【短編小説】シュレディンガーの猫は見ていた
瑛子と僕が結婚する前のある土曜の晩、僕らは瑛子の家で、クロスケ(つぶらな瞳のとってもかわいい黒猫)と一緒に過ごしていた。食事のあと、まったくのよもやま話をお酒を飲みながらするのがいつものことだった。
何の流れかはもう覚えていないけれど、歴史上で嫌いな人物の話になったんだ。瑛子はちょっと考えていたけれど、嫌悪感を湛えて吐き出したのは「シュレディンガーが大嫌い!あの女たらしのくず」
「シュレディンガー?えーと物理学者だっけ?」
「そう」
「女たらしなの?」
「よく知らないけど、浮