【曾根崎心中 】BUNRAKU 1st SESSIONを観て
有楽町よみうりホールで開催中の文楽入門公演 「BUNRAKU 1st SESSION」を観てきました。
演目は「曾根崎心中」天神森の段。入門ということで解説つき。新しい試みとして背景が大道具ではなく、ジブリ映画などの背景画を手がける男鹿和雄氏の絵によるアニメーションになっています。
曾根崎心中とは
実際に起きた心中事件の1ヵ月後にはもう劇場にかかっています。当時のニュース、ワイドショーといった位置付けになり、人々の関心を呼びました。
今回上演の「天神森の段」は物語のクライマックスである最終場面、二人が心中場所に向かい徳兵衛がお初を刺して自害するまでのシーンです。
当時の死生観は「死んで◯◯」が最上級の身の処し方。
死んでお詫び
死んで諌める
死んで義理を果たす
死んで潔白を示す
死んで恋を貫く
徳兵衛はお初という好きな女がいながら叔父から勝手に縁談を進められ断ったら怒られ追い出されその上に友人に騙されて金を取られて辱められ、もう死のう、となるわけで、心中する覚悟はある?と先に問うのはお初の方です。
アニメーションの背景
今回の公演では、文楽の海外上演を目指す新しい試みとして、背景を大道具ではなくアニメーション映像にしています。
「となりのトトロ」「もののけ姫」などの背景を手がけた男鹿和雄氏の手描きの背景画を、アニメーション化し映像制作したものです。
最初、森の風景が美しすぎて「ピクニックに行くんじゃないんだから」と思いましたが、総じてこの映像の演出は素晴らしかったと思います。
背景が動いたら人形の動きの邪魔になるのでは?との予想も杞憂で、アニメーションといってもそんなに動きがあるわけではなく、要所要所の演出なので、舞台に深みが加わって良かったと思いました。
文楽の世界観を損なわず逆に増すことができたのは、原画のクオリティの高さの成せる技だと思います。
遊女お初
これは「心中物」という一つのジャンルでありお約束であることは観客も承知の上で、何らかの感情を揺さぶられる為に劇場へ足を運ぶわけです。
そうではあるのですが、私は約30年振りに文楽を観て、自分の内面も世の中の依って立つ考え方も変化した令和の今演じられる劇としては猛烈に違和感を感じました。
そもそも天満屋のお初は遊女なのです。
遊女とは前借金に縛られた奴隷で、もとより自由な恋愛などできないのです。たまたま客の徳兵衛と相思相愛になったからといって、その徳兵衛のトラブルで一緒に死ぬというのは、完全巻き込まれです。
この時、徳兵衛25歳お初19歳。
責任ある大人でもない19歳の遊女お初が不運な優男に巻き込まれて殺された、としか思えません。
「覚悟の顔の美しさ」とか美化するのはどうなの?と思います。
折りしも現在東京芸術大学大学美術館では「大吉原展」が始まりました。
まるでアミューズメントパークであるかのような広告のあり方を巡って開幕前から炎上した展覧会です。
ここで遊郭の是非を問うつもりはありません。誰が加害者であるのか、という視点を持つことについて参考になるサイトがありました。 ↓
公式サイト ↓
(炎上を受けてタイトルから「江戸アメイヂング」の文字が消されました)
ラストシーン、殺されたお初さん。
泣きました。
隣の女性も泣いてました。
隣の女性が何で泣いてたのかはわかりませんが、私は感動したからでもなく、悲しいからでもなく、悔しくて泣きました。
お初さん
あんた
死んじゃいけないよ
……
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