釈ではあるが、物流がSDGsの達成に貢献できそうなところは大きく2つある。

まず1つは皆さんもぱっとイメージできると思うが、通販で商品を買って家に届けられた時の段ボール・緩衝材・納品書の類、あれだ。商品をGETした後は箱をバラしたり緩衝材のエアーを抜いてとひと手間だ。これは多くの人が体験されているのではないだろうか。商品を送る企業側もわざわざゴミになる段ボールを仕入れて緩衝材を買って梱包しているのだ。この企業における出荷や出荷するために行う入荷でも大量の段ボールと緩衝材を使用しているのが実態だ。段ボールは古紙回収でリサイクルはされているものの、他にやりようは必ずあるはずで、まずここは何とかしないといけない。

次に備品関係だ。物流センターの中で働いたことない人は想像しにくい世界だと思うが、企業活動における物流とはコストセンターであり、お金をかけなければかけないほど利益が生まれるため、低コストオペレーションが至上命題になる。それゆえ人件費や備品消耗品費もなるべく抑えるような力が働く。昨今人手不足により時給を上げないと労働力が確保できないということから図らずしも時給は上がってきているが、備品に関してはそうはなっていない。

ここで考えないといけないのはSDGsに寄与する物流備品とはどうあるべきかということだ。前述の通り、備品はとにかく安いものが仕入れられる。つまり使い捨てが前提になっている。ボールペン・テープカッター・軍手・エプロンなどなど、様々な物が現場では必要なのだが基本的には古くなったら買い換えられている。ここにも大きな余地があって、この状況を打破するために物流現場に持ち込まないといけない考え方は、リユースやエイジングといった考え方だと思う。

リユースやエイジングが重要とはどういうことかというと、ボールペンもインクがきれたら捨てるのでなく、万年筆のようなインクを補充するものに変える。エプロンや軍手といった装飾品も汚れたり破れたら捨てて交換するのではなく、パッチワークでリメイクしたり、ジーンズのような使えば使うほどカッコよくなるといった考え方、またそれを推奨しインセンティブを出すような仕掛けが必要だ。

物流は低コスト低コスト言われまくる領域なので、とにかくエシカル消費の概念が浸透しづらい。物流コストを圧縮して短期的な利益を生むことと、コストがあがっても環境に配慮した段ボールや緩衝材、備品を選択することの二律背反の構造を調和させなければいけないわけで、非常に高度な設計と意思決定が必要になる。

物流領域に限らず、SDGsを達成していくためには少なくとも短期的には利益が減るような瞬間が訪れるはずで、これまでの売上(個人で言えば世帯収入)が前提になっていると短期的な利益が減るだけの目先の行動は変えにくい。だからエシカル消費が浸透していくためにはまず個人の所得があがり、家計に余裕が生まれた中でサスティナブルなアイテムを購入するという順番にならないいけないわけで、そこも両輪で進めて行かないといけないのだろう。これがとても一筋縄ではいかない大きな課題だ。

でもその課題を乗り越えて、私は、サスティナブルな物流をやっている企業ってカッコいい、だからその企業から商品を購入しよう!

こんな声が聞こえてこなければいけないのだろうなと思うし、そういう社会を実現しないといけないと考えている。

生産性を高めていくことや物流人財を育てていくこと以外に、こうしたサスティナブル文脈で物流をカッコよくして、持続可能な社会に貢献することにも取り組んでいかなければいけない。これはやりたい事というより、もはや使命だ。

できることはある。必ずそれを実現してみせる。

物流、頑張ろな。


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