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アカデミアの最前線で疫学研究を行う岩上先生が、キャンサースキャンで顧問をする理由──

「人と社会を健康に」というミッションを掲げ、全国各地の自治体とも連携しながら予防医療事業を推進するキャンサースキャン。
人々の健康に向き合うキャンサースキャンでは、アカデミアの最前線で研究を続ける専門家たちの力もお借りしながら、根拠に基づくヘルスケアサービス提供を心がけています。
今回は、日本とイギリスの公衆衛生学・疫学・ヘルスサービスリサーチの第一線の研究者でありながらキャンサースキャンのアドバイザーでもある岩上将夫先生にお話を聞きました。

◆岩上 将夫プロフィール◆
岩上 将夫(いわがみ まさお)

キャンサースキャン顧問、筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野 助教、ロンドン大学(University of London, London School of Hygiene and Tropical Medicine)Honorary Assistant Professor。2008年東京大学医学部卒、2008-9年同医学部附属病院初期研修。2010-11年徳洲会湘南鎌倉総合病院腎免疫血管内科後期研修、2012年東京大学公共健康医学専攻公衆衛生大学院、2013年東京大学医学部附属病院血液浄化療法部特任助教、同年ロンドン大学MSc Epidemiology、2014-18年ロンドン大学PhD Epidemiology and Population Health、2018年より現職。日本公衆衛生学会代議員、日本薬剤疫学会誌編集委員、国際薬剤疫学会誌(Pharmacodpidemiology and Drug Safety) Associate Editor、独立行政法人医薬品医療機器総合機構専門委員、等を兼任。

岩上先生

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岩上先生とキャンサースキャンの関係性を改めて教えていただけますか?

私はもともと内科医ですが、現在は週1回程度の患者診療を続けながら、筑波大学とロンドン大学(疫学のDistance Learning Course)で助教として教育・研究をしています。専門の研究分野としては公衆衛生学、その中でも特に疫学です。

キャンサースキャンの名前自体は前々から知っていましたが、直接の繋がりのきっかけはこの「疫学」でした。実は、私が教えているロンドン大学のコースをキャンサースキャンの社員の方が取られており、そこでお声がけをいただき、アドバイザーという形で関わらせていただくことになりました。

「疫学」という言葉に馴染みがない方も多いと思いますが、疫学とはどのような学問でしょうか。

疫学は、「人間から集めたデータを解析して、人々の健康のために、そこから何をフィードバックできるか」という点を考えるような学問※です。人の健康行動をどう変えられるかというところも疫学の焦点となります。疫学という言葉自体、日本だとまだ認知度が低く「何それ?占い?(易学)」と言われてしまったりすることもありますが(笑)、近年日本でも増えているヘルスケアビジネス等を行っていく際には、避けては通れない学問だといえます。

※疫学の厳密な定義は「明確に規定された人間集団の中で出現する健康関連のいろいろな事象の頻度と分布およびそれらに影響を与える要因を明らかにして、健康関連の諸問題に対する有効な対策樹立に役立てるための科学」(日本疫学会)

健康を考える上でなくてはならない学問なんですね。日本でも学べる場所は多いんでしょうか?

学問としては歴史があり、海外では1800年代から大学・大学院で教育がされていましたが、日本で本格的に疫学が学べる場所はなかなかありません。しっかり学ぶとしたら、日本でも2000年代になってから登場した公衆衛生大学院(東大、京大、筑波大、など)になるかと思います。最近は日本でも、キャンサースキャンの社員の方のように、一度社会に出た後で学び始める(学び直す)という人がいらっしゃいます。

ヘルスケア事業を行う際には切っても切り離せない学問だということですが、具体的にどのような活用をされるイメージなのか教えてください。

公衆衛生学の中でも「ヘルスサービスリサーチ」という分野が重要です。国や自治体や行政が一般の人々に提供するヘルスサービスというものを、疫学・統計の手法を用いてしっかり分析して、しっかりエビデンスを作っていきましょうという、これがヘルスサービスリサーチです。

ヘルスケアというものは、まだ個人・集団レベルで健康状態の未来が読めないところに投資する、という意味合いが強いと思います。そういう場合、現状やそこから予測できる未来をしっかりと調査・分析して、エビデンスに基づいたサービス提供をしていくことが重要です。調査や分析は「なんとなく」できてしまうこともあるかもしれませんが、人の命や健康を扱うのにそれでは無責任ではないかと個人的には感じています。

