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【対談】日本最大のベンチャーキャピタル「JAFCO」パートナー北澤知丈氏と考える、スタートアップ金融が目指す形

時代の変化とともに、スタートアップ企業を取り巻く環境は大きく移り変わります。ジャフコグループ株式会社(以下、JAFCO)は、2001年に東証一部へ上場を行った伝統あるベンチャーキャピタル(以下、VC)で、その設立はバブル景気到来以前の1973年。ITバブルの発生と崩壊そして長きに渡る景気低迷の中、ファイナンス面からスタートアップ企業を下支えしてきました。

今回は、「CAMPFIRE Angels」を運営する株式会社CAMPFIRE Startups(以下、Startups社)代表・出縄良人と、JAFCOでパートナーを務める北澤知丈氏の対談を企画。スタートアップ企業にまつわる金融市場の課題や、目指すべき姿について考えます。

日本にはまだまだVCの数が足りていない

出縄:JAFCOはベンチャー投資、バイアウト投資どちらも行っていますが、北澤さんはベンチャー投資を担当されているんですよね。

北澤:2010年の入社以降、一貫してスタートアップの投資を担当してきました。これまでは会社型のVCというところに重点を置いて組織運営を行ってきましたが、現在はJAFCOはパートナー制という形を取っており、キャピタリスト個人の能力が非常に重視されるようになりました。私が主に投資しているのはシード・アーリー期の企業になりますが、それに限らずJAFCOで行っている投資全般をパートナーという立場で広く見ています。

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ジャフコグループ株式会社 
パートナー 北澤 知丈氏
東京工業大学大学院 社会理工学研究科修了。
2010年に株式会社ジャフコ(現ジャフコ グループ株式会社)に入社後、主に国内投資、及びファンド組成業務等に従事。
2018年3月、同社パートナーに就任。

出縄:パートナーとしての責任や権限はどのような部分になるのでしょう?

北澤:ファンドの一GP(無限責任組合員)という立場で、ファンドの責任を担います。JAFCO自体が上場しているので少し特殊かもしれませんが、株式会社としてのJAFCO、そしてファンド両方にコミットしているイメージです。

出縄:ファンドのパフォーマンスに責任を負っているということですね。

北澤:JAFCO自身時代の潮流に合わせ常に変化してきましたが、ここ数年の一つの大きな変化がこのパートナー制の導入と言えるかと思います。

出縄:なるほど。株式投資型クラウドファンディング(以下、ECF)はファンドに近い形で、株主として参加する個人がより細かくなります。VCが普段扱っているスタートアップ企業とはだいぶ景色が違うように思いますがどのような印象をお持ちでしょうか。

北澤:素晴らしい取組みだと思っています。現状、VCが価値提供できている企業はごく一部に限られています。JAFCOは1973年からVCとして投資を続けてきましたが、市場環境の中で投資の仕方も変えてきました。わかりやすい例を出すと、リーマン・ショック以前は年間200社程投資を行っていましたが現在は年間20社程を厳選して投資をしています。

出縄:そうなんですか。

北澤:この変化は、VCが持つ機能のうち、投資した会社へしっかり責任を持って支援していく重要性が増した結果だと捉えています。投資の機会を生み出せる会社があっても、リソースが見合わずに投資先を絞らざるを得ないことが少なくありません。リソースさえ足りれば投資をしたいという企業を存在している。そう考えると、日本にはまだまだVCが増えていくべきですし、ECFも含めて、スタートアップが資金調達を行う際の選択肢が増えていくことを期待したいですね。

出縄:企業のステージによってはVCが必ずしもリードを取らない、積極的に求められないケースもあるかと思います。企業に応じて、最も適切な形で必要な資金が提供される状態を作っていきたいですね。

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上場を目指す企業が、非上場のうちからガバナンスを整えられるメリットは大きい

出縄:ECFについては、「株主が増えると大変なのでは」という声が多く聞かれます。反社が紛れ込むかもしれないなど、懸念する気持ちも理解できる一方で、私としてはメリットも大きいと考えています。北澤さんから見て、ECFで資金調達した会社が、ECF利用を理由にJAFCOの投資対象から外れる可能性はあるものでしょうか。

北澤:それ自体がハードルとは一概に言えないと思いますね。反社が紛れ込むなどの問題は確かに気にはなります。JAFCOの投資対象となった場合は改めて株主の調査も行うことになりますが、株主の多さによって単純に投資対象から外れることはないと思います。

出縄:そうですか、心強いです。プラットフォームとしては法律で定められた審査など、厳密に対処しておりますのでそこはご安心いただければと思っています。

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株式会社CAMPFIRE Startups 代表取締役 / 公認会計士 出縄良人
慶應義塾大学経済学部を卒業後、太田昭和監査法人(現:EY新日本有限責任監査法人)に入社。公認会計士として主に株式上場コンサルティング業務に従事。ディー・ブレインを設立し、中小企業向けコンサルティング事業を開始後、株式投資型クラウドファンディングの前身となった中小企業向け証券市場であるグリーンシートの立ち上げに関わり、株式公開主幹事で9割を超えるシェア。2010年までに141社に対して112億円のエクイティファイナンスを支援。上場引受主幹事業務にも進出し14社を上場。多くの非上場企業へのエクイティファイナンスやIPO支援を手がけ、2015年にDANベンチャーキャピタル(現:CAMPFIRE Startups)を設立。

