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ミーシャとガランのベッド・イン【ネコミミ村まつり】あなたの物語に曲つけます【応募】

ミーシャとガランのベッド・イン


ニャゴリウス暦3024年カヤネズミの月、長くいがみあっていたネコミミ族とヘビシッポ族の千年戦争はついに終わりを迎えた。
なぜなら、ネコミミ族の王女ミーシャとヘビシッポ族の王子ガランが恋に落ちたからである。
長年の戦争に飽き疲弊していた両族は、若い二人の我儘にかこつけて矛を収めることにしたのだ。

そうと決まれば両族力を合わせ、二人の婚姻を両族の平和と繁栄の象徴として盛り上げようと、様々な案が練られた。

結婚式や披露宴をどのような様式で行うか、招待客は、より広く世界に両族の結束をアピールするためには、など検討を重ねた結果、あるイベントが大々的に行われることになった。

それが公開ベッド・インである。

それはネコミミ族のとある歴史学者が発見した、地球暦1969年に実際に行われたという「ジョンとヨーコのベッド・イン」にヒントを得て提案されたものだった。


ネコミミ王の城、王女ミーシャは今、湯浴みで濡れた身体を乳母兼教育係のステラに拭いてもらっていた。
「なんか、お父様やみんなが色々勝手に決めちゃって、めっちゃ不安なんだけど」
眉をしかめて口を尖らせたミーシャに、ステラはいつもの表情のない顔ながら、優しさ含んだ声音で王女に静かに語りかけた。
「ベッド・インといっても、それはパフォーマンスで、実際は記者会見のようなものだそうですよ。ミーシャ様とガラン様お二人でベッドにお入りになって、全世界に向けて愛と平和を訴えかけるという大変に美しく素晴らしいイベントでございます。」
「でもね、ステラにはなんでも話すけど、私たちまだキスもしてないの」
もふもふタオルでミーシャを拭いてたステラの手がヒタと止まった。
「………左様でございますか」
そして、つとミーシャの正面に向き直り、頭にもふっとタオルを被せて言った。
「よろしいですか、ミーシャ様。ベッド・イン イベントは、列席者のみならず、全世界が生配信で注目しております。決して粗相があってはなりません。お二人には生まれたままの姿でベッドに入っていただきますが、申し上げるまでもなくパフォーマンスであり、そこで何かが始まってはいけません」
「な、何かって……?」
「いいですか、ミーシャ様。ベッドの中でガラン様のシッポを、決して掴んではいけませんよ」
「ええっ、掴むとどうなるの?」
ステラはタオルの上からフワッとミーシャのネコミミに触れた。
「それはネコミミをかじるようなもの」
ミーシャは全身がカッと熱くなるのを感じた。



ヘビシッポ王の城、王子ガランは自室のベッドに身を投げ出して頭を抱えていた。
「無理無理無理無理、全世界配信とか無理、なにそのベッド・イン イベントって」
傍らでは執事兼教育係のダクがハーブティーを入れながら語りかけた。
「ガラン様が人前に出ることが苦手でいらっしゃることについては、お父上もずっと心配なさっておいででした。いずれは王になられるのですから、いつまでもそのように引っ込み思案では困りますよ」
「だからっていきなりのハードルが高すぎる」
「さあ、落ち着かれて、いつものハーブティーですよ」
ガランはうつ伏せの上から枕を被り「いらんっ」と言い捨てた。


ついにベッド・イン イベントの日がやってきた。
国境の小高い草原の台地に、この日のために御披露目ステージが建設された。ステージの上には特設天蓋つき特大ベッドが置かれ、ネコミミ族、ヘビシッポ族の王族、貴族、大臣、列国招待客が取り囲み、さらにその外側には両族の民衆が稀代の一大イベントを一目見ようと押し寄せていた。

イベントでは、二人がベッドの中から全世界に向けて、愛と平和のメッセージを発信することになっている。

「やば……」
若い二人は既にベッドの中に座り、肩までシーツを被ってすっかり硬直し、恐れ慄いていた。

ステージの緞帳があがり、いよいよ全世界配信が始まった。

その時、一匹のミツバチがふいに飛んできてミーシャのネコミミを掠めていった。

「あっ」
ミーシャは動揺して傍にあったガランのシッポを掴んでしまった。
「あっ」
ガランはビクッとしてその目が見開かれ、銀色の瞳が金色に変化した。
「あっ」
それを見たヘビシッポ族の列席者たちが全員席を蹴って立った。
「あ…」
ガランはいきなりミーシャを激しく抱き寄せ、熱烈なキスをした。
「……」
ミーシャは脱力してクニャッと折れ曲がり、目が渦巻きになって戦闘不能になった。

ガランは片腕にミーシャをぶら下げたまま、全世界配信に向かってカメラ目線でウィンクを飛ばし、こう言った。

「戦争なんかしてないで、愛し合えばいいんじゃない?」





大橋ちよさんの「ネコミミ村まつりサブ会場:あなたの物語に曲つけます」に応募します。
よろしくお願いします。

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