昨今増え始めたヘルスケアビジネスの中にも「本当にしっかり分析ができているのか?エビデンスに基づいているサービスなのか?」と疑わしく思うものも多いというのが、アカデミアの立場からの正直な思いです。そういったヘルスケアビジネスが玉石混交の状態になってしまっている昨今、キャンサースキャンのようにしっかりと学問を学んだ方がデータを活用し適切なサービス提供を行おうとする、そういった会社を応援したいという思いもあり、アドバイザーを受けたというところもあります。

人々の健康を扱う仕事だからこそ、専門家の先生がいてくださると、事業者側としても大変心強いなと思います。顧問としてはどのように関わってくださっているのでしょうか。

毎週定例会といった形で、ざっくばらんに様々な相談を受けたり、必要なタイミングでヘルスケア事業のチェックやアドバイスをさせていただいています。また、この分野は特に実践と勉強の間を行ったり来たりすることが重要なので、実際のデータを見ながら一緒に議論を行い、その中で生じた疑問について私から講義をさせていただくこともあります。定例会の雰囲気としては、大学のゼミのような形に近いかもしれませんね(笑)。私自身も、キャンサースキャンの社員の皆さんからの相談や質問を受けて、非常に多くの学びを得させていただいています。

岩上先生から見るキャンサースキャンの良いところというのはどのような部分でしょうか。

岩上先生noteサムネ

行っている事業が「人間や健康を対象とする」ということに責任感を持ち、会社としても個人としても常に学びつづけようとする姿勢は素晴らしいなと思います。先述の通り、私がアドバイザーをすることになったのも、私が教えているロンドン大学のコースをキャンサースキャンの方が取られていたことがきっかけでした。会社で働きながら公衆衛生学・疫学を学ぼうと思って実際に行動に移す社員がいらっしゃるのは驚きですし、あるべき姿だと思います。

一方、本業と専門的な学びの場の両立は大変かと思いますので、そういった部分での理解がある会社というのは貴重です。また、アカデミアの視点からは、「学んだことを実際に社会に繋げていくことができる経験」というものは本当に貴重で、そういったことができる会社というのはまだ少ないのではないかと思います。キャンサースキャンは長年の蓄積で700自治体とのコネクションが既にありますし、ヘルスケアビジネスの中では圧倒的な信頼と実績を持つ先駆者的存在です。これまでに蓄積されたデータやノウハウを活用して今後もさまざまな展開ができると予想できますし、社員の皆さんが学んだことやこれまで経験してきたことを活かす場所、社会実装できる場所としてはとても良い環境なんだろうなと思っています。

また、私以外にも日本を代表する公衆衛生学・疫学のエキスパートの先生方が関わっており、そういった一流の専門家と一緒に確かな仕事を進めていけるということは大きな強みではないでしょうか。逆に言えば、いい加減な仕事をすることは許されないということですね(笑)

最後に、今後キャンサースキャンに関わっていく人にはどのようなことを期待されますか?

ヘルスケア分野の、ジェネラリストでありながらスペシャリストである人が増えていってくれたらいいなと思います。前提として医療等の知識や経験があることはもちろん、しっかりと公衆衛生学・疫学のプロの仕事をしていく必要があります。

また、人間や健康という話は年々変化していくものでもありますから、時代や政治や社会の状況によって移り変わるものを捉え、柔軟に変化していかなくてはなりません。たとえば今後の日本では、高齢化に伴い公的資金が不足する中で「どのようなヘルスケア(健診や医療行為)をコスト・エフェクティブなものとして優先するか」といった判断をしていく必要が出てくると思います。そうした重要な局面を念頭に、公衆衛生・疫学・ヘルスサービスリサーチを学び続けていく姿勢を持っておくことで、ご自身のプレイヤーとしての市場価値のようなものも自然に高まるとと思います。

ヘルスケア事業は本物と偽物の見分けがつきづらい側面があり、今は日本でも世界でもヘルスケアビジネスの過渡期で、ある意味カオスな状況になってきています。そうした中だからこそ、しっかりと本物のヘルスケア事業、それを実行できる会社を見極めて、自分自身も信頼できるプレイヤーになっていくことが重要ではないでしょうか。私自身も、アカデミアの立場として本物のヘルスケア事業・会社・プレイヤーを応援し、ふるいにかけていく役割は果たしていきたいなと思っています。

(構成:中西須瑞化)

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