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自由慄 感想

梨さんの自由慄を読んだ。

梨さんはホラー界の宮部みゆき、あるいは東野圭吾になりうる今注目の人だ。
目の前に不穏な風景を見せるのがうまい。それがたとえ、自由律俳句であっても。(本書の中では自由慄と呼ばれている)

自由慄、その文字がまず引っかかる。戦慄の慄。
怖い自由律俳句かな、と舐めた態度で読み始めたじぶんを引っ叩きたい。

これは一人の少女の、切実な届かない思いだ。
手紙が欲しい、交換日記がしたい、思い合いたいと綴っていたわたしには刺激が強かった。

男子には共有されない紙の折り方、甘い匂いがするペン、DearとFrom、君と私。

世界から永遠に消えてしまった、君に会うためのおまじないとしての自由慄。
クラスメイトには見えるあの子の幽霊は、新たな学校の七不思議にされるかもしれない。

国語便覧、蓋を交換したシーブリーズ、そして君の死が机の上に並ぶ。

青春が一瞬にして赤く染まるのをわたしたちは目撃する。
その赤が酸化して、黒くなっていく様を観察する。

届かない弔いの言葉の数々を恐れ、愛しく思う。

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