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映画「ゆめパのじかん」が伝えてくれたこと

公開が待ち遠しかった映画「ゆめパのじかん」を先日観てきました。
神奈川県川崎市の公設民営施設「川崎市子ども夢パーク」、通称ゆめパに流れる"じかん"にそっと身を委ねて過ごす90分。「きみはきみのままでいいんだよ」というメッセージを過去とこれからの自分にもお裾分けしてもらった気持ちになったので、感謝を込めて感想を残します。

転ぶことも応援してくれるオトナ

最初に子ども夢パークを知ったのはいつだったろう。自然の中でのびのびと、その空間をどう使ってどう遊ぶかは子どもたち次第のプレーパークに加え、フリースペースも併設された広大な遊び場。WEBサイトや事例紹介などでゆめパのことを知るたびに、子どもたちと一緒にこの場をつくり続ける大人の信念、眼差しがあたたかく散りばめられていることを強く感じる憧れの居場所です。
映画を鑑賞したことで、毎日毎日、"いつも"の中にその眼差しがあって、愛おしさに溢れているんだと改めて感じました。

▼子ども夢パークの基本理念
https://www.yumepark.net/121_idea/

安全かどうか、ワン、ツー、スリー!

高い滑り台の上から子どもたちが三輪車を落とすシーンがある。「どうなるのか」「安全かどうか、1回」と確認している子どもたち。このシーンもとても好きでした。その場に自分がいたら三輪車を投げ落とすことを止めてしまいたくなりそうだけど、我が身を振り返っても同じ経験をしたことがあるし、なんとも愛おしいやりとり。(結局滑り降りて先に落とした三輪車にちょっとぶつかって「いてー」と言っているシーンに劇場内では「もうまったく」という声が聞こえてきそうな笑い声が起こりました。こういう空気感が何度も場内に訪れた。)

えんの子どもたち、大人たち

フリースクールえんを利用している子どもたちも多く登場する本作。サワさん、リクトさん、ミドリさん、ヒナタさん。それぞれの暮らしの中のほんの一瞬だけを映画を通して覗かせてもらっているのだけど、好きなことに打ち込む時の表情、自分のこと、学校のこと、社会のこと、いろんなことをちゃんと受け止めて声に出す言葉のひとつひとつがとても素敵でこんな方々に会ってみたいなと思いました。また印象的だったのが福峯さんという子どもたちに木工技術を教えている方。とっても愛情に溢れた温かい方であることが全面に伝わってきて、一方でプロの仕事に手加減を一切しない。

どのイメージにするのか自分でしっかりしないと。これ全部見てたら、全部違うよ。全部だめになるよ

「ゆめパのじかん」福峯さんの言葉より

福峯さんがミドリさんの木工細工へアドバイスをしている時の一言なのですが、私は「ありたい自分をしっかり見据えなさい」と自分に言ってもらえたような気がした。元所長の西野さんをはじめ、子どもたちの周りにはこんなに素敵な大人がたくさんいる。

「好き」は楽しいばかりじゃない。

将来のことを考え、悩むサワさん。動物が大好きだからこそ職業に選ぶかは真剣に考えているリクトさんなど楽しそうな姿の向こう側で葛藤しながら生きている。それはきっとどこにいても、どんな人もそうだ。私たちは自分の人生しか生きたことがないし、好きなもの、好きな場所、好きな人を選んで苦しいこともある。

学校に行かない生き方の中で、子どもも親も身悶えしながら、なんかさ、自分なりの生き方を探してる。だから悩んでる子どもたち、ほんとに悩んでるなって思うけど、自分なりの答えを見つけていくプロセスって、すんげえことだって思うね。

「ゆめパのじかん」西野さんインタビューより

未来はひとりひとりの手作りの希望からしか生まれない。

エンドロールが終わり、ポレポレ東中野のロビーへ出ると、階段に沿って作品を鑑賞した方々の感想が飾られていることに気がついた。目に飛び込んできたのは谷川俊太郎さんのこの言葉。「未来はひとりひとりの手作りの希望からしか生まれない」。映画のラストメッセージのような温度感に包まれて劇場をあとにしました。

映像作品は撮ってそのまま出すものも稀にあるけれど、映画の多くは編集によって完成する。特定のだれかの判断でシーンが選ばれ、順番が変えられ、はじまりとおわりを持つ映画になって届けたい"印象"が客席へ届く。だとしても、この映画が伝えてくれたことは、ちゃんと今日も明日もあの場所にあるんだと強く思いました。そして観た人の心を通して、眼差しの変化を通してつながっていく。

この映画がたくさんの方に届きますように。

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