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書店員さんに感動した話

タイトルが分からない。
でも気になって仕方ない。

以前、書店で少し立ち読みをした本の一節が、
数日経った後も、妙に心に引っ掛かり、
「これはあの本を買うしかない」と思い至る。

さて、何てタイトルの本だったかな…と
あれこれスマホで検索を試みるも、
何故かこれがまったく出てこない。

「もう、あの書店にもう一度行くしかない」と
例の書店まで地下鉄で向かう。
しかし、先日置いてあった棚から、
すでにその本は姿を消していた。
周辺の棚にも無いようだ。

ここまで来たんだ、
店員さんに一応聞いてみようと
男性の店員に近づき、尋ねた。

「すみません、ある本を探しているのですが、
実はタイトルが分かりません。
ただ、3〜4週間前に、あそこの棚に置いて
あって、本の形というかサイズが通常の本と少し変わっているというのは覚えているんですが…」

「はあ、で、本のタイトルは?」

「いや、ですから、それが分からないんです、
すみません」

「うーん」
店員さんが分からないのも無理はない。
毎日、大量の本が入れ替わっているのだ。

そうして2人で頭を抱えていたとき、
横にいた別の女性店員が、僕に尋ねてきた。

「内容は、お酒に関する本でしたか?」

「いえ、お酒ではありません。エッセイかな」

「…分かりました。ご案内します」
エッ、これで分かったの⁉︎

半信半疑でその女性店員について行くと、
まさに探していた本が! 
そう、これこれ!!

おそらく、普段から彼女が店内の商品を
よく見ているからこそ、できることだと思った。
プロの仕事だ。

お会計は別の店員さんだったのだが、
僕は先ほどの一幕に感動したので、
例の女性店員に向かって
「先ほどは、ありがとうございました!」と
お礼を言った。

「いえいえ、ありがとうございます。」
そう言って微笑んだ彼女の目は、
僕以上に喜んでいるように見えた。

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