徒然なるままに 参


昨夜は全く眠れなかった.

寝ようと目を瞑っても全然目が冴えていて
体も脳も寝ようとしてくれなかった.

寝付きが普段から悪いわけではないのだけれど
その体と脳の拮抗する感じがとても激しかった.

「寝る前に考えてたことが気になってるのかな」
「寝る前に差した目薬のせいかな」
「1日家にいたから疲れてないかな」
「あ、さっき珈琲飲んだわ」

色んなことを考えてるうちに
換気のため僅かに窓を開けたままだったことに気づいた.

「あ...寒いから閉めなくちゃ.....」



私は昔から涼しくて暗い所が好きだ.

「好きな場所は?」
と聞かれることもないだろうけれど、
もし聞かれるようなことがあれば
私は「涼しくて暗い所が好きです」と答えると思う.

まだ私が齢五、六だった時、
田舎の大きな家に住んでいた.

父親があまり帰ってくる人間ではなかったから
暮らしぶりこそ貧しいものだったけれど、
その当時のその地区にしては新しくて
大層立派な家に住んでいた.

夏の昼下がりになると母親が
「よし、暑いしお昼寝しちゃおう!」
と言って寝室に私と兄弟の分の布団を並べる.

部屋の冷房をつけてカーテンを閉める.

そこにお腹だけ冷えないように毛布をかけて
皆で雑魚寝をする.

カーテンを閉めているから日差しも当たらないし
しばらくするとシーツや毛布が冷房でひんやりしてくる.
それが夏の体温の高い子どもには気持ちよかった.

当時から我が家はたまにしか冷房を入れないから
子ども心にそんな夏の昼下がりが特別に思えて
とても好きだった.


そのためか未だに私は涼しくて暗い所が好きだ.


「...いいや、開けっ放しで.....」

ほんの一瞬、
遠い昔を思い出して
真冬の二月も末のしとしとと雨が降る夜、
下手すれば部屋の気温が一桁になるであろう夜、
窓を少し開けたまま雨の音を聞いて過ごした.



その後どれくらいの間起きていたのだろう.
朝の目覚めはとてもすっきりしていた.

ただ、窓際のカーテン、カーペット諸共大惨事だった.


けれどきっと私はこの先も
眠れる夜も眠れない夜も
嬉しい夜も悲しい夜も
敢えて窓を開けて涼しくして暗くして、
夜を過ごしていくんだろうなと思う.