出縄:株主の増加は懸念点として語られがちですが、株主は共同事業を行う仲間であるので本来株主が多いことは、toCのビジネスであれば特に喜ばしいことであるはず。また株主増加はガバナンス強化にもつながることで上場の後押しになるとは考えづらいでしょうか。

北澤:上場するとは、会社としてパブリックとなり、株主も意識して適切な経営やコーポレートガバンスを行う事となるので、それを目指す会社が未上場のうちからその状態を作っておけるのは上場にあたっての説得力になるでしょうね。起業したばかりの会社がそれを行うのは難しいですが、上場が近づいてきた段階の企業でそれができないのは問題でもあります。ECFに限らず、VCの立場でもガバナンス支援は力を入れています。

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出縄:株主コミュニティも増えていますし、仕組みを広げながらよりスタートアップがチャレンジできる環境を整えていきたいですね。

北澤:年々資金の出し手が増えているだけでなく、発行体が利用しやすい資金調達の選択肢が広がっている印象があります。まだまだ課題はありますが、資金調達環境の変化やオープンイノベーションの活性化など、長い目で見ればいい方向に向かっているのではないでしょうか。

出縄:出口戦略ありきではない、CVCも盛り上がっていますね。

北澤:そうですね。VCは非上場企業の資金調達における唯一の選択肢ではありません。いくつかの選択肢の一つである状態が望ましいですよね。

大規模な資金調達を行い、事業成長のエンジンにするスタートアップを生むために必要なこと

北澤:日本の潮流の中で前向きな変化として、起業家の方々の目線が上がり続けていることが挙げられるかと思います。数十億円の資金調達が珍しいことではなくなりました。資金の出し手が変わったとも言えますが、起業家が事業を急成長させるケースが生まれたことで、後続の起業家達がそれにしっかり続いているというのがポイントだと思っています。大胆な戦略を取れるようになってきた。

出縄:なるほど、スタートアップがその金額を調達することなんて昔はありませんでしたもんね。

北澤:でもアメリカを見てみれば起業したての会社が数百億円単位で調達することもザラにあります。そのニュースを見ると、すごいと感じながら「どうやって使うんだろう」とも思うんですよ。そこが日本とアメリカの差ですよね。アメリカの企業はお金の使い方を知っている。起業家だけでなくVCとしても、よりお金の使い方を知る必要があると感じます。

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出縄:数百億円調達して、事業成長のためのエンジンにする。そういう企業が日本で現れないのはなぜでしょうか。

北澤:日本のスタートアップが大きなお金を使えないとは思いませんが、日本国内の市場規模は原因の一つでしょう。ただ私がアメリカとの差を最も感じるのは、既にそのような企業が成功していることのメリットですね。起業家にとって適切な効率で資金を使うことが重要になります。当然、資金を大胆に使うことは単純に出来る事ではありません。これを実現する上で、起業家同士やVCとのネットワークから得られる綿密なリサーチが重要になりますが、日本ではそういった企業がまだまだ少ないです。一方アメリカでは、一度大きな事業を成功させた起業家がまた新しい事業を手掛ける流れが定着しています。彼らは既に数百億円という資金規模で事業を成長させためナレッジを持っているのです。

出縄:なるほど。日本でそのような起業家は多くありませんね。

北澤:ただ、日本でも急成長する会社は出てきており、その起業家、更にはその企業に所属していた社員たちが2社目、3社目と事業を興していく中で、成長戦略が引き継がれ、起業から間もない会社でも大胆な資金調達や戦略を描けるようになっていくのではと考えています。長期的に見れば日本のスタートアップ市場は大きくなり続けていますし、日本経済全体を見たときに、ここ以外やることはないはずなんですよね。

出縄:仰るとおりですね。僕が若い頃は個性を抑える教育でしたが、若い起業家は自分のよさを活かしてチャレンジしている方が多いように感じています。

北澤:「デジタルネイティブ」という言葉がありますが、若い起業家と話していると「起業家ネイティブ」とでもいうような感覚を覚えることがあります。かつて起業が特殊な選択肢だった頃は「どうして起業したのでしょうか?」は重要なクエスチョンでしたが、今その質問の意味合いが変わってきています。起業家人口が増えており、周りに起業家がいる優秀な学生にとって、起業はただの手段であってそこまで珍しいことではなくなってきている。スタートアップ業界の人材の高度化は急速に進んでいるように思いますね。

出縄:「なんで起業しないんですか?」と問われることのほうが多くなる日が来るかもしれませんね(笑)

北澤:優秀な方々の間ではそのような扱いになっていくかもしれませんね。

出縄:北澤さん自身は今後のキャリアをどのように考えているのでしょうか。

北澤:私自身は引き続き投資にコミットしていこうと思っています。JAFCOが変わることによってスタートアップ市場をいい方向に変えていければと思っていますし、スタートアップにとっての選択肢の一つとして、より魅力的な資金調達手段としての価値を高めていきたいと考えています。

出縄:いいですね!VCとECFを組み合わせることで、非上場企業をより力強くサポートできるのではないかと思っています。ECFで資金調達した後でVCに参加してもらうという枠組みなんかも作れるかもしれません。

北澤:そういうケースもあると思います。株主の多様性を重要視する企業や、toCの場合は顧客に株式を取得してほしいと考える企業もいるので、それぞれのニーズに合う選択肢がより広まることを期待したいです。

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