カナリア

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【短編小説】皆様の放送局が競争を始めた話

公共放送ってずっと競争がないまま、高い視聴料金を取り続けるんだって思ってた。それが変わるなんてほんとに思ってもみなかった。それも、全体の100分の1の予算しかない公共放送局が新たにできることで… 知ってる限りを話してみるね。 Y国にも、他の国のように公共放送がある。それぞれの国で公共放送の在り方は違うけれど、一昔前まで、国民の多くが愛していた放送局だったんだ。それが、放送推進協会、通称、HSK。 HSKは、Y国の放送文化の先駆けを担い、源平歌合戦のような年末の風物詩を生

    • 【短編小説】シュレディンガーの猫は見ていた

      瑛子と僕が結婚する前のある土曜の晩、僕らは瑛子の家で、クロスケ(つぶらな瞳のとってもかわいい黒猫)と一緒に過ごしていた。食事のあと、まったくのよもやま話をお酒を飲みながらするのがいつものことだった。 何の流れかはもう覚えていないけれど、歴史上で嫌いな人物の話になったんだ。瑛子はちょっと考えていたけれど、嫌悪感を湛えて吐き出したのは「シュレディンガーが大嫌い!あの女たらしのくず」 「シュレディンガー?えーと物理学者だっけ?」 「そう」 「女たらしなの?」 「よく知らないけど、浮

      • 【短編小説】心は宇宙人の話

        僕は、G高校、2年C組にいる。 友達は僕をサダオミと呼んでいる。 フェンシング部に所属している。 友達は多い、そして、女子生徒から人気があるらしい。 僕は17歳の男子高校生、そして、心は宇宙人。 自分が宇宙人だと気が付いたのは、結構遅かった。まえから、すこし不思議な感じはしていたし、とても頭を使って周りの人と対応してきたのだけれど、7歳になるまで分かっていなかった。 7歳の時、友達とスーパーヒーローものを見ていた時、キキ星人がヒーローに倒されてしまった。それも、なんと、二

        • 【短編小説】白票革命の話

          防衛軍将校によるクーデタの成功が突然JHKのニュースから流れてきた。 先進9か国の一員であるJ国でクーデターが起こるなんて、首謀者以外の国民は全く想定していなかった。 ちなみに、首謀者の一等防佐・斉山貞香は「投票に興味を示さない国民、そして、その国民とともに静かに沈んでいく国だからこそ、成功した。大きな反発もなく、警察組織を把握することさえまったくもってたやすかった」とクーデターの容易さを語っている。 (また、後々明らかになるように、超大国αのタカ派政権による承認を得たクーデ

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