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屋号を抱えた生活

「margoという写真撮りを始めました!」

と発表してはや3ヶ月。

正直今年の最初とかは秋冬頃に開業できたらばんばんざいだと思っていたので、ずっと2023年は季節感覚がぐちゃぐちゃです。今が初夏のような気もしているし、もう晩秋のような気もしている。

前の仕事を辞めて、精神的に元気が出てきた今年の春頃に「今始めないと一生開業しない気がする」と危機感を持つようになって「個人事業主 始め方」とかでググっていた時、一番よくわからなかった概念が「屋号」だった。

屋号をつけるのは簡単で、お金もかからない。個人事業主を始める時に税務署に提出する「開業届」の所定の欄に、好きな名前を書いて提出するだけ。
開業届はどのみち出すものなので、拍子抜けするくらい簡単だ。

ただシンプルがゆえに、いざ考えてみるとよく分からなくなるのも屋号だと思う。

フリーで芸能/配信活動をしている人は芸名が屋号、お店を開く人にとっては店名が屋号になるのだが、こんな曖昧な概念、他にあまりないんじゃないかと思う。

それもあって、私の開業を知った人の中には私が鹿の子からmargoに改名したと思っているケースがあることに最近気づいた。そりゃびっくりしますよね。
私にとって今のところmargoは個人事務所のようなイメージに近く、お店でもブランドでもないので、この名前を「屋号」としか呼べないのも誤解のもとになっている。

普通、お店を始めよう!サービスを始めよう!という入口の場合、自然とブランドネームを決める流れになるのは当然なのだが、私の場合は「よっしゃ、自分で仕事を作っていくぞ」という意思表明としての開業だったので、最初はまさに「個人で始める仕事に屋号を付ける意味なくない?」と思った。いいじゃん、鹿野結子のままで。

ただ起業準備の中でお客さんサイドを想像すると、なんとなく懸念点が見えてくる。

まず、個人名でカメラマンをやると ”写真家” 感が強くてお客さんはハードルを感じる。よほどの理由があって「よし"鹿野に"撮ってもらおう」という覚悟がなければ、依頼には繋がらない。
さらに私のことを知らない人は「誰やねん」→ 「〜終了〜」 になる。

例えばそこで「スタジオアリス」とか「ラブグラフ」のようなサービス名にあたる呼び名があれば、声を掛けやすいのかもしれないと思った。

加えて、私は同居家族が思いっきり名字を使った屋号で商売をしているので、それを知っている人に初めましてと名乗ると「あ~!お父さんとお母さんのお店の〜」というコースに乗ってしまう。
なので本名より先に口にできる屋号があることは、その辺りのこそばゆさ解消にもかなり有効だ。

よしよし!じゃあ屋号つけよう!と決めたはいいものの、屋号決めはしっかりと難航した。
私のポリシーが反映されていて、名乗っても恥ずかしくなくて、出来るだけ短く覚えやすい、苗字と離れた響きの名前。
かつ今後、写真以外の仕事もこの名前でできるように、写真やカメラを連想させるものはつけたくないと思っていた。

どんなにいいアイデアが浮かばずとも、1つの〆切として今年の吉日&日付が覚えやすい5月10日に開業届を出すことは決めていたので、半ば苦し紛れに出したキーワードが「まるごと」。

優れた存在でなくてもいいし、無理にありのままで在ろうとしなくてもいい。その日その日の背中を押す仕事がしたい、というスタンスを託す言葉としての「まるごと」だ。
最後の「と」を取ったのは響きが良かったのもあるし、この仕事に何かを掛け合わせたときに「margoと○○」という表記になって「まるごと○○」が完成する感じが、いろんな人と混じって交わって仕事をしていきたい気持ちに合っていると思った。

あと、元々決めていた〆切日が「0510(まるごと)」の日であることに開業届を書きながら気付いた時は本当に驚いたし、「もう後戻りするな」と誰かに言われたような気すらした。
半ばその勢いで信頼している友人にここまで書いた屋号の由来を送り付け、ロゴを作って欲しいとお願いして「めっちゃいい」と返信が返ってきたときは安堵で全身の力が抜けたのを覚えている。その後ビール屋さんでロゴを一緒に考えてもらったのも、単独で突っ走っていたその時の自分にはすごく有難い時間だった。

こんな流れでドタバタと出港した小さな船だが、有難いことにそよ風を受けてマイペースに沖まで出ることができた。ここらでもう一度帆を張り直すタイミングが来たと思っているので、そのお知らせが明日とかに出来たらいいな~と準備しながら、息抜きにこれを書いている。

起業の動機は必ずしも大きな夢じゃなくていいことがやってみて改めて分かったけど、決して全員が起業すればいいのにとは思わない。ただ本業と広報と経理を全部ひとりで出来ることが楽しくなってしまう厄介な人は、ちょっとやってみても面白いかもしれないと思う。その時は、ぜひ屋号の由来を聞かせてください。

スキすると鹿の子の無責任占いがついてきます