林田みさき_

私が特に女子長距離を応援する理由④

さて、今回も誰も興味のない連載のつづきです。早いもので4回目。

「応援する理由」というよりは、私のただの応援遍歴になりつつあります(;^_^A

いろいろ思い出してるとおもしろくなってきたので、なんとなく続けさせていただきます。今回もよろしくお願いいたします。

ちなみに、1回目 → こちら

2回目 → こちら

3回目 → こちら

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2014都大路

クイーンズ駅伝であらためて女子長距離の魅力と奥の深さを知り、もう離れられなくなった私。

次なる標的は暮れの全国高校駅伝(通称・都大路)ということになるが、当時の私はまだピンときていないというか、そこまでこの駅伝に注意を払ってなかった。

というのも、杜の都で急に女子長距離に目覚めてからまだ2ヶ月弱。この短期間にあまりに多くの情報を一気に吸収しすぎたため、ちょっと頭がパンク状態だったというのはある。

まだこの時点では、高校生にまで裾野を広げる心の余裕も体力もなかった。

これといった予習をすることもなく、なんとなく注目していたのも何年か前の都道府県駅伝でえげつない走りを見せていたのを記憶している髙松望ムセンビさんくらいだったと思う。

得てして結果は、その望ムセンビさん擁する大阪薫英女学院が初優勝を飾ることとなる。1区の嵯峨山さんからいい流れを作り、4区の前田梨乃さんで先頭に追い付き、アンカー勝負を加賀山恵奈さんが制するという強い内容。

しかし2位となった立命館宇治も非常にいい内容のレースで、当時は誰も知らなかったというのにかなり肩入れして観ることとなった。

そしてあらためてこの駅伝のリザルトを見てみると、まぁなんとも豪華!ほぼどのチームにも今なら余裕で知ってる選手がいるし、このときはたいした区間順位でもなかった選手が大学や実業団で大きく化けていることにも気づく。というより、優勝した薫英の補欠に前田穂南さんがいるというのがいちばんの衝撃。

このように、後々に振り返ってみてまた新たな発見がいくらでも出てくるというのも駅伝のおもしろいところだ。

2014富士山

都大路から間髪入れず(この年は都大路の2日後)、全日本大学女子選抜駅伝(通称・富士山女子駅伝)が行われた。

私の中での女子長距離元年を締めくくる大切な大会ということで、私もかなり気合いが入っていた。杜の都の余韻、余熱もさることながら、その後のリサーチで知っている選手が格段に増えたこともあり楽しみは尽きない。

レースは期待どおり、白熱したものとなった。

走る駅伝という駅伝で区間賞を獲り続けていた立命館の1区・大森菜月さんが、農大の飯野さんのスパートのキレに屈し区間2位に終わるという少し波乱のスタート。

大東は1区の小枝さんが区間7位という微妙な出だしとなったが、2区の森智香子さんが区間賞の見事な走り。程なく先頭に立っていた立命館をみるみる追い上げる。

エース区間の4区では、鍋島(鹿屋体大)、荘司(中京大)、野田(大阪学院大)の3名が区間新の競演を見せ盛り上げる。

5区では大東の福内櫻子さんが区間賞を獲得。大東は再び2位に浮上し、いよいよ立命館をロックオン。田山絵理さん満理さんの双子リレーにすべてを託す。

しかし立命館の6区・太田琴菜さんがえげつない区間記録の走りで、あらかたの勝負を決めた。大東も必死に食い下がったが、最終的にはアンカー区間で林和佳奈さんが奮闘した大阪学院にもかわされ3位に終わる。

というわけで結果だけ見れば立命館の危なげない圧勝ということになるのだが、杜の都から通算した個々のドラマを拾いあげて見ると、もうみんなが勝者みたいな気持ちになって思わず涙ぐんでいた笑

特に田山絵理さん満理さんなんかは、1年生のときに満理さんがつなげなかった襷(脱水症状で途中棄権)からすべてが始まっている。そんな2人の大学最後の駅伝で双子リレーして、最後の襷を満理さんが競技場に持ち帰ってゴールという最高の結末だった。そこに順位とかタイムとか関係ない。

また、都大路と同様にこの年の富士山にも「今になって見れば・・」という新たな発見箇所がいくつかある。

まず福岡大が6位と大健闘していること。逸木さんが目覚ましく一線級にまで成長していた時期で、それに追いつけ追い越せで髙木さんがメキメキと力をつけていた頃か。

そして10位の日体大。当時1年生の唐沢、植村、細田、田中の4人(「チームたまご」と本人たちは命名している)が全員揃って出場した記念すべき大会となっている。この連載が続くなら、いずれ彼女たちについても触れることになるだろう。

運命の2015皇后盃

年が明けて2015年。ニューイヤー駅伝や箱根駅伝も普通に楽しんだが、そこはさらっと割愛する笑

私が何よりも楽しみにしていたのは、皇后盃全国都道府県対抗女子駅伝だ。

もともと私が陸上にたいして興味のない頃からなんとなく毎年見ていた大会でもあるし、何より杜の都→クイーンズ→都大路→富士山とこの秋から冬にかけて楽しませてくれた選手たちがほぼ勢ぞろいするような夢の舞台に興奮が止まらなかった。

実業団や大学の選手は、普段のチームメートと同じ区間で戦うようなケースもある。また逆に普段はライバルチームで戦っている選手たちが、同じチームで襷をつないだりもする。今まで毎年なんとなく見ていただけのときはそのあたりの事情を何も知らずに見ていたわけで、今回はいつもの何十倍も楽しめるのだろうなという確信しかない。

