「STRAY SHEEP」といえば、米津玄師と夏目漱石。二人の共通点とは?

 米津玄師さんのニューアルバムの題名が発表されました。

 その題名は「STRAY SHEEP」。

 ストレイシープ、迷える仔羊というと、聖書のマタイ伝ー一匹のいなくなった羊を探すために、残りの九十九匹の羊を野原に残して探しに行くーを思い出される方も多いかと思います。

 私は、夏目漱石の「三四郎」を思い出すので、この発表があった時は驚きました。

 なぜかというと、私は米津さんの考察をよくしているのですが(マガジン「米津玄師は私の聖書」)、つい最近、「米津さんは夏目漱石みたいじゃん。」と思ったことがあったからです。 

 米津さんの作品っていろんな人が考察していますが、いろんな角度からの考察に耐え得るんですよね。

 自分で考察していて、ちょっと鳥肌がたったのが『TEENAGE RIOT』。詳しくは「直ちに『感電』したい件 その1」に書きましたが、思春期をテーマにしたこの曲。思春期は心理学者の河合隼男さんによると「子どもの自分が死に、大人の自分が生まれる時」だそうです。

 『TEENAGE RIOT』は「潮溜まりで野垂れ死ぬんだ」(死)で始まり、「歌えるさ カスみたいな だけど確かなバースデイソング」(誕生)で終わるのです。

 思春期=子どもの自分の死ということを知っていたのか、感覚的に掴んだのか、あるいは両方なのかは分かりませんが、米津さんの作品は心理学的にも考察可能なんですよね。

 それで、夏目漱石ですが、内容とか精神性に米津さんとの共通点があるということが言いたいのではありません。

 私が学生の頃、それまで作家の生い立ちを研究するのが主だった文学研究が様々な手法で文学評論が行われるようになりまた。女性をテーマにした「フェミニズム批評」、フロイトやユングの分析を用いた「精神分析批評」、変わったところでは、作品中の住居に着目したしたものもありました。

 その様々な方法の評論に絶え得る作家が夏目漱石だったのです。

 米津玄師も夏目漱石も、様々な方法の評論に絶え得るというのは、多層的、重層的に作品を作っているという共通点があると思います。

 ちなみに作品の内容で米津さんと共通点があるなぁと思ったのは、三島由紀夫です。それについては、また、日を改めて。

  

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