大阪都構想の住民選挙を終えて

 昨日、11月1日に「大阪市を廃止し特別区を設置することについての住民投票」、いわゆる大阪都構想の住民投票がありました。結果は、皆さんご存知の通り、反対多数により否決となりました。

 今回のnoteは、その雑感です。

 私は、住民説明会が始まるまでは都構想には賛成に傾いていました。やはり、大阪がダイナミックに変われるチャンスというのはそうもなくいいチャンスだからという理由です。しかし、住民説明会が終わった後、当然のように疑問に思いました。

 「さっきの住民説明会、メリットしかなくデメリットが全くと言っていいほどないな」

 そうなんです。住民説明会ではデメリットが語られることはありませんでした。唯一のデメリットは、住所が変更されることぐらいと、特別区設置にはそれなりのコストがかかることぐらいです。当然といえば当然です。デメリットが多くあるのに、実施することは考えられないからデメリットが少なくて当然です。それでも、財政収支シミュレーションのうち、特定のものが正しくいかなかった場合はどうなるかなどのパターンも提示されず、全て考えた通り上手くいくという前提で説明会が終わりました。

 本当にそうなのか、全く問題はないのか・・・。

「指定都市都道府県調整会議」が全く語られていない

 地方自治法の一部が平成26年5月30日(2014年)に公布されました。改正された内容には「指定都市都道府県調整会議の設置に関する事項」というものがありました。
 公布された説明文によると「指定都市と都道府県の二重行政の問題を解消し、事務処理を調整するための協議の場」とあり、都構想の大きな柱である二重行政の解消の場を設置しなさいとの国からの指示でした。

地方自治法の改正により、指定都市及び当該指定都市を包括する都道府県は、事務の処理について必要な協議を行うため、平成28年4月1日から指定都市都道府県調整会議を設けることになりました。
https://www.city.osaka.lg.jp/fukushutosuishin/page/0000358862.html

 すでに20回もの会合が行われており、現状でもすでに調整ができるようになっていました。

 これを上手く活用すれば市を解体することもなく二重行政を解消することができそうです。しかしながら、この会議の存在自体、市民にはあまり知られていません。私も今回調べるまで知りませんでした。しかも、今回の住民説明会でもこの存在には一切触れることがありませんでした。確かに、市と府を一本化するのと、調整の場が義務化されたのとでは、意味合いが違うかもしれませんが、これを多くの市民が知っている状況でも都構想で二重行政解消を柱として押し進める事ができたのかが疑問に残るところです。

財政収支シミュレーションがコロナ禍の現状を考慮していない

 財政の収入は、もちろん企業、住民からの税金です。新型コロナにより、おそらくここはかなり変化を考慮しないとならなかったはずが、コロナ禍前の税収入をもとにした財政収支シミュレーションの内容のままでした。

 例えば、大阪メトロの税金、配当金です。都構想が実施された場合、2025年の初年度は53億円、次年度以降は71億円を見込んでいますが、これのベースはあくまでも去年度の売り上げからです。コロナにより通勤客の減少などが全く考慮されていません。米国では今のようなリモートワークの状況は来年夏までを予定しています。おそらく日本の企業でも同様の影響はあるでしょう。

 コロナ禍を考慮した財政収支シミュレーションに作り変えないまま、住民説明会の資料が作成されました。当然、そこに記載されている内容は現状よりも良い時期のものをもとにした内容です。本当にそれでよかったのでしょうか?

 また、市民プール15箇所廃止、スポーツセンター6箇所廃止、老人福祉センター8箇所廃止、子育て活動支援の場(子育てプラザ等)6箇所廃止というコスト削減案を盛り込んだにもかかわらず、それについては説明資料にも記載がなく、一切語られることはありませんでした。

今回の敗因は?

 今回、大阪都構想が否決された敗因は何でしょう。朝から考えていますが、私の中では、以下のような事だったと考えています。

・住民説明会の開催不足
・説明不足内容が後から色々と出てきてしまった
・財政収支シミュレーションのコロナ禍考慮不足
・住民投票を急ぎすぎた

 住民説明会の開催回数が前回の時よりも大幅に縮小されています。また、住民説明会の資料もメリット重視でデメリットがほぼ書かれていないという状態でした。その結果、後から悪い情報が少しずつ出てくるということも発生しました。
 一番の問題は、最後に書いた「住民投票を急ぎすぎた」ことでしょう。今はコロナ禍です。この中で実施する事が本当に良かったのでしょうか?
 2025年大阪万博開催に間に合わせたいため、今年を逃すわけにはいかないというのが急ぎすぎた理由でしょうけど、それによって、ずさんな財政収支シミュレーションのまま、市民に見せなければならないことになってしまいました。

 反対票を投じた私からすれば、今回の住民投票の結果は喜ぶべきことなんでしょうけど、朝からそんな気分ではありませんでした。冒頭にも書いたのですが、大阪を大きく変えるチャンスだったのです。しかしながら、事務局側の急ぐあまりにずさんな内容で押し進めようとすることに対しては、手放しで賛成することはできませんでした。本当は賛成したかったのに賛成できない住民投票となりました。

 さて、今後大阪をダイナミックに変えるチャンスは訪れるのでしょうか。

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