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354 けっぱれ津軽のローカル線・弘南鉄道

12月9日。雪がないどころか記録的な温かさとなった北東北を旅しました。
今回の旅行では今まで乗ったことがなかったローカル私鉄に乗ることも旅の目的にしていて、前日には秋田県の秋田内陸縦貫鉄道に乗車しました。

今回は北東北ローカル私鉄乗車記の第二弾。弘南鉄道乗車記です。

弘南鉄道は大鰐線と弘南線の2線があります。双方とも弘前市から郊外に向かう路線ですが両線はもともと別の会社だったという経緯から互いに交わる箇所はなく完全に独立しています。黒石線は国鉄が廃止された際に譲渡されましたがその後廃止されています。

wikipediaより。ButuCC - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=49504833による。

大鰐線

旅の始まりは大鰐駅から。JR大鰐温泉駅に隣接する駅です。ワニのオブジェの横に足湯もある津軽を代表する温泉地のひとつです。

大浴場

実は昨夜は駅から15分ほどのところにある大鰐温泉の宿「不二や」さんに宿泊していました。夜遅くの到着で素泊まりとなりましたが露天風呂にも入ることができ大満足の宿泊をさせていただきました。

そんな大鰐温泉から弘前市内方面に向かう列車が到着しました。かつて東急電鉄を走っていた7000系電車です。

実は弘南鉄道は8月にレールの摩耗が原因の脱線事故が発生し、9月にも同様の摩耗が見つかったことから全面運休となり、バス代行運転が続いていました。全線が復旧したのは私が北東北入りした当日の12月8日。ギリギリセーフで鉄道に乗ることができました。このような理由での長期運休は聞いたことがありません。ローカル線のインフラ維持の厳しさを思い知らされました。

先ほどの路線図にもありましたが、大鰐線の愛称は「りんご畑鉄道」。沿線にはリンゴ畑が続いています。リンゴの実る季節には赤く色づいたリンゴの実がさぞ美しいことでしょう。

すれちがう7000系はかわいいりんごの絵で飾られています。

弘前市石川地区の中心駅石川駅。鄙びた駅ですが公衆電話に待合室もしっかりあって地域の玄関口としての役割を果たす姿が窺えます。

36分電車に揺られて終点の中央弘前駅に到着しました。この地方名物のこけし灯篭が出迎えます。

ローカル感満載の中央弘前駅。大鰐駅からは440円かかります。ちなみにJR大鰐温泉駅から弘前駅までは13分で240円。これでは弘南鉄道は勝負にならないのではと思うのですがそんなこともなく、中央弘前駅の方が町の中心部に近いうえ沿線に通う学校に向かう生徒を細かく拾います。決して楽な経営環境ではないですが需要はあるようです。

弘南線

近代的な建物に生まれ変わった弘前駅。

弘前城などの観光名所も中央弘前駅の近くにあり、ぐるっと一回りしたのですがその観光レポートはまた次の機会にして、弘前駅に向かいます。JRと同居するこの駅からはもうひとつの路線、弘南線が黒石駅まで延びています。

こちらも東急7000系のおさがり。1962年ごろ製造のものを60年経った今でも使用し続けています。

多くの場合、つり革の広告は地元のものに変えられることが多いのですがここでは東急時代のものをそのまま使っています。東横のれん街なんてもう渋谷にも存在しないのですが、青森で今も生き続けています。

さて、黒石に向かう途中ある小駅で下車しました。

ここは田舎館(いなかだて)駅。田舎館村の中心駅です。日本全国で「いなか」を冠している自治体は日本でもここだけです。
この田舎館駅、一見鄙びた地方の駅のように見えますが、中はすごいんです。

壁から天井から一面に描かれた現代アート。沿線の平川市に住むアーチストGOMAさんが描いた作品です。下書きなしで油性ペンで9日かけて一気に描いたそうです。天井に絵を描くってかなりの肉体労働…頭が下がります。

田舎館村といえば「田んぼアート」を思い浮かべる人も多いでしょう。もともと田舎とは「田んぼのある場所」を意味しますから、田んぼを観光資源にしようというのもうなずけます。

というわけで隣の「田んぼアート」駅まで来ましたが、今は12月。何もありません。この季節は駅も休止中で虚しく電車が通過していきました。シーズンには奥の塔から田んぼアートの絶景を見ることができます。

日本全国に田んぼアートは数あれど、田舎館の田んぼアートはその規模やディテールの細かさが違います。私も一度この目で見たいものです。

弘南電鉄HPより。柏農高校前駅と岩木山。

弘南電鉄沿線は田んぼの季節にはここでしか見られない水鏡の絶景なども見ることができます。この写真の時期と田んぼアートの時期はシーズンが異なるので何度も足を運ばないといけなさそうですが、リピートして訪れるだけの価値はあると思います。

弘南鉄道と津軽鉄道のタイアップポスター。
ちょっと何言ってるのかよくわからない…。

最果ての私鉄、弘南鉄道。その経営環境は厳しさを増すばかりです。乗って残すには地元の人の力が一番必要ですが、観光客も一役買うことができます。大鰐温泉のほか弘南線の途中駅平賀にも温泉があるなど観光資源も豊かですし自然の力を借りた絶景もあります。ぜひ観光でこの地を訪れ、弘南鉄道に乗ってその魅力を感じてもらいたいと思います。









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