またこの頃はtwitter上で絡んだことがある選手もそこそこ増えかけていた時期でもあるので、「知ってる子が走る」みたいな感覚がとても嬉しかったのを思い出す。

そしてこのレースがもう本当にすごい展開となり、ドラマチックな結末に私はレース後しばらく放心状態になったほどだ。

ではレースをおさらいしよう。(文中敬称略)

1区にはクイーンズ3区区間賞でデンソーの優勝に大きく貢献した高島(山口)や高2時のこの大会で1区区間賞の第一生命・上原美幸(鹿児島)、富士山で区間新出したばかりの野田(熊本)や荘司(愛知)らの実力者が揃い、さらには菅野(京都)、大森(大阪)の立命館同期対決にも注目が集まったのだが、区間賞は静岡の安藤友香(スズキ浜松AC)。

2区には高校生の有力どころと、森智香子(長崎)、木村友香(千葉)、飯野摩耶(山梨)ら日本選手権1500mの常連組とのスピード対決。区間賞は愛知の鷲見梓沙(豊川)で、この時点で愛知がトップ。

中学生区間の3区は髙松智美ムセンビ(大阪)の独壇場で、大阪が2位に浮上。しかし区間賞は林英麻(群馬)も智美ムセンビと同タイムで並んだ。区間3位はリンズィーヘレナ芽衣(神奈川)。

4区は妹から襷を受けた髙松望ムセンビが独走態勢に入ったかと思いきや後半失速し、それを抜き去り一気にトップに躍り出たのは兵庫の太田琴菜だった。なお区間賞は沼田未知(埼玉)。

5区、6区は立命館宇治の真部、小西が相次いで区間賞を獲得し、京都がついに先頭に。

7区は都大路アンカーで優勝のゴールテープを切った加賀山恵奈(大阪)が区間賞の力走で、先頭の京都から6秒差の2位まで追い詰める。

8区の中学生は村尾綾香(京都)が先頭を堅持し、鹿児島が2位に浮上。大阪が3位に後退。田中希実が区間賞で4位に上がってきた兵庫が先頭から30秒差で、ここまでが優勝争いの圏内かと思われたのだが・・・。

ついに運命のアンカー9区。

京都の奥野に大阪の松田瑞生が追いつき、マッチレースの様相に。兵庫の林田みさきが3位に浮上したのだが、その後方からものすごい勢いで追い上げてきている選手がいる。

先頭からちょうど1分差の6位でスタートした、鈴木亜由子(愛知)だ。

奥野、松田が牽制し合っているそのうちに、鈴木亜由子の姿はみるみる大きくなってくる。そして鈴木に追いつかれた林田もそこに着き、ともに追い上げる。ゴールの西京極競技場が見え始めた頃には、史上稀に見るアンカー4者による優勝争いが始まった。

競技場内のトラック勝負になった瞬間は鈴木が全員を飲み込む雰囲気だったのだが、奥野、松田も必死の抵抗。そして残り200mになったとき、スパートのタイミングを一瞬ずらした林田が今度は一気に先頭に立とうかという雰囲気に。

最後の直線。熾烈な争いをわずかに制しドヤ顔で優勝のゴールテープを切ったのは、松田瑞生(大阪)だった。最後まで粘りとおした奥野(京都)だったが、惜しくも2位。3位には、林田(兵庫)が鈴木(愛知)を振り切って入線した。ちなみにあれほどの追い上げを見せた鈴木だが実は区間2位で、区間賞は前田彩里(熊本)だった。

今思い出しても興奮が蘇ってくるこのレース、私は初めて駅伝を見ながらテレビの前で叫んだ。そして震えて泣いた。

この素晴らしい女子駅伝の世界を、ずっと応援し続けその魅力を発信していくしかない。

私の覚悟が完全に固まったのがこの駅伝だったということで間違いないだろう。

みんなのお手本、林田みさき

そして私がこのレースでもっとも印象に残った選手は、林田みさきさん(豊田自動織機)だった。

彼女とはクイーンズ駅伝後くらいからよくtwitterで絡むようになっていたのだが、とにかくその人柄が素晴らしい。礼儀正しく、やさしく思いやりがある。当時まだ高卒1年目ながら、落ち着きのあるたたずまいでしっかり者。いわゆる「最近の若者」像からはかけ離れていた。愛くるしい笑顔だけを見れば幼さも感じられたのだが、スラリとした長身からのなめらかなフォームで走る姿は大人びている。

私が具体的に彼女のことを「いい子だな~」と思い始めたのは、クイーンズ駅伝後のコメント。彼女は高卒ルーキーながらエース区間の3区を立派に務め上げたのだが、「今回の駅伝は1区の(沼田)未知先輩がいい流れを作ってくださったことがすべて。わたしも(2区・区間賞の福田)有以も、それに乗っかっただけ。」このような言葉を残していた。私が評価する彼女の人柄が、すべて詰まっているように思う。

そんな彼女が、当時はまだ適距離とも思えなかった10kmのアンカー区間で出色の走りを見せた。あのタイミングをずらしたスパートのときの輝きはずっと忘れない。

こんな素晴らしい人柄の選手たちがたくさん頑張っている、この女子長距離の世界。私の大好きが止まるはずもないだろう。

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というわけで、第4回はここまで。

第5回からは、いよいよ生観戦編が始まる予定です。

誰も楽しみにしてないでしょうが、私が楽しくなってきたので続けることになると思います笑

それでは失礼いたします。



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