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ある日別れは突然に…

「〇〇さん、今朝急に退職したの。」

出勤早々、『ついに来たか…』と思った。

普段の会話や勤務中の電話を通して、退職を考えていることには薄々気づいていた。

心の準備があったから、その朝私が受けた衝撃は、他の人たちよりは軽かったかも知れない。

約1年7カ月ほど、その人にはお世話になった。

初めての分野で戸惑う私を導き、ほぼ同時に入社したもう1人の人と2人、何とか2人で乗り切れるまでに育て上げてくれた。

実際に、その人が長期休暇でいない時も、2人で乗り越えたことがあった。

食事をご馳走になったり、仕事のことで色々と相談にのってくれたり…

私は感情表現が苦手なので、あまり上手く伝えられなかったかも知れないが、本当に感謝している。

退職の本当の理由は本人にしか分からない。
一番近くの席にいた私には、その人が仕事のことだけでなく、家庭のことや自身の体調についても、色々悩みを抱えていることに気づいていた。

けれど『せめて一言、言ってくれてたらなあ…』とやるせない気持ちで迎えた週明け。

誰にも何も言わず、文字通り、風のように去ってしまった。

どんよりした社内の皆の気持ちを表すかのように、その朝の雨は、いつもより冷たく感じられた。


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