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無知は怖い話

あれは元号が昭和から平成に変わってまもなくのころ

若いわたしは夏休みを利用して
ひとり、三泊四日の予定で北海道の知床へ向かった

あの頃は怖いものなしで
海外旅行もひとりで出掛けることもたびたびあったし
周りの友人たちも同じようなものだったと思う

知床は憧れていた場所

まず釧路に降り立ち、広大な湿原に感動
ところが…
胸は高鳴るけれども、北海道は広すぎて
どの目的地へいくにしろ、電車に乗って数時間
バスに乗り換えてまた一時間

ガイドマップを頼りに
ここと、ここ、時間があればあそこへも行こう!
そんな感じで行きたいところをざっと決め
初日から精力的にまわったものの
完全にルートミス!

待ち時間も多く、移動ばかりしていた気がする(泣)

ただ、どうしても行きたかったのは知床岬
必ず辿り着かねばならなかったため
途中の誘惑はとばしてとにかく急いだ

知床の入り口のウトロに到着した早朝
インフォメーションセンターのようなものが
あったにもかかわらず
見る先は一本道だったから
迷うこともなかれと思い
立ち寄ることもせず
岬方向へと、わたしはずんずん歩いていった

そんなに遠くはないと思い込んでいた

縮図の倍率など見ていなかったから!

坂を下った辺りで何台かの車が止まってくれたが
断って進む

若かったものだから
下心でもあるのかと勘ぐって
反って憤慨した…記憶もある(すみません⤵️)

しかし

歩いても歩いても景色が変わらない
後ろを振り返って
でもまぁ、進んでるな、ということはわかった

それにしても、あまりにも周りが静かすぎて
さすがに心細くなる
誰一人として人間にすれ違わない
観光地へ向かっているというのにね

やっぱり車に乗せてもらえば良かったな、と後悔する

しばらく行くと標識を見つけた

まっすぐ行けば知床五湖に到着すると確認できたけど
もう2時間近く歩いていたかと思う

それでも正直、助かった!と叫びたいほど安心した

それからも途中、大型バスや車は通るけれども
歩いている人はひとりもいなかった
そういえばバス停は一つもなかった

たまに朽ち果てた木造の小屋がいくつかあって
どの小屋のなかにも草がぼうぼうと生えているのが見えた

ようやく大型バスが停まっている場所に辿り着けたときは
心からほっとしたものだ(しかし、そこでさえもまだ五湖ではなかった!)

すでにヘトヘトだったので
この場所から五湖へのバスに乗れると聞いて
慌てててチケットを買って準備

時間に遅れないように気を付けながら
それまで辺りを探索

念願の五湖に到着してからは
人がいる安心感の中で大自然を満喫できた
一湖から五湖まで、スタンプを集めながら
嬉々として散策することができ
目的は叶ったわけだったが…

あとで聞くと
あの辺り一帯は
ヒグマが出るので歩く人はいないそうだった

だから皆さん、車を停めてくださったんだな、と
ようやく事を理解して心臓がバクバク

もちろん帰りはインフォメーションセンターまで
直行の大型バスに乗る

その夜の宿泊先で出会った年配の女性は
わたしの話を聞いてびっくりしていた

そして、きっと呆れてもいた

無知は怖い

ヒグマが鮭を食い荒らしているとか
エサを探して人里まで出てくるとかいう
ニュースを聞くたびに今でもぞわっとする

無知は本当に怖い

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