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アルプス一万尺

夏休みです。小学校最後の夏休みということは、小学生時代を山村留学に来ている私たちにとっては長野で過ごす最後の夏休み。そこで最後のチャレンジにと、同級生のお父さんが北アルプス縦走登山に娘を連れて行ってくれました。車中泊1泊+山で3泊!合計5日間の大冒険。目指すは北アルプスの憧れの山、槍ヶ岳!3000m級の山を何日もかけて登るなんて私も経験がありません。準備から何から初めてのことだらけ。一か月前からお友達とトレーニングに励み、楽しみ7割不安3割を抱えて11歳の冒険が始まりました。私は猫と一緒にお留守番。

いざ北アルプスへ!

娘が撮ってきた写真とお土産話によると、初日は雨のスタート。急登を登って稜線へ。テントを張って翌朝早くに出発。山の天気は変わりやすい。でも素晴らしい景色を堪能できたようです。一方、留守番のこちらは一日雨。雷も鳴って、距離は離れているとはいえ新潟では大雨のニュースに山登り組が心配でたまりません。電波も届かない、想像もできないような場所にいる彼らを祈る気持ちで待つしかない。でもその心配はよそに、山の上ではとても楽しい時間を過ごせたようです。

朝焼けと雲海
日の出を撮るお友達を撮影
目標の槍ヶ岳を望む

彼らが山に入ってから3日目。仕事が休みなのと、早ければ下山するかもしれないというタイミングで、私は下山予定の上高地観光へ。連絡も取れるかどうかも分からないまま朝4時半に出発して8時半から上高地ハイキング。なんと天気はバッチリ!山頂までくっきりと見えて、あの山の頂と同じくらいの高さにいるのかなぁと想像しながら上高地の自然を散策しました。

上高地の名所河童橋から穂高連峰を望む

ちょうどお昼休憩に立ち寄った山小屋付近でダメ元で連絡してみたら、奇跡のタイミングで電話が繋がり、無事槍ヶ岳を登頂したとの吉報を受けることが出来ました。ほっとするやら、うれしいやら。下山のお迎えの打ち合わせも出来て安心して、上高地を後にしました。帰宅途中でなんと花火大会にちょうど鉢合わせて車を降りてしばし鑑賞。まるで彼らの登頂をお祝いしているみたいで大興奮!この日は12時間近く歩いたそう。本当によく頑張ったね。子どもはすぐに大きくなる。軽く親を超えてくる。子育てなんてあっという間。子どもは勝手に育っていってしまうんだ。

槍ヶ岳登頂おめでとう!

山に入ってから5日目、ようやく下山してきた娘とお友達家族に会うと、よく日焼けして一回りも二回りも逞しく見えました。お土産話を聞きながら出発地点に置いてきた車の場所までドライブして、温泉は入ってラーメン食べて、大冒険のストーリーを聞きました。写真を見せてもらって、行った人しか味わえないような景色を想像して、いつかは私もアルプスの頂へ行ってみたいという新たな夢が湧きました。子どものお陰でこうして世界が広がっていくのです。

憧れの槍ヶ岳!
真夏の雪遊び
下山のご褒美はソフトクリーム

山から降りてほっとした娘はとにかく食べる食べる!山の上ではあまり食欲が湧かなかったようで、ほぼ行動食(登山中にエネルギー補給するナッツやドライフルーツ、クッキーなどの軽食)で過ごしていたとか。お友達と一緒とはいえ、家族と離れた環境で緊張していたところもあるのでしょう。ほっとして緊張がゆるんで、外界では好きなものを食べ放題。とくに疲労を引きずっている様子もなく元気いっぱい。ぽつぽつと山で感じたことを話してくれました。

モルゲンロート(朝焼けに染まる山々)

極限の世界で自分のカラダ一つを信頼して歩く旅は、きっと「生きる」感覚を強くしてくれたに違いありません。そして槍ヶ岳を登頂するときには、一歩間違えば、滑落して命を落とす場所という緊張感から、生の反対の「死」を意識することが11歳にしてあったようです。山から戻ってきた娘が「ママ産んでくれてありがとう、って思ったよ」と。そんな言葉が聞けるとは思ってもみませんでした。実は彼らが山に入っている間に、槍ヶ岳で60代の男性が遭難死するというニュースが目に入り、ああ命を落とすかもしれない場所に娘たちは今いるんだと、改めて命がけの冒険に出かけたのだと気が引き締まりました。都会にいたって交通事故や自然災害など、命の危険にさらされる場面はあるのですが、日常はそんなこと意識していません。極限の場所に身を置くことで「生と死」を意識せざるを得なくなる。そんな場所に連れて行ってもらえたこと、本当に引率して下さったお友達のお父さんには感謝と尊敬の念でいっぱいです。4日間の行程で燕岳~大天井岳~西岳~槍ヶ岳と4つの峰を制覇してきました。

娘は外界(笑)に帰ってきて、「山の上にいたことがもう一年も前のように感じるよ」と言っていて、きっと山の上では4日間だったけど、一年分くらいのことを感じて体験してきたんだろうと思う。それぐらい密度の濃い大冒険だったのだろう。この経験がこれからの娘の人生の支えになるんだろうと思います。元気に帰っては来ましたが、「私はインドア派かな」なんてつぶやいたりして、体力的には相当キツかったんだろうなと想像します。よくやった!娘よ!よく帰ってきた!本当に元気に無事で帰ってきたことが何よりです。

タイトルのアルプス1万尺とは子どもたちの手遊び歌のこと。この歌の舞台は北アルプス。一万尺とはおよそ3000m。歌詞の中の「こやりの上でアルペン踊りをさぁおどりましょ♪」の「こやり」とは槍ヶ岳の小槍という岩のこと。さんざ遊んだアルプス一万尺の舞台をこの目で見て感じることが出来た夏旅だったことでしょう。実際は槍を登っているときには、そんなこと考える余裕はなかったそうです。

さて、夏休みも残りあと一週間余り。本当にあっという間です。残りの時間も目いっぱい楽しみたいと思います。


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