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人類の知性の飽和について



文明の発達によって人類の知性と、知性の達することのできる情報の限界がちょうどバランスよく釣り合っていた時代は、人類の知性の最も成熟した時代だった

しかし現代はその情報量が増えすぎて全てを獲得できる優れた知性の持ち主は一握りとなり、大多数の人間はせっかく人類が獲得した知性の最高峰には到達できず、それどころかそれを少しずつ失って文明は後退してきている

人類が猿化しつつあるのだ

それはかなり以前から予測できたことで、文明が後退する現象は宿命であるとも言える

私はちょうどその過渡期に居合わせているという実感があり、まさに成熟した知性の到達点とそこから少しずつずり落ちていく文明の凋落を見ていて、その現象を生きて見ることができるのは本当に僥倖だし、生まれてきた時代に感謝している

もちろん成熟した知性の時代がもっと長く続けば良かったとも思うが、むしろそこに達するまでの成長の時代があまりにも長く、その間にはさまざまな不幸な出来事も多かったはずなので歴史からそれを学んでいく楽しみもあり、そして歴史は本当に一瞬で過ぎ去るのだという事実もそれはそれで興味深い

そしてこの人類の歴史が下降に差し掛かる今という時代に起こってくるさまざまな愚かな事象が巻き起こす混乱や騒動や悲哀を、もちろん自分もそこに巻き込まれながらも、一歩下がって見守ることができている

悲しんだり怒ったり落胆したり、感情を揺さぶられながら1人の人生にしては豊富すぎる目の前の出来事に目を奪われ、驚きもし笑いもしながら興味は尽きないのだ

人が愚かであることは歴史上ずっと変わることはなかったかもしれないが、その中で優れた知性の持ち主が現れ、その人々の導きに大多数の人間が付いていけた時代もあり、やがて底辺から成熟した人々がその時代を支え押し上げた時代もあった

そして文明が大きなスピード感を持って前進するようになって人々を置き去りにし始める
スティーブ・ジョブズのいた時代がその契機だった気もする

そして今はほとんどの人が最先端の文明に付いて行けていない
置き去りになりずり落ちながら人々はその文明の方から吹いてくる風に当たって付いて行けている気になる
哀れにもそうして風に当たっているだけで底抜けの時代の末端からずり落ち、自分の足の置き場も定かでないまますり抜けて行ってしまう

そして時代もまた人々を置き去りにして実体のない空虚な幻想の上を滑っていく
滑稽なほどに踊り狂いながら
時代の先端はもう見えないほど遠いが、私たちはそこがあまり希望のない場所であることも微かに感じていて、むしろずり落ちることを内心選んでもいるのだろう

そんな毎日が歴史というにはあまりにも早いスピードで過ぎていく
あまりにも早いがそれは歴史としか言いようのない変化の日々なのだ

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