君と異界の空に落つ2 第30話
「物音がするのです……誰も居ない筈の部屋の中から。誰も居ない場所から見られているような気配もします。書き物をしようとすると筆が折れたり、草履の鼻緒が外れたり……前の日に生けたばかりの花が枯れてしまっていたりして……折角、九坂(くさか)様とご縁を頂けそうなのに、このように呪われた家の女では、申し訳無いような気がしてしまい……」
「これまでならな、そのような事、全く気にせぬ私だが……否、私はそうであっても気にせぬのだが、桜媛(おうひめ)殿が気にされるので。先の狸の事があったので、