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「字幕」の役割は情報の〇〇

みなさん、こんにちは!カンバスです。早いもので、2024年も折り返し地点を過ぎました。真夏のような暑さが続いていますが、体調を崩されてはいませんか?

カンバスでは先日、新開発した音声ガイドの台本ソフト「ディスクラ」を発表しました。おかげさまでたくさんの方にお問い合わせを頂いており、嬉しく思います。音声ガイドについては前回のnoteで少しご紹介していますので、ご興味がありましたらご覧になってみてください!

今回のテーマは、「字幕」と「テロップ」です。


「字幕」と「テロップ」はまったく違うもの

私たちカンバスは「字幕のことなら何でも聞いてください!」と胸を張って言えますが、実は「テロップ」についてはまったくの専門外です。ご質問いただいても、残念ながらお答えすることができません…
それくらい、「字幕」と「テロップ」は違うものなのです。

では、どのような違いがあるのでしょう?
簡単に言うと、「テロップ」は映像の演出効果として、「字幕」は情報の補完として表示される文字です。

「テロップ」とは 〜テレビ番組の映像をイメージしてみよう!〜

「テロップ」の一例として、テレビ番組の映像に注目してみましょう。
みなさん、ちょっと頭の中にテレビのニュース番組の映像を思い浮かべてみてください。
お医者さんの顔が映し出され、インタビューに答えています。サイドや下部に「○○病院△△科□□□□医師」と、肩書や名前が表示されている映像を自然とイメージすることができるのではないでしょうか?「○○治療の研究プロジェクトに10年以上携わる」「著書『○○○』『△△△』など」といった略歴なども表示されているかもしれませんね。

今度はバラエティ番組の映像を思い浮かべてみましょう。
「チャレンジ成功なるか!?」「この後、○○の正体が明らかに!!」というようなフレーズがカラフルな文字で大きく表示されている映像を思い浮かべる方が多いかもしれません。
あるいは、「マジか!?」「もうやめてくださいよ~」などのような、出演者によるキャッチーな発言の一部が抜き出されて表示されている様子もイメージしやすいと思います。

これらは映像の演出として入れる文字で、すべて「テロップ」です。
「テロップ」には、映像内容をより分かりやすくしたり盛り立てたりする文言や、目を引きやすい書体・色・大きさなどを工夫することで、視聴者を惹きつける効果があります。

テロップの一例

「字幕」とは 〜バリアフリー字幕と翻訳字幕〜

対して、字幕の役割は「情報の補完」です。音などから得られるはずの情報が障がいや言葉の壁など様々な理由により得られない人に対し、それを文字で補います。
「バリアフリー字幕」を例に出してみましょう。 音が聞こえない、聞こえにくい人は、セリフ・物音・音楽などの情報を映像から読み取ることができません。このため、バリアフリー字幕ではそれらの音情報をすべて文字にして補っています。
セリフに関しては基本的に一言一句すべてを字幕にして、テロップのように演出上効果的な発言だけを選んで表示するということはしません。「あっ あの...」のような言いよどみなども、音情報として基本的にすべて字幕で表すのです。
物音もできるかぎりすべて文字で起こします。例えば「映像に映っていないところでドアが開く音が聞こえたから驚いて振り向いた」というシーンでは、振り向くきっかけとなった「ドアが開く音」を字幕で表したり、「主人公の思い出の曲がスピーカーから流れて感傷に浸る」というシーンでは「♪ (曲名)」のように音楽を字幕で表すこともあります。

こうした字幕表示は、映像のみからすべての情報を得られない人の不平等を解消する役割があります。

バリアフリー字幕の一例

外国語の作品についている翻訳字幕についても基本的な考え方は一緒で、言語が分からずストーリーが理解しづらい人のために文字で情報を補います。
翻訳字幕の場合は「音は聞こえるけれど意味が理解しづらい」ことを想定しているため、物音や音楽まで字幕で説明する必要はありません。

だからといって、セリフだけを字幕にすればよいのかというと、そうでもないのです。
忘れてはいけないのが「映像に表示される(または映り込む)文字の翻訳」です。

例えば、画面に「10 years ago」という英語のテロップが出ていたら、「10年前」という日本語字幕が必要です。あるいは、画面に英字新聞の見出しが映り、それを読んだ主人公が血相を変えて部屋を飛び出したというシーンでは、見出しの翻訳を字幕で表します。どちらもストーリーの展開には欠かせない情報だからです。

翻訳字幕の一例

バリアフリー字幕も翻訳字幕も、情報を補完するための文字ですので、派手な色や書体にすることはありません。バリアフリー字幕の場合は、ルールに従って話者ごとに色を変えることはありますが、これは演出のためではなく、あくまでも誰のセリフかを知らせるためです。声色で会話を聞き分けられないことを想定しているバリアフリー字幕では、状況によっては「(佐藤)ありがとうございます」「(鈴木)どういたしまして」のように字幕に話者名を入れるのですが、字幕に色を付けて区別することでこの話者名が省略できます。これは、少しでも文字数を減らして読みやすくするための工夫です。

書体は、パッと見て読みやすい文字、いわゆる「視認性の高い」書体にします。字幕は1本の映像作品で数百枚、多い時は千枚以上になりますし、セリフが続くシーンでは次から次へと連続で表示されることもあります。これを次々と読みながら、映像自体もしっかり見て作品の展開についていかないといけませんので、ストレスなく読める字体が求められるのです。

字幕の業界ではよく、「映像を見終わった後『字幕が出ていたことに気付かなかった』と感じてもらえる字幕が理想的」などと言われます。
翻訳字幕の場合は「『字幕を読んでいた』のではなく『自然と俳優さんのセリフが理解できた』と錯覚するような字幕がいい」とも言われます。

字幕はあくまでも脇役で、映像を縁の下で支える存在なのです。そんな字幕を作るために、字幕制作に携わるみなさんは手間暇を惜しまず、日々奮闘されています。

・・・さて、読者のみなさんは、この記事のテロップに関する記述と、字幕に関する記述の文章量の圧倒的な差にお気づきでしょうか?(笑)
ご覧の通り、私たちカンバスがテロップについて語れることはごく僅かしかありません。
一方、字幕に関してはまだまだ語り足りないくらいです!これからもこのnoteで少しずつご紹介させてくださいね。

いかがでしたが?
次回のnoteもお楽しみに!

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