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305 天空の駅と余部鉄橋を訪ねる・兵庫県香美町

わたしは筋金入りの鉄道ファンです。
全国の鉄道に乗り、鉄道史跡を巡ってきたのですが、なかなか訪ねる機会がない場所がありました。

それが兵庫県北部、山陰本線にある余部(あまるべ)鉄橋。日本でも指折りの高い場所を走る鉄橋として有名です。

この鉄橋を朝訪ねるために、香美町で一泊しました。香住駅発の一番列車に乗って2駅先の餘部駅へ向かいます。

ちなみに香美町の香住地区は蟹が採れる場所として全国的にも有名な町。冬になると多くの観光客がここを訪ねて旬の蟹を堪能します。残念ながらいまはシーズンオフ。旅館で小さな蟹グラタンを食べて我慢するとしました。

香住駅の次の駅、鎧駅からは真っ青の日本海も眺めることができます。この辺りは比較的高い場所を走り車窓から美しい海を眺めることができるビュースポットになります。

車窓を愉しむうち、列車は餘部(あまるべ)駅に到着しました。ここが今回の目的地、天空の駅です。

駅を降りると「空の駅」の案内板と線路が現れます。この線路はもう使われていません。平成20年に余部橋梁が架け替えられた際に線路が新しく付け替えられ、この部分は使われなくなりましたが、新たに「空の駅」として供用を開始し、新たなビュースポットとして観光客の目を楽しませています。

「空の駅」から望む余部集落とその向こうに見える日本海。さすがに「空の駅」として遺すだけある施設。そこから眺める景色は絶景です。

ところで、先ほどから「あまるべ」の表記を「余部」と「餘部」と2つで表記していますが、地域の名前としては「余部」が正しく、駅名だけ「餘部」となっています。同じ兵庫県内に余部(よべ)駅があることからこれと区別するために「餘部」という表記にしたのであり、あくまでも地域の名としては「余部」。当時の国鉄の強引さが伺えます。

「空の駅」からはエレベーターで下に降りることができます。

エレベーターはシースルー。降りる間にも集落と日本海の絶景を楽しむことができます。

階下に降り、橋を見上げます。現在のコンクリート製の橋の脇に赤茶色の鉄橋も見ることができます。こちらが明治45年から平成22年まで約100年間使われてきた鉄橋の跡です。

旧餘部鉄橋の上にあるのが「空の駅」。かつては繋がっていた線路が途中で途切れているのがわかります。平成22年にコンクリート製の橋にバトンタッチしました。

いくつか旧鉄橋の跡も遺されています。紅い鉄橋はその美しさや41mという高さから多くの鉄道ファンを魅了し、余部橋梁は全国でも有数の鉄道観光スポットとなってきました。一方で住民は騒音に悩まされ、風の強さから運行が不安定となるという副産物を生みだし、昭和61年にはお座敷列車が風にあおられて転落し死亡者がでるという痛ましい事故も発生してしまいました。高所を橋梁が走ることがどれだけ危険なことなのか改めて思い知らされる事故となっています。

橋は既に新しい強固なものに生まれ変わっていますが、高所を民家をまたぐように走るそのダイナミックさは今も昔も変わらなくあります。今も風速によっては運転見合わせとなる場所ですが、何より安全第一。悲しい事故を再発させないように細心の注意を払っていただきたいな思っています。

餘部駅を少し離れた場所から撮影しました。ここに列車が来れば絶景なんですが、次に来る列車は私が乗る列車。写真は撮れないので次の機会に譲ることにします。

鉄橋からコンクリートへ。一世紀の時代を超えてバトンタッチされましたが、その間列車の本数は減り、山陰本線は大いなるローカル線呼ばれています。

この絶景の橋が、いつまでも絶えることなく人々の移動の要であり続けることを願ってやみません。


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