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カヤックのトレーニングは片側or両側?

こんにちは。
今回はこちらの論文を紹介します。

Ualí I, Herrero AJ, Garatachea N, Marín PJ, Alvear-Ordenes I, García-López D. Maximal strength on different resistance training rowing exercises predicts start phase performance in elite kayakers. J Strength Cond Res. 2012 Apr;26(4):941-6.

エリートカヤック選手におけるロウイングエクササイズの違いを用いたスタートパフォーマンスの予測

研究内容の前に
みなさんはカヌーの補強や測定でロウイング(引く、水平プル)系の種目をやるなら何を選択しますか?

ダウンロード (4)
ワンハンドロウ(ワンアームロウ)
スクリーンショット 2022-03-07 21.03.49
ベンチプル(シールロウ)

ロウイング系とはこういう種目です。
ベンチプルは特別なベンチがないとできないので選択できる環境が限られます。
これらの種目の大きな差は片手ずつ行うか両手で同時に行うかということです。
どっちの方がよりカヌースプリントに関係しているのでしょう?
今回はそんなこと検証したスペインの研究を紹介します。

☆研究の目的
ベンチプルとワンハンドケーブルロウ(以下ケーブルロウ)の最大筋力はスプリントカヤックの短いスプリントパフォーマンスに関係があるのか、またどちらの方が強い相関があるか。
また仮説では触れていませんが1RMと最大随意等尺性収縮(関節角度が一定の状態で力をかけ続けること、背筋力測定がその一例です、以下MVIC:Maximal Voluntary Isometric Contract)との比較もしています。

☆方法
被験者
10人のエリートジュニアカヤック選手(男女5名ずつ)
実験は一般的準備期(いわゆるオフシーズン)の初め、12月に行われました。
実験に入る前の4週間は移行期(試合期の後)で乗艇やトレーニングを行っていませんでした。

手順
データ収集は5週間にわたって行い各週に1つの測定を行いました。
最初の4セッションはベンチプル1RM(RM:Repetition Muximum、最大反復回数、この場合は一回挙上できる最大の重さ)、MVIC、ケーブルロウの1RM 、MVICの測定を行いました(順序の影響を取り除くため順序は被験者ごとに変えました)。
ケーブルロウは同じ日に左右を別々に測定しました。
5セッション目(週目)に水上のスプリントテストを行いました。

1RM測定
ベンチプル:うつ伏せで高いベンチに寝て両手でバーベルを引く運動
ケーブルロウ:座った状態でハンドルを片手ずつ引く運動
それぞれの1RM測定一週空けを行いました。

MVIC測定
手順は1RM測定とほぼ同じ。
各測定は3回、各5秒の試行を行い最大の力が出たものを分析に使いました。
腕は実際の水上データを基準に肘関節110°で固定しました(キャッチ時点で大体肘関節130°伸展、フィニッシュ時点で90°なのでその真ん中 )。

カヤックスプリントテスト
各選手が通常使っている艇とパドルを用いて12mのスプリント(静止した状態からの最大努力)を5回行いました。
5回のうち最も速かった1試行の2m、5m、10m時点でのタイム、8ストロークでの距離、最大速度、左右それぞれのブレードでの加速度をそれぞれ算出し分析に用いました。

☆結果
・ケーブルロウで左右異なる影響はみられなかった(右腕の方が微妙に加速度が大きい、有意差なし)。
・ケーブルロウ、ベンチプルのどちらもピーク速度と強い負の相関が見られました(最大筋力•MVICが高いほどタイムや速度が少ない=速い)。
・ケーブルロウとベンチプルのどちらも1RMの方がMVICよりタイムや速度に対して高い相関関係がみられました。
・ケーブルロウはベンチプルと比較してタイムや速度に対して低い相関関係しかなかった。

☆結論
ケーブルロウとベンチプルのどちらも短いカヤックスプリントパフォーマンスの予測因子となるだろう。
ベンチプルのほうがケーブルロウよりもより強い相関関係がみられた。
等尺性(筋肉の長さが変わらない)の筋力より動的な筋力(1RMなど)の方がよりカヌーのパフォーマンスに対して強い相関があった。

○感想
カヤックは片方ずつ漕ぐのでなので何となく片方ずつのほうが直接パフォーマンスに繋がりそうですが、実際は両側いっしょに行うベンチプルの方がより強い関連がある というのがこの研究の結果でした(因果関係ではないので注意、❌ベンチプルを強くすればスタートが速くなる)。
まあ普通は両側性(ベンチプル、ベントオーバーローなど)、と片側性(ケーブルロウ、ワンハンドロウなど)を両方行うんじゃないですかね。
ただ時間的にどっちかしか行えない、どちらかを測定に採用したいとなれば両側性のベンチプルを選ぶ方がベターというのがこの研究を踏まえた結論じゃないかなと思います。
後はスタートの局面しか見ていないので速度が安定してからだとまた違う結果になる可能性もありますね。
またBilateral Deficit(両側性欠損)という現象(両側同時の筋力<左右別々に行ったのを足した筋力)もあるので片方ずつ行う運動も重要だとは思いますね。
この辺りに触れると議論が尽きないので今回はこの辺で。

今回は具体的な運動選択に関わる比較的役立てやすい研究を紹介できたのではないでしょうか。
基本自分のために読んでいるわけですが、何か反応を頂けるとそれはそれは喜ぶのでぜひコメントやら何やらを頂けると幸いです。
今回もご精読ありがとうございました。

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