美醜「うるわしみにくしあなたのともだち」

 「美醜」という呪いから、なかなか逃れることができない。50歳近くなっても。

 自分の容姿の悪さを嘆きながら生きてきた。整形すればと言われる方もいるかもしれませんが、顔が大きいのは直せないし、ちょっと直したくらいで美人になれるようなレベルでもない。

 容姿にコンプレックスのない女性は少ないと思う。

 男性もあるかもしれないけれど、まだ日本は女性の方が地位が断然低い。このため、女性は容姿の美醜が恋愛以外にも響いてしまうのだ。

 現に私の職場は、容姿が必要のない職種の筈だけれど、「女性は見た目で採用する」とはっきり言われている。採用する立場の人たちは男性だし、女性で出世する人は、そういう考え方の男性に気に入られる女性だからだ。

 綺麗だったら、受け入れてもらえるのに。

 綺麗だったら、簡単に愛してもらえるのに。

 綺麗だったら、得できるのに。

 綺麗だったら、馬鹿にされずに済むのに。

 その気持ちが楽になった本を最近読んだ。

 それは、澤村伊智著『うるわしみにくしあなたのともだち』。

 この小説は人を醜くまたは美しくするお呪いを登場させることによって、作中の女性たちの自分の容姿に対する、親からや自分自身でかけてしまった呪いが描かれている。

 当たり前のことだけど、人の美醜は、自分が自分を美しいと思うか、醜いと思うかは自分の気持次第。

 そして、自分が人の事を美しさだけで判断しているかというとそうでもない。 

 そのことに気づいて、すーと呪いが融け出した。読んだ直後は。

 でも、翌日働きに行ったら、周りの人の目にさらされたら、また、呪われてしまったけれど。でも、読む前よりは呪いが薄くなった。

 そんな小説を書いた作者が男性ということにも、救われた気持ちになった。

 この澤村伊智という男性小説家が描く女性の新しさについては、またいつか谷崎純一郎、三島由紀夫、渡辺淳一とからめて書きたいと思います。

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